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猫獣人の祖先と言われる猫族の魔物。
そのワードに、わたしはときめいた。つまり、二足歩行で話ができる猫ちゃんってこと。絵本っぽくてかわいい、夢がある。素敵。
……もしかして、テイマーの『索敵』とやらを覚えたら、いつでも好きなときにネコ科の魔物を探すことができるってこと!? それって最高じゃない!?
絶対にやり方を教えてもらってから帰らないと、とわたしは勢いよく手を挙げた。
「はい、はい、はい! わたし、ネコ科限定ですけど、加護クラスのテイマースキル持ってます。絶対に『索敵』とやらを習得したいです、よろしくお願いします!!!」
わたしの勢いにアラインさんが若干引いている。さっき、アビィさんに迫る貴方もこんな感じだったぞ。
「え、ええと……じゃあ、意識を視界の外にもっていくイメージで。慣れてなければ、目をつむるのもありっすね」
「意識を……?」
いまいちピンとこないが、とりあえずアドバイス通り目を閉じる。
「世界はここだけじゃない。扉の向こうに廊下があるし、廊下の先にはまた別の部屋がある。実際に構造を分かっていなくても、『何かがある』という認識をもって、そしてその場所は自分の現在地とつながっている、と思うんす」
言われた通りに意識を飛ばしていく――というよりは、伸ばしていく、というのが近いかもしれない。現在地とつながっている、と考えないといけないのなら、特定の場所を意識するのではないだろう。
通路に、部屋に、土の壁に、その先。上層にいるらしいので、なんとなく、意識を上へと持っていく。
――と。
朧げで、本当にその魔物の居場所が分かるの、と思っていたが、何かが頭に引っ掛かり――確実に、ここにいる、と確信を得た。同時に、どこまで行けばいいのか、なんとなく分かる。
心当たりとなったその地点は、行ったことがない場所であろうに、なぜか、そこへの道が分かる。何度か行き来して、道を覚えているような感覚だ。
――……不思議。スキルって、こんな風に使うんだ。
想像よりはだいぶ地味だけど……疲れもなし、あっさり使えるということは人目を気にしなくてもいいということ。魔物限定にはなってしまうけれど、猫探しにとても役立ちそう。
「見つかったっすか?」
アラインさんの言葉に、わたしは目を開ける。
にまにまと口元が緩むのが抑えられない。そんなわたしを見て、彼は『見つけられた』と判断したらしい。
「はい、これ。これを渡してもらえば、ちゃんと外に出してもらえると思うんで」
そう言って、アラインさんは折りたたんだ紙を渡してくれた。手紙か何かだろう。
「じゃ、助けてくれてありがとうございました。あのトレジャーハンターたちはこっちでなんとかするんで、そっちはそっちで脱出頑張ってくださいっす」
アラインさんとレティちゃんと別れを済ませ、わたしとザムさんは部屋を出る。
んふふふふ、めちゃくちゃ楽しみ。エルナモンテスって、一体どんな魔物なんだろう。




