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そういえば、ショドーが実は人間を食べるくらいの狂暴な肉食の魔物とは聞いたけど、ひいさまはどんな魔物なのか聞いてなかったな。
「ひいさまはどんな魔物なんですか? ええと……ウルトラキュートでしたっけ?」
「ウルトピアだよ、なんだウルトラキュートって」
わたしの言葉に、ヴォジアさんは呆れたような視線を向けてくる。
名前の長さが違うっていうのは分かってたんだけど、ウルトラみたいな感じの名前だな、って覚えてたからその先がでなかったのだ。ひいさまに対してウルトラと言えばキュートに決まっている。
「ウルトピアは聖魔法を覚える、数少ない魔物なんだよ。だから、国によっては聖獣って呼ばれて重宝されてる。ただでさえ聖魔法を覚える魔物は種類が少ないのに、ウルトピアは、そのなかでもとりわけ珍しいからな」
「へえ」
聖魔法って言うと……たしか、光属性の中の分類の一つで、後天的に習得できない、生まれ持った適正がないと扱うことができない魔法のことだったはず。
わたしが生まれ育ったゼインラーム王国では、魔法に関して学ぶことは、ほとんどない。魔法を使うと魔女扱いされてしまうから。
とはいえ、完全に無知でいるとそれはそれで危険なので、貴族家の中で二つの家だけが研究することを許されていて、ある程度の情報を得ることはできる。どういう魔法がある、というのは知れても、どうやって魔法を扱うのか、というのは一般に知られない話ではあるのだが。
「ウルトピアは聖魔法の中の一つどれかを覚える。『予知』『治癒』『解呪』のどれを習得するかは個体によるから、アンタのウルトピアがどれを覚えるかは知らないが……」
ひいさまがどの魔法を覚えているかは分からないけど……でも、わたしはひいさまと一緒にいると毎日が超絶ハッピーな生活を送れているので、治癒でわたしの体調を整えてくれている可能性があるな。
予知能力があるのなら、家を追い出されることもなかっただろうし。ひいさまを拾ったのがバレて母親に怒られ、そのまま婚約破棄て家から追い出されたわけだからね。
「うちの国はスキルを重視してるからたいした金額にはならないが、隣のシャンドン公国なら一生遊んで暮らせるだけの金になるぞ」
「は? ひいさまは売りませんけど」
わたしの家族なのだから金に変えられるわけがない。いくら積まれようと手放すつもりはない。実際、侯爵令嬢という立場を捨ててまでひいさまを取ったのだから。
でも、わたしのそんな反応はお見通しだったのか、ヴォジアさんは「分かってる、提案しただけだ」と言った。
いや、分かってんなら言わないでよ。




