待ち伏せって、されると怖いよな
07:00 部屋に優しい電子音がする。
部屋のカーテンが開けられ、大量の日差しが部屋に入り込む。
光の波に押されて、部屋の住人が目を覚ます。
『 おはようございます、カミハ様 』
『 おはようアイ 』
『 今日は新樹歴122.117 0622。 只今の時刻は07:03。 今日のボルト10シティーは晴れ、気温23°、湿度29%の予定です 』
窓の外は今日も快晴だ。
って言うか、ボルトはドームで覆われてるから天然の雨は降らない。
予定は前もって知らされるけど、時々予定にない天気になったりする。
自然環境に近づけて、ストレスを減らすんだって。
今朝の体調も大丈夫そうだ、僕はポッドの教育が好きじゃない。
直接脳に情報を書き込んでるからなのか、終わった後にボーっとするんだよ。
僕の体調はアイが管理してくれてる、異常があったら教えてくれる。
アイが何も言わないって事は健康な証なんだけど、自分でも確認はしとかないと。
「 23℃か~。 これから熱くなるんだよな~ 」
ベッドから下りて軽めのストレッチで身体をほぐす、スリッパのままだ。
『 真夏には30℃を超える計画です 』
「 だよね~、暑いのは苦手だよ 」
これからだんだん暑くなる、グチっても苦手でも季節は止まってくれない。
でも今日から6組になってハイエルフと関わらなくていいから気分は軽い。
イヤな事ばかり考えてても気が滅入るだけだ。
ストレッチが終わったら着替えて日課のランニングに出発する、もちろん水分補給してからだ。
今日もボルト10の中心にある池の周りをランニングする。
心肺機能の強化じゃなくて、魔力の調整がメインなのは変わらない。
暑くなってきたから、少しだけランニングしてるエルフが減ってる気がする。
肌の露出が増えてるのは、気温が上がって来たからだと思う。
何時もと同じように走ってると、手首のポータルにメッセージが入った。
「 珍しいな、じいさんじゃん 」
メッセージを送って来たのは、樹木族のじいさんからだ。
じいさんは樹木族だから喋れない、喋れないけどコミューターを使ってコミュニケーションはとれる。
必要なら音声も出せるけど、あんまり喋ったのを聞いたことが無い。
『 お前を待ってるハイエルフが居るぞ 』
メッセージが気になって足が止まる、端に避けて周りを見るけどハイエルフは見当たらない。
ハイエルフは髪の毛の色が違うからすぐにわかる、カツラなんか被ってたら分かんないけど。
「 どこに? 」
『 ワシの前じゃ 』
樹木族のじいさんの前って言うと、ランニング後にエチゴと休憩するところだ。
「 朝からめんどくせ~ 」
朝っぱらから、ハイエルフがこんな所で何やってんのって思う。
どうせロクでもない無い事なんだろうけど、巻き込まれたくない、関わりたくない。
だったらどうするか。
『 じいさんありがと。 このまま家に帰るよ 』
『 それが良いじゃろう 』
簡単だ、エチゴんとこに寄らずにそのまま家に帰ればいい。
樹木族のじいさんにお礼のメッセージを送ってから、家に向かってゆっくり歩きだす。
朝からハイエルフなんて胃もたれするに決まってる。
昨夜、母さんとアイと話して、僕はハイエルフにできるだけ関わらないことに決まった。
家庭の方針ってやつだ、接触しない、近づかない、話さないの3ナイ運動だ。
シミュレーターのことも、Dでのことも、僕は最善の選択をしてるってのがアイの判断だ。
それは母さんも認めてくれてる、それなのにハイエルフは絡んでくる。
じゃあもう関わらない、それが最良の対処法じゃないかってことになった。
でだ、エチゴにはメッセージを送っとく。
『 足をグネったから、今日はこのまま家に帰る 』
って送っとけば良いよな。
走ってる時足をグネるのはマレによくある、だから問題無い。
何となく、ハイエルフがカメラにアクセスして映像を確認しそうな感じがしてきた。
だから、チョットだけ足を引きずる感じでユックリ歩く。
歩きながら公園の外にコミューターを手配して、直ぐに乗れるようにしておく。
公園の外に出てから呼んでもコミューターはすぐに来るけど、ちょっとでも早く離れたいから。
『 ダイジョブかい? 』
エチゴからのメッセージか来ると同じくらいに、僕の前にコミューターが到着する。
ナイスなタイミングだ。
『 ちょっとグネっただけだし、ポッドで直ぐ治るさ。 問題無い 』
コミューターが走り出してからメッセージを返信する、これでハイエルフとの接触は回避できた。
「 君子危うきに近寄らずってね 」
コミューターが走行レーンに移ってやっと一安心だ。
その時、ポータルに見かけない通知が出てるのに気が付いた。
なんだろうと思って確認したら、ハイエルフからアクセスがあったって通知だった。
内容を確認すると、僕の所在地を確認するためのアクセスだったらしい。
「 まじか 」
ハイエルフだったら、エルフの所在地を確認できる権利がある。
何でなのかは分からないけど、ハイエルフに認められてる権利だからしょうがない。
「 エチゴんとこに寄らなくて正解だった 」
ハイエルフが朝っぱらから何やってんだって思ったけど、僕の居場所を確認してたんだから僕に絡むつもりだったんだろう。
前もって居場所を確認してから待ち伏せするなんて、やっぱりハイエルフだ。
でも誰がアクセスしたのかは分からない、それもハイエルフの権利だからどうしようもない。
ハイエルフで最初に思いつくのは、エチゴの婚約者のイザベラだけど。
彼女が僕の位置を確認してまで待ち伏せる理由が思いつかない。
次に思いつくのはエチゴん家の関係者だな、貴族派か軍閥派かは知らんけど。
女王派じゃないとは思う、接点無いし。
判らない事ばかりだったけど、何事もなく家に到着した。
「 ただいま 」
『 お帰りなさいカミハ様。 早めのお帰りですね? 』
アイにランニング中に、じいさんからメッセージを受け取った事を話しておく。
足をグネったって事にしたのも話しておく。
『 足のスキャンと治療を実施しておきます 』
「 ありがと 」
ハイエルフが、ポッドの履歴にアクセスできるとは思えないけど念のためだ。
母さんへの報告はアイからしてもらう事にして、僕は登校の準備をする。
なってったって、今日から6組になるんだからな。
それと、アイに君子を調べてもらったけど見つからなかった。
現在も過去も名前として登録されてないし、物語や映画の登場人物にもいないそうだ。
文脈からして人物の名前らしいんだけど。
自分で言っておいてアレだけど、誰だよ君子って。
誤字、脱字、読後の感想お待ちしています。




