山での攻防 10
全員で藪の中で、身を隠す。
美女や少年は、息を殺しながら必死に縮こまっている。
「ようやく逃げおうせたか?」
とノイマンが呟いていた。
俺やテッドが慎重に、藪の隙間から覗き込んで、魔物の様子を伺う。
「グモォォォォ!!」
幸いにもボアは、牙が木に刺さって引っかかっており、脱出に手間取っているようだった。
それでも難を逃れたのも、束の間である。
だんだんと大樹の幹は、メキメキと音を立てて、すぐに折れてしまいそうだ。
ボアが何度も身を捩っており、脱出を試みている。
残された時間も少なそうだ。
「隠れてやり過ごす?」と、美女が提案している。
「いや、鼻が効くから、すぐにバレてしまう。」と、ノイマンは否定してしまう。
俺達は顔を合わせて、相談を始めた。早めに対策を練っていく。
俺が口火を切って、問いかける。
「どうするんだ?」
「うぅん、と。…」
とテッドが唸りながら、頭を悩ませている。
それから他の皆も口々に喋りだした。
「これは、もはや試験の範疇を超えています。…もう皆で下山しましょうよ。」
「逃げるって、どうやって?!…簡単に言うけど、方法はあるの?」
「それは、…」
だが話は平行線を辿り、一向に結論は出ない。
「山を下りる意見には賛成だ。だが今は得策じゃねぇ。…ボルドー・ボアから逃げるにしても、一塊で動くと一網打尽でされるぞ。」
そこにノイマンが口を挟む。さらに暗い顔をしながら
「…この状況を打開するには、囮を使うしかないが…。」
と深刻そうに呟いていた。
それを聞いて、全員が息を呑んだようだった。
すると同時に、大樹の倒れる音がし、ーー
再びボアが猛烈な速さで、迫って来ている。
「ヤバい!」「皆、また逃げよう」
俺達は話を打ち切り、即座に立ち上がると形振り構わず逃げ出していくしかなかった。




