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預かりもの、ということは、誰かが飼っていたんだろうか。
「……ま、別に隠してるわけじゃないからな。どうせそのうち嫌でも耳に入るだろうし」
そう言って、ヴォジアさんは説明を始めた。
「ここの店、討伐依頼も請け負ってる、っていったろ? 僕がテイマースキル持ちだから魔物持ちも宿に泊ったり、なんなら魔物を預けることもできるから、魔物持ちがよく来るんだよ。だから、討伐依頼もそういう奴向けのが自然と集まる」
口ぶりからして、魔物と一緒に宿に泊るためには、従業員にテイマースキル持ちが必要なようだ。ここの仕事が終わったら、そういう方面の仕事を探すのが早いかな? 猫限定だけどテイマーのスキルというか加護に違いはないし。
「んで、あいつの相棒もそういう奴だった。ラグリスは猫族の魔物だからな。鼠族の駆除が得意だから、そういう系の魔物討伐依頼をよく受けてたよ」
なるほど……! そういう仕事もありだな。猫系の魔物を相棒にして戦う……いいな。
――なんて、のんきなことを考えてたのも束の間。
「でも、ある日の依頼で、そいつは帰ってこなかった。……戻ってきたのはあいつだけ」
「……そ、それって……」
ヴォジアさんは最後まで言わなかったが、その表情を見れば、なんとなく察しはつく。ああ、言われてみれば――「あいつの相棒もそういう奴『だった』」って言ってたな、ヴォジアさん。
過去形。
つまりは、そういうことなのだろう。
別のことを考えながら聞いていたものだから、その違和感を聞き逃してしまった。
「相棒にしか懐かない奴だから、僕やノルンじゃ近付くのも大変ってわけ。飯は食わなきゃ死ぬって分かってるみたいだから大人しく食ってくれるけど、他は駄目なんだ」
「そう、だったんですか……」
そこまで言われてしまうと、流石にもう、つっぱねることはできない。アルベアちゃんの扱いが難しい、というのも事実だろうが、多分、彼と接することで、アルベアちゃん越しに、その相棒だった人を思い出してしまうのが辛いんだろう。ヴォジアさんの表情からして、それなりに仲が良かったに違いない。
仲の良さそうな一人と一頭の思い出があるのに、取り残されたアルベアちゃんが威嚇してくる、という姿を見たくないんだと思う。
「二、三か月の話ですから、貰ってくれると助かります」
そう言って銀貨を渡そうとしてくれるノルンさんを拒むことは、わたしにはできなかった。
――……二、三か月?
そう言えば、そんなこと、ヴォジアさんも言ってたな。確か……部屋を案内してくれたときだったっけ。
預かりもの、というのなら、どうしてに三か月、なんて期限があるのだろう?




