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ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第一部

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 わたしは慌てて男たちがいる部屋の方を見に行く。ここで殺すのが嫌なのであって、じゃあアビィさんがやっちまえばいいという話ではないんだが。


 勢いあまって下に落ちないように気を付けながらのぞき込むと――そこには、拘束された男たちがいた。先ほど、食事をしていた男たちのグループが、何かに縛られている。

 よくよく見れば、男たちを拘束しているのは、地面から生えているものだった。薄暗いからか、実際に何なのかはよくわからないが、手足はもちろん、顔も鼻以外すべてふさがれている。呼吸はできるように、ってことなんだろう。


「これでゆっくり探せますね? 私はここで待っているので、さっさとしてください」


 のぞき込んでいるわたしの背後から、アビィさんがそう言いながらあくびをするのが聞こえた。これはアビィさんの魔法らしい。


「――、ありがとうございます!」


 わたしはアビィさんにお礼をいい、アルベアちゃんを連れて階段を下りる。アルベアちゃんは待ちきれない、とばかりに、階段の途中、踊り場まで一気に飛び降りて、その後も、階段を一段も使わず下の階にまで行っていた。

 当然、わたしはそんな芸当できないので、一段ずつ降りていく。


「――……アルベア?」


 かすれた声。椅子に縛られた男が、ゆっくりと顔を上げた。うわ、すご。上からではよく見えなかったので気が付かなかったが、頬が腫れ、目元に青あざがいくつもでき、口元も切れている。随分と殴られたようだ。

 そんな男が座る椅子の周りを、アルベアちゃんがぐるぐると落ち着きなく歩いている。


 この、椅子に縛られた男性がザムさん。……ということは、消去法で、拘束されている男たち三人が、シャンシャットちゃんの言う、『へんなおとこ』ということか。


「わたし、ルティシャと言います。ええと……ザム、さんで間違いないですよね?」


 わたしの問いに、男が静かにうなずく。

 アルベアちゃんの様子からして間違いはないと思うけど、確認は必要だ。何せ、わたしはザムさんの顔を知らないので。


「助けに来ました。……こ、これ、どうしよう……」


 わたしは周囲を見渡す。男性の拘束は、男性の足と椅子の脚がそれぞれ縄で縛り付けられていて、その上で、胴体も椅子にくくられている。背もたれの後ろに回された手も、手首どころか肘あたりまでがっちがちに縄で固定されていた。

 何か切るものがないと、わたしには絶対ほどけない。


「アルベアちゃん、これ、切れたり――」


 わたしが言うよりも早く、アルベアちゃんはザムさんの腕を縛り付けている縄を、爪でひっかいて、いとも簡単にバラバラにしていた。

 ……思っていた以上に、爪が鋭い。こりゃあ、爪を皮膚に軽く立てられただけで刺さりそう。


 思ってもみなかったアルベアちゃんの凶器を目の当たりにして、「あっという間に殺せる」というアビィさんの言葉が、冗談でも嘘でもないことを、思い知らされたのだった。

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