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一日で怪我が治るわけもなく、ザムさんはあちらこちらに包帯だのガーゼだのをくっつけていた。殴られた跡も痛々しかったけれど、こうして手当された後もすごい。かなりの怪我だったことがよくわかる。
「き、昨日の今日で、もうお仕事探しですか?」
わたしは思わず聞いてしまった。こんな状態だから、しばらく休めばいいのに。
わたしの言葉に、一瞬きょとん、としたかと思うと、ザムさんは笑い出した。「失礼」と、ひいさまが座っているのとは逆の隣へとザムさんが座る。
「さすがにしばらくは休むさ。今日は例のトレジャーハンターについて、報告に来ただけ」
例のトレジャーハンター、とは、言わずもがな、あのダンジョンにいた男三人組のことだろう。
「ダンジョンの宝を換金できる場所に片っ端から報告して回ってるのさ。違法トレジャーハンターだって」
そういえば、ダンジョンの製作者である魔法使いに手を出すのはご法度なんだっけ? そうじゃなくても、既にザムさんとひと揉めあったから、無害なトレジャーハンター、とは言えないと思う。
「生きて帰ってくるのかは知らないけど、一応、な」
……ひええ、怖いこと言わないでよ。
わたしが押し黙ると、ザムさんが、わたしの持っていた一般求人雑誌を見てきた。
「求人? 仕事探してるの?」
「あ、はい……。ええと、わたし、あそこで雇われていたの、アルベアちゃんを世話するためにだったので」
一瞬、遠回しに、ザムさんのせいで職がなくなった、と言っていると思われないだろうか、と、素直に言うのをためらったものの、すぐにごまかせなくなって、バレるだろうな、と思ってそのままの現状を伝える。
「ああ、なるほど」
しかし、ザムさんはあまり気にした様子もない。……スキル鑑定所の仕事案内の人によれば、魔物駆除の駆除業者って単発の依頼をこなしていくのが基本らしいから、日雇いの仕事とか、短期の仕事に慣れているからなのかも。
わたしは前世も今世も、長く務めるのが普通だという社会で生きてきたから、ころころ仕事を変えるのって違和感があるけど、アルベアちゃんと一緒に魔物駆除業者をやっているザムさんからしたら、とりたてておかしなことでもないのかも。
「君には世話になったし、良ければ俺も仕事探し、手伝うよ」
思ってもみない提案に、わたしの気分は軽くなる。ザムさんって、顔が広いらしいし、ツテの一つや二つ、あるのかも。
「いいんですか?」
「もちろん。……君がいなければ、俺どころか、アルベアの命も危なかったから。俺たちの恩人のためなら、仕事の一つや二つ、都合をつけるさ」
ザ、ザムさんだけでなくアルベアちゃんも……? なんだかすごく聞き捨てならないことを聞いた気がする。




