一章 十年後の解放 12
ふと俺は話を聞きながらも、別の事を考えていた。必死に祖母の顔を思いだそうとした。
しかし、もう殆んど朧気にしか記憶していない。なんとなく年の割には若々しくて、綺麗だったとしか印象に残っていない。
「それから私達は愛し合う関係になっていた。…出会ってから五年も付き合い、…いつしか彼女はお腹に私の子供を身籠っていたんだ。」
ふとリキッドは話を続けていた。随分と先に進んでしまっていたようだ。
その後に俺は、質問する。
「…なら何で、ばあちゃんと一緒に暮らさなかった?」
「それは、…私の父が原因なんだ。」
とリキッドは答えた。だが途端に、顔の表情が曇りだした。先程よりも陰鬱な様子で、
「私達の関係を知った父が激怒したんだ。…貴族は同じ貴族と結婚しろ。と言って、持ちうる権力を振りかざし、マーサさんと家族を街から追い出したんだ。」
「はぁ?!…」
「…私は父に、止める様に頼んだ。…でも私には力がなく、願いは聞いてもらえなかった。…そして屋敷に監禁され続けしまったんだ。…ようやく屋敷から出た頃には、マーサさんは街から居なくなっていたのだよ。」
と、話を一区切りしたら、再び茶を口にして、息を整えていた。
すぐに、俺は聞き返す。
「…そんな事を、する必要があったのか?…」
「…当時、実家は没落寸前に近かったんだ。…だから、父は他の有力者の令嬢とでも結婚させて、家の再興を図ろうと画策していたのだ。…だが私は、もう実家の考えは嫌になってしまい、家を飛び出した。…結果的に実家は潰れたんだ。」
対してリキッドは皮肉げに言い、笑って肩をすくめていた。




