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ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第一部

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 猫ちゃんの話を詳しく聞こうと思っても、喋れるとは言え賢いわけではないようで、いまいち話の要領を得ない。

 猫ちゃんが伝えたいことを理解することを諦めたわたしは、問題が起きている場所に案内してもらうことにした。


 足の怪我そっちのけでアビィさんを引きずっていたら、途中で抵抗することに面倒くささを見出したらしい彼女は、おとなしくついてきてくれることになった。

 一方で、アルベアちゃんは最初から素直に猫ちゃんについていっていた。せわしなく耳が動き、警戒していることは伝わるのだが、どうやらアルベアちゃんが行きたい方向と、猫ちゃんが案内したい方向とが同じみたいなのだ。


 ……これ、変な男とやらがザムさん、ってことはないよね? 酒場の女性は『顔が広く情に厚い男』といっていたから、猫を困らせるような人ではないと思うんだけど……。それに、もってっちゃって、と猫ちゃんは言っていた。言葉の通りに受け取るのなら、誘拐とか、そういうちょっと犯罪的なイメージしかできないのだが。聞いていた話と違う。


『ついたにゃー』


 ひょこひょことかわいらしい歩みを止めた猫ちゃん。

 一般の家で言うと吹き抜け、とでもいうのだろうか。今いる通路も地下だが、さらに深く掘られているのがわかる。下に降りる階段に続く廊下が右横についていて、あそこから下の部屋に行くのだろう。下が丸見えなので、上からもよくこちらが見えるだろうが、向こうはこっちに気が付いていない。一応、静かには来たので。


 下の部屋には男が数人。楽しそうに食事をしているが、一人だけ部屋の隅で椅子に拘束されている。……あれが『ごすじんさま』?

 いや、よく見たらもう一人、人が床に倒れて――。


「――ッ!」


 部屋に訪れてすぐ。わたしが下の部屋を観察していると、アルベアちゃんが飛び出していきそうになったので、わたしは全力で引き戻す。アルベアちゃんの体格が体格なので、地面に若干引きずられたがそんなこと気にしてはいられない。


「まってまってまって」


 わたしは小声でアルベアちゃんへ必死に訴えかける。わたしの声にアルベアちゃんは一度振り返ってくれるが、ずいぶんと期限が悪そうだ。耳がイカになっている。


「いきなり飛び出すのは危ないって」


 さっきまで歩いてきた通路の方へと体をひっこめた。少なくともこの位置なら、先ほどとは違って上を見上げただけでこちらに気が付くことはないだろう。


 向こうは男が数人。対して、こちらは女二人に猫が二匹。アルベアちゃんは戦えるものの、わたしと猫ちゃんは完全に非戦闘員。アビィさんは、自分に攻撃されたら反撃できるだろが、その前に逃げると思う。そのときにわたしたち全員を一緒に逃がしてくれるとは限らない。

 ということで、完全に無策に飛び出して行っては困るのだ。

 ……とはいえ、アルベアちゃんのこの反応。あの中の誰かがザムさんであることは間違いないだろう。


 一体誰が、と考えたところで――わたしは恐ろしいことに気が付いてしまう。

 あれ、わたしもアビィさんも、ザムさんの顔、知らなくない? と。

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