03 神楽、世界を滅ぼす
神楽と紫苑が竜の国を抜けて3日目のこと。
「竜の国を攻撃しないように、王様とか偉い人に脅しをかけるってのはどう?」
神楽のまわりにふわふわと浮いていた宝玉が、チカチカと光って返事をした。
宝玉は紫苑。
封印されたとはいえ、紫苑はふつうに話もできる。魔法も使えた。
ただ、何かに攻撃することはできなかった。温厚な紫苑に不都合はない。
「ビクトール王国は竜の国を嫌ってるよね。あの国の王は憎きドラゴンハンターだし。」
こうして第1の目的地が決まり、西のビクトール王国を目指したのだった。
•••••••だが。
7日後、世界は終わりをむかえる。
ある国のある街で、二人は見てしまうのだ。
店先にドラゴンの死体が、仲間が無惨な姿に変わり果てて並んでいる光景を。
ドラゴンのつるぎ、ドラゴンのよろい、エトセトラ・・・。
神楽は人間への憎悪がふくらみ、自分をおさえることができなかった。
「許せない」
次の瞬間、自我は完全に吹き飛んだ。禍々しいオーラを放ち、どす黒い雷雲を発生させた。上空に雷鳴が轟く。
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!
ドドドドドドドーーーーーーン!!!!!!
「人間、人間、人間! 全員、滅ぼしてやる!」
神楽は怒り狂い、すべてを焼き払った。
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
空は雷雲が覆いつくし、幾万もの電撃が人間を襲った。海はうねり大地はさけ、生物は行き場なく逃げ惑った。
神楽の莫大なエネルギーが尽きるまでの6日間、憎悪に支配された神楽は世界中を暴れ回り…
人間を死滅させた。
数千年にわたって世界を支配した人間の歴史は、こうして幕を閉じたのだ...。