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01

 猫吸い。


 それは、前世でわたしが死ぬほど憧れた行為。重度の猫アレルギー持ちだったわたしには、本当に死ぬ覚悟でやらないとできない。

 猫が大好きで、一度でいいから触ってみたくて、それでも叶わないから、暇さえあれば猫動画や猫の写真を漁って、文房具とか日用品とか、全部猫モチーフで埋め尽くして。


 そんなわたしの前世の死因は、車にひかれそうな猫を助けるために、車道へ走り混んだことだった。お猫様を助けることができたのだ。人生に一片の悔いなし。

 わたしは、車に跳ね飛ばされて、アスファルトに叩きつけられ、その上で、死んで意識がなくなる限界まで、ずっと願っていた。

 神様、次に生まれる場所は、猫やネコ科のいる世界がいいです。猫アレルギーじゃないからだで、猫吸いをさせてください。

 お願いします。どうか、お願いします。


 ――そして、わたしの願いは叶った。叶ったには叶った。


 ここはよくあるファンタジー世界のとある王国。わたしはその国の侯爵令嬢として転生した。ちなみに四女。

 でも、この国はクソだ。生活水準は世界トップクラス、平和で治安が良くて、金もある。世界的にも発言権がある方で、観光資源もたっぷり。王政ではあるけれど、政治だって、まあ、表向きはとてもクリーン。理想郷、と言っても過言ではないほど。たった一点を除いて、完璧な国。


 しかし、そのたった一点が、わたしにとって最大の欠点なのである。

 その一点とは――。


「ルティシャ、貴女また猫畜生を拾ってきたのね!? 早く捨てて来なさい!」


「やだ!! この子はもうわたしの子なの!」


「いい歳して全く……このままでは本当にガザルカオン家から婚約破棄を言い渡されてしまいますよ!」


「じゃあ婚約破棄する!」


「ルティシャ!!!」


 売り言葉に買い言葉。しかし、勢いで言っったにしては冗談では済まないその言葉に、今世での母は烈火の如く怒り、わたしを怒鳴りつけた。


 ――そう、この国では、猫が忌み嫌われているのだ!


 猫は魔女の使い。魔女は人を惑わし、堕落させ、悪の道へと導く害悪。

 そういう価値観の元、形成された文化の国。

 魔法があって、魔女と呼ばれる人たちがいるのも事実。でも、魔女は人間と同じようにいい魔女もいれば悪い魔女もいる。


 そして何より、魔女は猫を使い魔にすることは滅多にない。

 この国では魔女と知られれば排除されてしまうので、魔女自体、ほとんどいないものの、実際の魔女は犬を使い魔にすることが多いのだと、国をまたいで旅をする商人に教えてもらった。猫は気まぐれすぎて使い魔にするには勝手が悪いらしい。そこがいいのに!


 生まれ変わって、猫吸いをできる体になって、猫の多頭飼いも余裕なくらいなお金持ちの家の娘になったのに、猫が嫌われる文化の国とか、何!?

 絶対あり得ないし、母から捨ててこいと言われたこの子は何がなんでも守り抜いて見せる。


 猫こそ、この世の頂点の生き物なのだ!

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