山での攻防 1
「では、始めるぞい!」
と、フォン支部長が試験の開始を宣言した。
それから間もなくの事である。
ギルドの男性職員が冒険者を呼びつける。
「では、皆さん。…試験会場の山に移動しますので、私の後に付いてきてください。」
すぐに冒険者達も、集まりだした。
俺も準備を済ませており、近くへ行こうとする。
すると背後から、リキッドが呼び止めてきた。
「ひ、ヒルフェ君。…怪我だけはしないでね。……」
俺は足を止めると、振り返って彼の方に向き直る。
リキッドは青白い顔で、おろおろしながら、情けない姿を晒していた。
「あぁ、わかったよ。…」と俺は素っ気なく返事し、踵を返して再び歩きだそうとした。我ながら無愛想な対応である。
しかし、リキッドは走って来ると、目の前に立ちはだかる。さらには、「…いや、えっとね。」と言葉を伝えようとしては、口ごもっていた。
ハッキリしないまま、時間だけが過ぎていく。
どれだけ心配しているんだか。と俺は心の中で悪態をつきつつ、感心してしまう。
ふと同時に、他の冒険者達の方からの視線も感じる。
俺は気づかれない様に、視線だけを向けて見た。
そちらでは冒険者が此方を見ながら待っている。各々が様々な反応を示していた。
美女や気弱な少年は、呆れて溜め息を吐く。
バンダナの男は、暇そうに欠伸していた。
ノイマンに至っては、これ見よがしに明後日の方を向いてから、「けっ。」と悪態をつく。
最後に好青年が遅れて戻ってくると、此方を見だした。
「ごめんね、…待たせて、……。」
ようやくリキッドも気がつき、振り向き様に謝りだす。苦笑いで誤魔化しながら、ペコペコと何度も頭を下げていた。
俺は何故だか居心地が悪く感じた。急いでリキッドの真横を通り抜けていき、他の面子と合流しに歩き出した。
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