集団戦闘における規格の重要性
剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。
エルフ族は魔法が得意だ、自身の魔力を変換して魔法として発動してる。 大昔は詠唱してたそうだ、一部ではイメージだけで発動できる無詠唱があったとか。 詠唱するより圧倒的に早く発動できるから、無詠唱出来るヤツは威張りちらかしてたらしい。 大昔はね。
「 では、カミハ君。 服を脱いだらスキャナーに入ってくれるかな 」
店内にあるスキャナーに入る、下着だけになるのは正確さを重視するためだ。
「 準備出来ました 」
「 始めるわね。 少しくらいなら動いても構わないけど、リラックスしておいてくれるかしら 」
リラックス、力を抜けってことだな。 深呼吸してから力を抜いてダランとする。
「 力抜きすぎよ。 まぁ、良いけど 」
笑われた、リラックスしろって言ったのそっちじゃん。 嫌味でも言ってやろうかと思ってたら、スキャンが始まった。 上と下から緑の光が何度も上下する、あっという間に終わった。
「 終わったわ、もう服を着ても良いわよ 」
スキャナーから出て服を着る、これで全身の寸法が計測できたらしい。
嫌味を言う時間すらなかった。
「 指令、カミハ君は4属性ですか? 」
「 そうよ。 だから、タイプ32Dが良いと思うの 」
「 32ですか、ちょと中途半端じゃないですかね。 装甲が必要ならむしろ52の方が・・・ 」
母さんと店長がカタログを見ながら話し始めた。 また長くなりそうだ。
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エルフ族が宇宙に手を伸ばし始めたころ、新たな物質マクロニウムが発見された。 マクロニウムは武器や防具にするには柔らかすぎた。 しかし極めて魔力抵抗値が少なく、その特性を生かして様々な物に流用されていった。 その一つがマジカルスーツだ。
当時の軍には、特に指揮官以上のクラスの頭を悩ませていた問題があった。 エルフは魔法が得意だ、特にイメージのみで発動できる無詠唱魔法は、1対1の決闘や少数同士の戦いには極めて有効だった。 しかし同時に致命的な欠陥もあった、すべてがイメージで決まってしまう。
たとえ詠唱しても魔法の射程や速度、貫通力や破壊範囲は一人一人違う。 そもそも、即時対応が出来ない時点で、戦闘に用いるのは無理があった。 無詠唱は発動までの時間は短いものの、同じエルフでも体調によってイメージがバラつくから、結果的に全てが不安定で集団戦闘で効果的な集中運用ができない。
科学者達は軍部から何とかしてくれと泣きつかれたが、全員に何時でも不変のイメージを持たせる事は不可能だと早々に諦めた。 洗脳してイメージを植え付けても、体調の変化まではどうしようもなかった。
宇宙に進出してクイーンとの戦いが始まると、問題はさらに悪化した。 効果や範囲、全てがバラバラの魔法で集団戦闘は行えない。 少人数で戦うことは可能だが、数を集めて集中運用できなければ軍ではない。 やってみないと効果が分からない魔法に、部下の命を預けたがる指揮官などいなかった。
軍部からの要請に科学者が出した答えは、マジカルスーツとマジックガンだった。
マクロニウムを使用したマジカルスーツは、身体から出ている魔力を効率的に伝えることが出来た。 あとは、それを蓄えて変換してやれば良い。 全身から集められた魔力はマジックガンに伝えられ、魔法陣によって魔法となって放たれる。
引き金を引くだけで発射可能で、射程距離も威力も誰が使ってもほぼ同じ。 魔法陣を変更すれば、誰でも4属性が使用可能となった。 魔法の効果を上げたければ魔力をタップリ込めてやれば良い、貫通力を上げるなら魔法を収縮してやれば良い。
引き金を引くだけだから、イメージより発動は早い。 極々一部の、極大魔法を使える魔法使いを除いて、全てのエルフが同じ性能の魔法を使えるようになった。 適性の無い魔法は、魔力の変換効率が悪くなり射撃回数は減ってしまう。 しかし、統一性のある魔法を手に入れたことにより、部隊の効率的な運用が可能となり、充分以上に補うことが出来た。
伝説の魔物は伝説の勇者が倒すべきで軍の仕事ではない、軍の上層部はそう割り切った。 もっとも、数人の勇者が居てもどうにもならない、銀河は広大だ。
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学校の授業は実技がほとんどを占める、知識は学習ポッドで充分だからだ。 でも、知識と経験が結びつかないと体得したことにはならない。 知識だけあっても、実際に体験していないと身体は動いてくれない。
「 カミハはどれが良いと思う? 」
「 何でも出来るやつが良いんじゃないかな。 細かな作業もできるタイプはどう? 」
非戦闘タイプのマジカルスーツは学校指定がある。 それは決定として、実戦訓練用の戦闘タイプが難しい。 ステータスに沿ったタイプを選ぶのが一般的なんだけど、僕はオールD。 何かに特化させても専門タイプには敵わない。 だったら、何でも出来るスーパーサブを目指すべきじゃないかと思う。
「 そうすると装甲が薄くなっちゃうから、心配なんだけど・・・ 」
全てのタイプのスーツは基本的な装甲を保有している、特に戦闘用は何層かの構造によって最低限の耐寒、耐熱、耐衝撃性能は備わっている。 装甲を厚くすると防御力は上がるが、各関節の可動範囲が狭くなる。 質量が増えるから機敏に動けなくなるし、細かな動作もできない。
何かを得ようとすると、何かを諦めなくちゃいけない。 ステータスに合わせられれば間違いないし簡単なんだけど、僕みたいなステータスだと選択肢がありすぎる。
「 いいわ、カミハの言う通りにしましょう。 でも装甲は付けるからね? 」
クイーンや護衛と戦うのか、工場で働くのか、それとも農園で畑仕事になるのか。 どれも重要な仕事だ、でも僕に何ができるのか、何に適性があるかはまだ分からない。 僕のスキル コマンダーは指揮系統のスキルみたいだから、たぶん戦場に行くことになりそうだけど。
「 カミハ、彼女にステータスを見せても良い? 」
「 良いよ~ 」
神殿で調べてもらったステータスのデータは、親が受け取ることになってる。 本人はプールに入って濡れてるし、着替えなくちゃいけない。 店長が、僕のスーツにどれだけ装甲を追加できるのか、ステータスで確認したいんだって。
「 あら、見事なくらいまっ平ね! 」
店長が驚いてる、事実だから仕方がない。 店長がまっ平に近いのも事実だから仕方がない。 母さんの方が豊かだ、それも事実だから仕方がないだろう。
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