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まったく分からない、というわけではないが、自信がない。ここに来るまで、イベリスさんがどこかに行ってしまわないか、と気を張って、彼ばかり見ていたから、ちゃんと道順が頭に入っていないのだ。
こんなところ、初めて来たし。ここに、こんないっぱい猫ちゃんが見られる場所があると分かっていたら、休日のたびに通い詰めていたくらいだ。
「多分……こっち?」
わたしは記憶を頼りに歩きだす。最悪、その辺の人に道を聞けば分かるだろう。幸い、目指しているのは個人宅ではない。店の名前を出せば、分かってくれる人がいるはず。
きょろきょろとあたりを見回しながら歩く。その街並みは、やっぱり、異世界というだけあって、なじみがない。異世界どころか、転生してから育った国でもないわけだし。完全に別世界だ。
「あ、あの店、さっきイベリスさんが寄ろうとしてたところ……」
それでも、完全に見覚えのない場所に出ることはなく、ちらほらと、イベリスさんが興味をしめしていた場所を見つける。それが逆に道しるべになっているようで、なんかちょっと、悔しい。あの人がうろうろしているおかげで、郵便事業局に行くのにも時間がかかったというのに、そのおかげで、帰り道のヒントになっているなんて。
複雑な感情を抱えながら街中を歩いていると――ふと、見覚えのある顔を見つけて、「あっ」と声を上げてしまう。
わたしが思わず漏らした声が届いたのか、一人の男がこちらを向く。――その顔は、まぎれもなく、アラインさんだった。
怪訝そうな彼の表情が、一気にパッと明るくなる。
「あ、久しぶりじゃないっすか!」
こちらに寄ってくるアラインさん。日の光に当たっているからか、あの地下で見たときより、ずっと健康そうに見える。
「お久しぶりです。買い物ですか?」
彼が抱えていた紙袋を見て、思わず聞く。研究馬鹿、と何度もアビィさんが蓮子していたくらいだから、ダンジョンを作るような魔法使いは基本引きこもりで、滅多に外へ出ないのかと思っていた。
いや、そんなことないか。専用の出入り口があるって言っていたし、そもそも、あんな地下じゃ食料を自給自足するのも難しそうだし。
「そっす! 野菜とかはいくらでも賄えるんすけど、肉とか加工品は流石に厳しくて。他にも画材とか、いろいろ買い出しを」
食料は分かるけど……画材?
不思議に思ったのも一瞬。そういえば、と、ギンクちゃんが油絵を描いていたことを思い出す。彼の頼みで、ついでに買いに来たのかもしれない。




