02 紫苑、最悪の未来を知る
月日は流れ、二人が15歳の誕生日、紫苑は竜の国の悲惨な未来を視てしまう。
近い将来、数十万もの人間に攻め込まれ、竜の国は滅んでしまうのだ。
「どうしよう神楽。人間に竜の国が滅ぼされてしまう...。」
「え?」
以降、紫苑はばったりと口を閉ざしてしまった。神楽やグリエルが何を話しかけてもうわの空。一週間、一か月、そして三か月すぎても紫苑は口を開かない。
思いつめた紫苑はついに国を飛び出し、人間の里を襲った。幼いながらもドラゴンの力をもつ紫苑の前に、人間たちは成す術もなかった。
竜王グリエルは最高速で人里へと飛んだ。そしてその強大な力をもって紫苑を宝玉に封印したのだった。紫苑がなぜ人間を滅ぼそうとしたのか、その理由を聞こうともせず、また、一切の躊躇もせずに。
それから数時間後。
竜の神殿で、姉の神楽は グリエルの帰りを待っていた。
「どうして紫苑を封印したの?」
神楽の問いに、グリエルは答えた。
「お前たち二人はすでにわたしを凌ぐほど強く、恐ろしい力を持っている。決して人間を傷つけてはいけない。人間は守らなくてはならない。」
「どうして?人間は竜の国を...」
言いかけた神楽は口をふさいだ。紫苑との約束だ。未来視のことは言ってはいけない。
その夜、神楽は宝玉を盗みだし、竜の国に別れを告げた。