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あまりにもあっさり言うものだから、言葉を咀嚼するのに時間がかかって、妙な間ができてしまった。まさか、この流れで断られると思っていたなかったのである。
「や、別に、意地悪で言ってるわけじゃないんすけどね?」
わたしたちが固まったからか、アラインさんは弁明する。
「単純に、出口の場所、オレも忘れたんっすよね」
そ、そんなことある……? 自分の家の出口を忘れるって。引っ越ししたてで、帰り道が分からなくなった、とかじゃないんだぞ。
「大体の場所は分かるんすけど、ダンジョンエリアを増改築しすぎて、道が分からないんっすよ」
それがまるで当たり前のことのように言うアラインさんに、わたしはまったく理解ができなかった。ダンジョンシステムからして、本当に別の世界に生きている人間なんだな、って思う。いや、わたしからしたら、ある意味、ここは異世界であるわけだけど。違うのは、常識というよりは考え方だと思う。
「で、でも、外に出入りすることもあるんですよね?」
わたしは思わず彼に聞いてしまう。多少自給自足していたって、食料や日用品など、買い足しに行かなきゃいけないものだってあるだろう。そのために、外へつながる場所が分からない、とはならないはず。
「あー、確かに、オレ専用の出入り口はあるっすけど、文字通り『オレ専用』なんで、オレ以外は弾かれて通れないっす。アビィがいるなら、オレが記憶を頼りに出口を探すより、普通にダンジョン攻略して扉探した方が、多分早いっすよ」
アラインさんの言葉に少し遅れて、廊下から何かが倒れる音が聞こえてくる。何かが、っていうか、アビィさんだと思う。
大方、アビィさんがあまりの面倒ごとにすねて、地面へと勢いよく寝そべった音だ。見なくても分かる。
実力だけ考えたら、アビィさんはダンジョン攻略ができるのかもしれないけど……性格を考えたら無理だな。
「せ、せめてヒントとか……」
「オレとしては、普通にダンジョン攻略してほしいんすけど……。でもまあ、あんたらはトレジャーハンタ―ってわけじゃないっすもんね」
「しょうがない」と言いながら、アラインさんは本の山に手を突っ込み、一瞬にして一枚の紙を取り出した。これだけ散乱していても、彼の頭の中には何がどこにあるか分かるらしい。……さっきアラインさんを引きずってソファにのせるまでの道のりで、ぐしゃぐしゃにした紙や本の山の位置がだいぶ変わってると思うけど……。き、気にしないでおこう。
「ん、これやるっす」
そう言って渡されたのは、一枚の地図だった。




