ほこりのない屋根裏
世の中には掃除をしていないのに埃一つない屋根裏があるらしい。
そんな都市伝説を調査する為、二人は怪しい噂のある家へと来ていた。
「新しい情報によるとマダムは何かの信者らしい。信心深いならこの作戦で、きっと上手くいくはず……」
ピンポーン!
呼び鈴を鳴らすと、上品な格好のマダムが家から出てきた。
「我々はゴーストバスター。この家は悪霊に取り憑かれています!」
「あら、あなた方、先日も爆弾処理や蜂の巣駆除で——」
あからさまに怪しいメガネ部長に対し、マダムは意外と冷静だった。
三度目の事で少し慣れていたのだろう。
「ぎゃああっ、この家の悪霊が、あーしに取り憑こうとしてるっすぅうう」
後輩ちゃんは誤魔化す様に大声を発した。
「急になんザマス!? ふざけてるなら帰るザマス」
「我々は真面目です! 聞いてください! 悪霊はマダムの大切な物を狙っているのですよ!」
「え、まさか……屋根裏のあれの事ザマスか!?」
「あー! 悪霊が屋根裏のあれをメチャクチャにしてやるって、あーしから離れて行ったっすー」
「う、嘘ザマス。でもなんだか不安になってきたザマス」
「これはあなたの為、あなたの為なんです! 除霊の為、家にあがりますよ!?」
「は、はいザマス」
二人に気圧されて、マダムはへたり込んでしまった。
だが大切な物が気掛かりで、すぐに我に返る。
「ぎゃー! やっぱり駄目ザマス! 特に寝室の本棚のスイッチは絶対に駄目ザマスー!」
それを聞いて探さない二人ではない。
「見つけたっす、スイッチオンっす」
天井の一部が開き、階段が自動で伸びてきた。
屋根裏に上がり、部長は指で床をなぞった。
「埃がない! ついに見つけたぞぉおお!」
噂の都市伝説を発見したと、二人は歓喜する。
「待つザマス、ピロンヌ様は私が守るザマス!」
遅れて屋根裏にきたマダムが照明を点けると、アイドルグッズ達が暗闇から出現した。そしてマダムは、子供らを庇う様にグッズの前で大手を広げた。
「ただの推しの信者じゃないっすかー、オチるっすー」
「大切な物の為なら丁寧に掃除もするか。ハズレだな」
「じゃあ、適当に除霊っぽい事して帰るっすかねー。ペタペタっと——有難い御札を貼ったので除霊完了っすよー」
後輩ちゃんが貼ったのは、スーパーの商品ならお財布には有り難い、半額の値札シールだった。
「ぎゃー! なんて事してくれたザマスぅうう!」
泣き崩れるマダムを捨て置いて、怪奇研究部は新たな噂を求めて颯爽と立ち去るのだった。