一章 十年後の解放 ４
やがて、今日の作業が終わりを迎えた。
既に起きているには遅すぎる時間である。
全ての奴隷は、再び監視員達に連れられ、次々に牢屋へと戻される。
牢屋中は、酷い有り様だ。ただの横穴に鉄格子を取り付けただけである。おまけに不衛生極まりなく、不快な臭いが漂う。
俺も牢屋の扉を潜り抜けて、地べたに座り込むと、顔をしかめた。塵や砂埃が舞うと、顔にかかったからだ。
嫌な気分になる。部屋に戻って来ても、嫌な気持ちは晴れない。
暫くすると、監視者達が夕食を配りにやってきた。
「さっさと食えよ。」
と監視員の一人は、急かしてくる。
対して俺は相手を睨み付けながら、食事に手をつけた。瞬く間に食べ終わってしまう。
再び腹の虫の音がしていた。
「…全然、足りない。……」
と俺は思わず、不満を漏らしてしまう。ずっと同じメニューで、今まで満足した事はない。
しかし、最近は前より、食べても満腹にならない。
すると監視員は、鋭い目付きを向けながら、厳しい言葉を向けてくる。
「ふん。…だから、何だと言うんだ？…ただ単に、お前の身体が成長したからだ。…ガキの頃よりは、馬鹿みたいにでかくなったからなぁ。」
「あぁん？！」
「…でも、他より多くやるつもりはない。…終わったら、さっさと寝ろ。」
「くそったれ！！」
と俺も言い返し、相手が見えなくなるまで睨み付けた。
段々と、監視者達の足音が遠ざかる。
ふと同時に自分の身体も徐に眺めだした。
昔の俺よりは、身体が変わったと感じる。一番変わったのは髪で、長くなり背中まで伸びた。代わりに色を失い白くなった。さらに身長も伸びており、細身でも筋肉はつけてある。
「…俺は、いったい、どうなったんだ？」
と俺は呟き、寝床で目を閉じながら、改めて心当たりを思い返しだす。以前は、すぐに疲れて、食べた後は泥の如く寝ていた。
だが今はヘトヘトになるわけでもなく、寧ろ未だに動けるようだった。しかも一切、眠気もやってこない。
そうして時間が経ち、次の太陽が昇る時間になってしまった。
「…………。」
結局、俺は一睡もする事はなかった。
身体の異変の原因も答えが出ないまま、ずっと変な感じが身体の中で渦巻いている。
そのまま違和感は、終わらずに続いているようだった。
