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一章 十年後の解放 6
俺は両目を見開きながら、驚きの表情を露にし、話しかけていた。
「なんだよ。…いきなり、呼び出すなんて。」
「やれやれ、…そんな口を聞かなくてもいいだろうに。」
「いいから要件は、なんだよ。」
しかし、キールは飄々とした笑みを浮かべていた。すぐさま席を立つと、此方に近づいてきて、手にしていた洋服を手渡してきた。
その服を俺は、まじまじと見た。
白地のシャツと紺色のズボンは所々に金の刺繍が入っていて、凄く高い物である。
さらに俺は怪訝そうに、質問した。
「なんだ、…これ?」
「それに着替えなさい。…そんな布一枚の、みすぼらしい格好からね。」
「お前が労働者に着せてたんだろうが、…」
「まぁ、いいから。」
「これを着てどうするんだよ?」
するとキールは、「君、もう帰っていいから。」と返事をしてきたのだった。
俺は思わず、キールの顔と洋服を見比べたまま、固まってしまった。
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