子の気遣いと母の気遣い
剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。
映像の録画が終わった、後は動画をアップロードするだけだ。
カメラを回収してから庭から家へと歩き始める、そうそう早めに動画を挙げておかないとね。
「 アイ、画像をチェックして 」
『 承知しました・・・チェック完了。 問題ありません 』
前に一度、アップしようとした動画に母さんが窓に張り付いているのが映ってたんだ、アイがトリミングで削除してくれたけどね。
そのままアップロードしたら、母さんの変顔がイスリル中に流れるところだった。
動画は誰でも見られるけど、動画にプラスを入れられるのはボルトの市民だけだ。
僕はボルト10に住んでるから、動画にプラスを入れられるのはボルト10の市民だけだ。
「 あんがと。 じゃあそのままアップしてくれる? 」
『 テロップやその他の処理はどうしましょう 』
僕は家のドアノブに手を掛けた状態でいったん止まる、嘘・大げさ・紛らわしいは避ける決まりだ。
母さんの変顔をトリミングで消したのも、画像に手を加えないための処理方法になる。
画像に手を加えると疑われる元になる、だから僕の方針はいつも通りにいつもと同じ。
「 いつも通りだよアイ、そのままアップして。 手は加えなくていいからね 」
変顔のサムネを掲載したり、暴力的な言葉で誘引したり、そんなのは僕はしない。
『 承知しました、アップロード完了しました 』
「 ありがとアイ 」
ドアを開けてリビングに入ると、母さんがコーヒーを淹れて待っててくれるのもいつも通りだ。
母さんの鼻の先っぽが赤いのもいつも通りだ、また窓にピッタリ張り付いてたんだと思う。
変わらない日常、これを守るためにみんな色んなところで働いてるんだと思う。
僕もいずれは働く、どこで何をするかは決まってないし決めてないし、もう少し先になるだろうけどね。
「 カミハ、アップロードは終わった? 」
「 終わったよ母さん 」
ソファに座ってコーヒーを受け取る、寝る前の一服だ。
コーヒーには興奮剤の一種であるカフェインが入ってるんだけど、寝る前に飲んでもなんでかよく眠れるんだよな。
飲むと落ち着くし次の日の目覚めも快適だ、だから母さんに頼んで毎日淹れてもらってる。
きっとカフェインが身体中にいきわたる前に寝ちゃうからだと思ってる、寝ている間にユックリ体に行き渡って目覚めが快適になると思ってる。
「 明日からはDで実習よね。 準備は大丈夫? 」
「 うん終わってる。 アイにも確認してもらったから、忘れ物は無いと思う 」
『 携行品のパッキング完了。 マジカルスーツの整備・調整完了しています 』
母さんがコーヒーを飲みながらアイの報告を訊いてる。
「 携行品には非常用の糧食も入っているのかしら? 」
『 1週間分を携行して頂きます 』
非常用の携行品は、1週間に必要とされるエネルギーと栄養素と水分を含んでいる。
最悪の場合なら水分はマジカルスーツで再利用も可能だけど、それは最後の最後にしたい。
気持ち的にかなり抵抗が在るからね。
「 1週間分・・・・・・それなら大丈夫ね 」
チョット考えてた母さんが笑顔に戻ってコーヒーを飲み始めた、コーヒーのお供は甘さ控えめのクッキーだ。
僕はジャムが乗ってたりチョコが入ってた方が好きだけど寝る前だからな。
ちなみに最初のDの実習は1時間で終わる予定になってる。
「 カミハ。 女の子には優しく接しないとダメなのよ 」
「 大事な壊れ物を扱うように、でしょ? 」
「 そうよ。 それは絶対に守ってね 」
「 母さんの言いつけは必ず守るから大丈夫だよ 」
僕は最後に残ったコーヒーを飲み干してソファから立ち上がる、クッキーを一枚取るのは忘れない。
「 歯を磨いてから寝るんですよ 」
「 ハーイ 」
クッキーを食べながら歯を磨きに行く、歯を磨くのは食べ終わってからだ。
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「 カミハは寝た? 」
『 2分前にお休みになりました 』
「 歯は磨いたのよね? 」
『 シッカリと磨いたのを確認しています。 除去率97%以上です 』
コーヒーカップを置いてモニターに向き直る、そこにはカミハの色々なステータスが表示されている。
カミハが寝てから始める私とアイの教育方針決定会議。
『 カミハ様のステータス充足率は平均で12.3%。 育成計画通りに進捗しています 』
「 明日からはDの実習も始まるし、5年後には3回目の神樹式が出来そうね 」
ステータスは器って言われてる、その器に入れるのは努力と根性の成果。
じゃなくて愛と友情の物語。
でもなくて勉強と運動の成果になる、何をどれだけ学んだかの成果ね。
手を抜けば上がりにくくなるし、怠ければ上がらない。
『 サラ様、やり過ぎには注意をお願いします 』
「 判っているわ 」
やり過ぎはやらないより遥かに悪い結果を招いてしまう、取り返しがつかない事態になる。
使い過ぎた筋肉は裂けて二度と同じ状態には戻らない、脳も心も同じ。
壊してしまったら二度と元には戻らない、でも何もやらないと衰えてしまう。
『 カミハ様の心的ストレスは許容限度範囲内です 』
「 じゃそっちは現状維持ね 」
アイは、カミハの使った食器や排泄物に含まれるストレス物質を毎日計測してる。
直ぐに対処できるように。
やり過ぎると2度とは元に戻らないのは心も同じ。
ストレスを与え過ぎると壊れてしまう、でもストレスが少なすぎても変質してしまう。
好き放題に、やりたいように、何の制限もなく育った心には歪みが生じてしまう。
壊れたり変質した心は元には戻らない、身体が健康でも精神が不健康だと意味はない。
「 本当に母親になるのって大変ね~ 」
『 サラ様。 大変とおっしゃる割には楽しそうに見えますが? 』
「 楽しいわよ~ 」
『 子育ては大変なのでは? 』
「 大変よ~ 」
『 困難な事を成し遂げた際の達成感、と言う事でしょうか? 』
「 ん~チョット違うかな。 自分の子供を育てるのって、そう言うんじゃないのよね~ 」
『 カミハ様は養子ですが? 』
「 あらアイ、それが問題なの? 」
コーヒーを一口飲む、今日も上手く淹れられたカミハも、嬉しそうだった。
『 問題は在りません、遺伝的な繋がりが無いと指摘させて頂きました 』
「 それが無くても母親になれるのよ 」
子供を産むのは雌としての機能が備わっている事の実証でしかない、それは雌雄別体の生命体ならどんな生命体でも変わらない。
育てるのはもっと大変、種族によって違うけど一人前になるまで何十年何百年の期間が必要になる。
その間ずっと子供の面倒を見て、子供のやったことの責任をとらなければいけない。
その途中で周りに迷惑を掛けないように、一人前になってからも迷惑を掛けないように育てないといけない。
誰も犯罪者や殺人者を育てようとは思わないだろう、一人前に、出来れば世の為になるように、そして何より健康で健やかに育てたいと思うはず。
カミハにも生物学上の父も母もいる、誰かは知らないけれど。
でも今はここに居ないから私がカミハの母になる、父親はどうしようもないけど私だけでも育ててみせる。
私は1個艦隊を預かる身だ、決して暇じゃない。
そこにカミハの世話とカミハの為の色んな調整が加わる、ハイエルフとかの付き合いはとても面倒で時間もかかる。
でもカミハの為にはやっておきたい、疲れるなんて言ってる暇はない。
「 カミハは寝たのよね 」
『 10分前に就寝されています 』
「 ちょとカミハの寝顔を見に行こ~っと 」
ソファから立ち上がってカミハの部屋に向かう。
『 サラ様、カミハ様を起こさないようにお願いします。 質の良い睡眠は、 「 大丈夫、分かってるわ 」 』
カミハの寝顔を見たら報告書を書き上げよう。
そしたらお風呂に入って寝ることにしましょう。
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誤字報告ありがとうございました、早速修正させて頂きました。




