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さくっとパン屋で買い物を済ませて、わたしは店の外に出る。意外とおいしそうなパンが色々と並んでいたし、そのうちここに来るのも悪くないかも。今働かせて貰っている店からも近いし。
なんて思っていたのだが――。
「いや、いないし!」
本当に自由人なのか、パン屋の出入口の近くにいなかった。ちょっとの我慢もできないの? 子供かよ……。
きょろきょろと辺りを見回すと、少し先の店のショーウィンドウをまた眺めているようだった。
「近くにいてくださいよ、もう」
わたしはイベリスさんに駆け寄る。「ごめん、ごめん」なんて謝ってはくれるものの、口先にしか聞こえない。こんな適当な人で、よく店が勤まるものだな。……その代わりに、ヴォジアさんとノルンさんがしっかりしている、ということなのだろうか。
わたしがパンの入った紙袋とお釣りを返すと、「あれ、君は買ってこなかったんだ?」とイベリスさんがクロワッサンっぽいパンをかじりながら言う。
「お腹、あまり空いていないので」
「そっか」
そう淡々と返事をすると、イベリスさんはパンを無言で食べ進める。……これがこの人の朝食、なんだろうか? 一応、人通りのない場所に避けているとはいえ、もうちょっと落ちついた場所で食べればいいのに。
「……そういえば、イベリスさんって、あまり店にいないんですか?」
わたしは、イベリスさんが一つ目のパンを食べ終わるタイミングを狙って、問うた。
ヴォジアさんの連れられ、あの店でアルベアちゃんの世話をするようになってからもう二週間くらい経つが、イベリスさんを見たのは今日が初めてである。困ったときに何か聞けるのはヴォジアさんではあるから、まあ、正直に言えばいてもいなくても変わらない存在ではあるんだけど……。
とはいえ、一応でも店長だというのなら、いるに越したことはないと思う。
「ああ、オレ、探し物をしてるからね。基本は店にいないよ。あの店、親から継いだ店なんだけど、そこまで本気で儲からせるつもりもないから、ヴォジアとノルンでなんとかなってるし、いなくてもいいかなって」
「探し物……ですか」
つい先ほどの込み具合を考えてみると、もう一人か二人いた方が楽だとは思うのだが……。でも、確かに、どうしようもなくなってはいなかった。
親から受け継いだ店を放ってまで探しているものって、何なんだろうか。
わたしの疑問は、すぐに解消される。
「オレの呪いを解いてくれる、解呪の魔法を覚えている人か魔物を探してるの」
イベリスさんは、ごく自然に、なんでもないことを話すようにそんなことを言い、二つ目のパンを口にした。




