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鳩
生肉の散歩中に通った道で、鳩が潰れていた。
河川敷に向かうまでの一般道である。
俺は懐に生肉を抱えたまま、ひしゃげた鳩を横目にして歩いた。
小動物の礫死体ってなんか見ちゃうよな。
なんなんだろうな。
何か聞こえんなあ、と思ったら、鳩が喋っていた。
『あだち 500
わ 32-██』
わざわざ近付いて聞きにいったので、多分間違いはない。
耳を傾けている間、鳩はずっと同じ文言を繰り返していた。
まあ、端的に言えば呪いだ。
問題は、これがレンタカーのナンバーであることだろうか。
知らん誰かが勝手に呪われるかもしれない。
知ったこっちゃないが。
呪いって事故みたいなもんだし。
次行った時には、鳩は片付けられていた。




