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猫をかばって死んで。来世ではネコ科のいる世界で、猫と戯れられる体がほしいと願って。
猫を忌み嫌う国に生まれるという遠回りはしたけれど、わたしは無事にその願いを成し遂げた。
鈎猫亭という猫の名が付く店で働き、ショドーとひいさまという可愛い家族がいて、この上ない幸せを堪能できている。
いや、できていた。
――鈎猫亭の店員に、正式になってから三か月。わたしはヴォジアさんの命で、床に正座させられていた。
「~~~~ッ、全く、アンタは!!」
鈎猫亭の食堂の、昼営業と夜営業の間。本来なら清掃をしている時間にもかかわらず、わたしは床に正座をし、ヴォジアさんは仁王立ち。ちなみにノルンさんはこの場におらず、おそらくはキッチンで夜営業のための仕込みをしている。
足がしびれるわけではないが、土足文化の床で正座は、ちょっと嫌。この国では、刑罰を受ける囚人の座り方のようだから、前世で普通に正座していたわたしはそこまで抵抗はないものの。
とはいえ、ヴォジアさんは、無駄にわたしへこの格好を強いているわけではない。わたしが仕事ができないから、こうなっているのでもない。
わたしが悪い、と言われれば、ちょっとそれは不満ではあるが――。
「いい加減、普通の猫と猫族の魔物の区別がつくようになってくれ!」
――なんて考えていたのがばれたのか、声を荒げて怒られた。
鈎猫亭に雇われたわたしが、最初に覚えるのは掃除だった。しかも、外掃除。店の前の掃き掃除をしたり、ごみを拾ったり、あとは花壇に植えている花の手入れが主な仕事。
その最中、たまにひょっこりと姿を現す猫がいたので、声をかけたり、撫でたり……その、ちょっぴり餌付けをしていたりしたのだ。丸みのある猫、というよりは、シュッと細身な猫だった。野良猫だから瘦せている、というよりは、脚がすらっとしていて、そういう種類なのかな、と思わされるような感じで。
鋭い目つきをしているものの、わたしに寄って来るときだけ甘えるように目を細めるものだから、それが可愛くてかわいくて……。
日中も部屋でよく寝ているひいさまとは違い、よくわたしにくっついてくるショドーとも仲良くなったようだから、ふたりがじゃれているのを眺めていたりしたのだが。
それがとっても駄目だったらしく、こうしてヴォジアさんに説教をくらっている、というわけだ。
「あれは猫じゃない、バルツオーネだ! 手懐けるな!」
また聞いたことない名前だ。でも、そうやって言うのならば魔物――それも、結構凶暴な奴なのかもしれない。ショドーやひいさまとテイム契約を結んでいないと知られたときのような怒り方。
……魔物がそう、ひょいひょい街中にいると思わないじゃん……。




