ごま
胡麻が生き返ってしまった。
胡麻のゾンビである。
胡麻のゾンビはベランダから入り込んで戻ると、多くの胡麻を同じようにゾンビにし始めた。
ゾンビは同種を増やさないと満足ができないらしい。
やはり胡麻の死骸も日本の慣習に則って火葬にした方が良いのかもしれない。
人間だって犬だって猫だってハムスターだって、死んだら焼く。
焼いたら生き返ることはない。無いはずだ。
まだ居る。
ところでこの家には塵取りがない。箒もない。あとは掃除機もない。
つまりは全てが埃まみれで、あ、フローリング用のコロコロはある。
作業効率が悪い。非常に悪いが、今から塵取りを買いに行く気にもなれなかったので、俺は家中の胡麻の死骸と、家から出て行った胡麻の死骸をコロコロで集めた。
そしてくしゃくしゃに丸めてゴミの日に出した。
小型動物の死骸は一般の燃えるゴミで出せる。もっと小型の胡麻は当然燃えるゴミである。
我々は毎週、ゴミを火葬している訳だ。
胡麻も火葬された訳だ。もう生き返ることはない。
火って清浄なもんらしいよ。
知らんけど。
まあ、万能ではないことは確かだ。
焼いても消えない毒素もあるし。
万能ではない。
だからまだ居る。
「……胡麻って元から動く死骸じゃなかったでしたっけ」
「そうだな」
「その、……元々がゾンビでは?」
「こっちは死んでるけど動いてる、こっちは生き返ってる」
「………………なるほど」




