間章 合間の出来事 5
この場の全員が振り返り、音の発生源の方に視線が集中する。
「もうじき此方に来るな。…さっさと逃げないと。」
細身の男は、そそくさと踵を返して逃げようとしていた。
テッドも我に返った。すぐさま美女にバンダナの男を託して動き出す。
そのまま彼は前に出ていき、細身の男の目の前へと立ち塞がると、説得を試みた。
「出来るわけないだろう。…本気で置いてくつもりか!?」
「だから、そう言ってるだろうが!…さっきからアンタは何を言ってるんだ?…お前だって、フォンに言われた筈だろう。」
細身の男も負けじと言い返し、追及しだした。
「い、言われたよ。…でも、そんな事は望んでないし、今はいがみ合っている場合じゃないだろう。」
テッドは言われて、苦々しい顔をするも、
「…どんなに嫌な人でも、やっぱり命を粗末にするのは間違っている!」
と、真っ直ぐ相手を見ながら言い放つ。
その様子を美女はバンダナの男を支えながら、行く末を見守っている。目の前のやり取りに、ハラハラして落ち着かない。
「うるせぇ!!…」
すると今度は、細身の男が舌打ちし、小瓶の蓋を開けて振り回すと、中身の液体の残りを全て辺りにぶちまける。
身構えたテッドは防御が間に合わず、液が口の中に入ってしまい、慌てて吹き出し、咳き込んでしまう。
「何が命を粗末にするなだ!!…ノイマンの馬鹿だって、バンダナの男を置いていこうとしていたクズ野郎だろうが!…助ける価値なんかないんだよ!!」
その瞬間に細身の男は、隙を見抜いて逃げ出した。去り際に罵声を浴びせながら、藪の中へと駆け出していく。全く止まる気配はない。
「待ちなさいよ!」と美女が呼ぶ。
もう相手は見えなくなってしまう。
彼女は悔しさに、地団駄を踏んでいた。
遅れてテッドも追いかけようとすると、身体の動きに違和感を感じ、足取りが覚束なくなって追いかけるのも儘ならない。また呂律が回らず、「ま、…待っ、んだ!」と、ハッキリ喋れなかった。




