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地図、とは思ったものの、どちらかと言えば設計図に近いかもしれない。おそらくはこの部屋であろう場所を中心に、いろんな方向へと通路が伸びている。
「出口はこことここ、あとここっすね。場所は固定されてるんで、方向はあてになるっす」
アラインさんが指をさして教えてくれる。……今、わたしたちがいるのは随分と上の方らしい。地図によれば、まだまだ下があるようだ。
ただ、先ほど、ザムさんが拘束されていたり、アラインさんが倒れていたりした、あの部屋と思わしき場所からここまでの道がすでに少し違う。道のりが分かっている今は、なんとなくどう通ってきたか分かるけれど、何も知らないで進んだら迷子になりそうだ。
……ないよりはマシだけど、そこまで頼りにならない地図だな、これは。
「そんな顔されても。そもそも、ここはダンジョン。もとより、簡単に出入りできるように作ってないんすよ」
考えていたことが顔に出ていたらしい。アラインさんにそんなことを言われてしまった。
「オレとしてはここがおすすめっすかね」
そう彼が教えてくれたのは、ここから一番近い場所ではなく、二番目に近いところだった。最も遠い、それこそ最深部と言っても過言ではない出口よりは近いけれど、遠回りになってしまう。
「こちらのほうがここから近くないですか?」
「近いところの出口は、一番上層なんで結構がちがちに罠とか固めてるんすよね。パッと上澄みの研究や魔道具だけ持って簡単に帰られても癪なんで」
そういうもの、なんだろうか。わたしからしたら、メインのものより替えの効く簡単なものを盗まれたほうがまだダメージが少ないように思うんだけど。会話は成立するけど、端々でアラインさんの理解できない部分が見られる。
「まあ、テイマースキルの高い奴がいるなら、こっちの近い方が楽かもしんないっすね。AかS……それこそ、加護クラスなら、話は別っすけど」
……猫だったらいけるんだけどなあ。猫じゃダメかな。
わたし自身、魔法やスキルが排除された国で生きてきたので、いまいちスキルというものの勝手が分からない。勝手に発動するのか、とか、どうやって意図的に使うのか、とか。
ちなみに、スキルウインドウ的なものがないかは、転生直後に調べている。ファンタジーな異世界に転生したら、一番に調べたくなるものだ。まあ、なかったんだけど。
そう言えば、ザムさんってテイマーなんだよね? と思い、彼の方を見る。めちゃくちゃ凶暴らしいアルベアちゃんとテイム契約を結んでいるし、それなりに高ランクなんじゃないだろうか。そもそも、ラグリスがどのくらいのランクでテイム契約できるのか知らないけど。




