04 お月見ハンバーグ
神楽は目を覚まし、あたりを見回した。
一面焼け野原。
「やってしまった・・・」
湖は干上がり、草木は朽ち果て、いたるところに瓦礫が転がっている。
「紫苑!どこ?返事して!」
瓦礫の中から宝玉が飛び出し、ふわふわと宙に浮いた。
「危なかった、でも生きてた。」
神楽は胸をなでおろした。
「し、紫苑、人間は滅びたよ。未来の竜の国はどうなってる?」
「ちょっと待って、今、未来を視てみ・・・る・・・」
「どう紫苑?」
「・・・、神楽。竜の国の運命は変わらない。人間に滅ぼされる未来は消えたけど、竜はみんな死ぬ。」
沈黙がつづき、神楽が紫苑に問う。
「どうして?」
「竜は人間の守り神だから、守るものがなくなれば、竜も生きてはいけない。」
「どういうこと?」
「竜は人間が幸せを感じることで発するエネルギーを、魂に取り込むことで心臓を動かす。」
「え?」
「私達には見えないけど、この世界にはそのエネルギーが空気のように充満してた。でも、それがもう、今はどこにもない。竜の心臓は動かない。もうすぐみんな死ぬ。」
神楽はひざをついた。
「知らなかったでは、すまないね...。」
荒廃した世界で、満月だけは美しく、神楽の涙をきらきらと照らした。
「紫苑、おぼえてる?グリエルがわたし達の誕生日に作ってくれた、特製お月見ハンバーグ。」
「うん。よく覚えてる。すごく美味しかった。でも美味しかったのは最初だけ。その後、アレンジしてどんどん不味くなった。グリエル味オンチ。」
「笑、だね。」
神楽は涙が止まらなかった。顔をぐちゃぐちゃにして、声にならない声をしぼりだす。
「竜の国の郷土料理が世界中で流行ったら、人間と竜は共存できたのかなあ?」
「そうだね、仲良くなれたかもね。」
「紫苑、グリエル、竜の国のみんな...ごめん。」
神楽は足元に落ちていた短剣を手にとった。