失踪
先輩が居なくなった。
所謂、飛んだというやつである。
連絡が取れないせいで上司がうるさい。
喧しい。仕事しろ。
お前テトリスやって菓子食ってるだけじゃねーか。
うちは全く何も社会の役に立っていないタイプの、なんなら詐欺に片足突っ込んでるような会社なので、どうせならさっさと潰れちゃえばいいんじゃないですかね。
真面目に働いてる他所の勤め人に申し訳なさとか感じないんだろうか。ないんだろうな。
ところで、こうなると俺に社長の家族ぐるみ最悪奇天烈パーティの雑用が回ってくることになるっぽいな。
最悪だな。キッチンに花火とか仕掛けたら駄目かな。庭に犬のうんことか撒き散らしたら駄目かな。駄目か。
ところで、数日後。
俺の部屋の郵便受けに、先輩からの手紙が入っていた。
少なくとも生きてはいるみたいで、良かった。
【手紙(砂が同封されている)】
琴浪 誠也様
突然居なくなってしまってごめんなさい。
琴浪くんは僕なんかを心配してくれていたのに、声もかけずに居なくなってしまって。本当に申し訳なく思っています。
一ヶ月前、琴浪くんが風邪ひいて、休んで、それでも何も壊れなかったので、大丈夫なんだと思いました。
会社って休んだら死んじゃうんだと思ってました。間違ったら殺されちゃうんだと思ってました。死なないんですね。大丈夫なんですね。
頼りない先輩でごめんね。気持ち悪かったと思います。ごめんなさい。琴浪くんが入ってきてくれて良かったです。
迷惑をかけてしまってごめんなさい。引き継ぎもなんもしなかったけど、できなくて、琴浪くんは僕がやれる仕事なんて全部できて、すごいから大丈夫だと思います。ごめんなさい。
僕は今、守らないといけないものが出来て、頑張らないといけなくて、大変だけど頑張ります。
いつかちゃんと謝りに行きます。
琴浪くんもどうかお元気で。
夢で会いました。
君は何も悪くないと思います。




