山での攻防 後編 8
その時、再びボアが咆哮を上げて立ち上がり、此方へと向き直る。顔が怒りで歪んでおり、臨戦態勢をとっていた。
(っち。…やっぱり、あの程度じゃ。…痛くも痒くもないか。)
と俺は心の中で悪態をつき、思わず舌打ちした。だがすぐに戦う構えをとると、
「来いよ、…この猪風情が。……」
と煽る様に言いながら、口元に不敵な笑みを浮かべる。さらに右腕を前に伸ばして手の掌を返すと、人差し指だけを繰り返し動かす仕草をした。
是等の仕草は、嫌な思いしかない。
いつも坑道の監視達に、「…奴隷風情が。」と馬鹿にして言われていた。
なんとなく俺は真似してみたのだった。相手も嫌がると思っての事である。
予想通りに、ボアは襲いかかってきた。
俺も思考を巡らせ、自分のするべき事を模索した。すぐに踵を返して、後ろにいるテッドやノイマンの方に向かって行動へと移った。
「…おい、何する気だ?!」と、ノイマンが慌てている。
「いいから。…黙ってろ!!」
対して俺は大声で告げると、ノイマンの腹部を、全力で蹴り飛ばした。
「げふっ!?」
そのままノイマンは苦痛の声を漏らして、明後日の方に飛び、近くの茂みの中へに落ちた。
突然の事に、テッドも戸惑っていた。
「ヒルフェ君?!…何を!?」
「いいから、来い!」
そんな様子を余所に、すかさず俺はテッドの手を取ると、ノイマンのいる茂みの中へと身を隠したのだった。




