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04

 国境関門の職員に、鞄が盗まれてほぼ無一文になったから仕事を紹介してくれる場所を探している、と相談したら、スキル鑑定所を教えてくれた。


 スキル鑑定。


 そう言えばそんなものがあったな、と、わたしは職員に言われて思い出した。

 わたしの生まれた国では、スキル制度があることで差別が生まれ、自由に職業を選ぶことへの障害になる、と、随分前にスキル鑑定が廃止されている。なので、わたしは自分がどんなスキルを持っているか分からない。


 スキル鑑定が廃止され、自分にどんな適性があるのか分からないまま自由に職についたところで、スキル鑑定が現役で、己が持つスキルと合致するような職業を選ぶのが常識の国と比べてそこまで生産性が変わらないところを見ると、あくまで『おすすめ』程度であり、スキルがなければどうしようもない、ということではないみたいだけど。

 国によってはすごく重要視しているが、わたしの生まれ育った国はそうでもない。


 とはいえ、スキル、なんて、よくあるネット小説の単語に少しわくわくしてしまう。異世界転生をしている時点で既にネット小説っぽいこと、はできているわけだが、それでもスキルで活躍する、というのは憧れのようなものがある。

 うまく仕事に繋がるようなスキルだといいな、と思いながらスキル鑑定所にわたしは足を踏み入れた。


 受付のお姉さんに挨拶をして、鑑定をしてもらう手続きをする。

 追放先に選んだ国では、学舎入り――つまりは、小学校入学と同時にスキル鑑定をするのが基本であり、わたしの年齢でスキル鑑定を初めてする、というのは本当に珍しいようだ。二回ほど確認された。


 じゃあなんの為にここがあるのか、と聞けば、就職の為に、スキル鑑定証明書が必要になることがあるので、その証明書を発行するためにスキル鑑定所があるらしい。場合によっては、そのまま職場を案内してくれるのだとか。

 職場を案内してくれると助かるな、と思いながら、わたしは言われるがままに受付のお姉さんに鑑定室に連れて行って貰った。


「――それでは、腕を出してください」


「うで」


 受付のお姉さんは、何故か注射を準備している。


「スキル鑑定には一定量の血液が必要ですので、採血するんです」


「さいけつ」


 魔法パワーでなんかこう、いい感じにパーッと水晶とか魔法道具とか使って格好よく鑑定してくれるんじゃないの。

 勝手なわたしの妄想は簡単に打ち砕かれた。


 注射嫌いなんだよなあ。

 わたしが腕を出すのをためらっていると、「にゃあ」と鳴き声がした。これはひいさまの声。

 そうだ、わたしはショドーとひいさまを養うために働かねばならないのだ。


 わたしは泣きながら受付のお姉さんに両腕を差し出した。


「片方で大丈夫です」


 そう言ったお姉さんの顔は、きっとドン引きしていたに違いない。いい歳して、注射が怖いと泣きながら両腕を出す女がどこにいる。

 まあ、ここにいるんだけど。

 ショドーとひいさまを養うためになんでもする所存ではあるものの、怖いものは怖いし、痛いものは痛いのだ。

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