母さんとの約束
剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。
朝食が終わると、母さんがコーヒーのお替りを淹れてくれる。 ミルで豆を挽いてペーパードリップだ。 夜に飲む時はネルドリップになったりもする。
僕は母さんが淹れてくれるコーヒーが好きだ、淹れてるのを見てるのも好きだ。 流れるような手順はいつ見ても綺麗だなって思うし、いつまででも見ていられる。
『 サラ様、宇宙軍からお迎えが来たようです 』
コーヒーを飲みながら母さんと話してると、来客だとアイが知らせてくれた。 時刻は07:45、いつも通り宇宙軍からの迎えだそうだ。 玄関にはインターフォンもあるんだけど、それより早くアイが教えてくれるんで使われたことは無い。
「 じゃあ行ってくるわね、カミハ。 今日もシッカリ勉強してね 」
「 分かったよ母さん 」
ボルトシティー内を走ってるコミューターは、全て自動化されてる。 目的地の住所か、目的地に住んでる住人の名前を言えば、ちゃんと連れてってくれる。
でも母さんは、コミューターで何度も迷子になってる。 その度に母さんからの救援要請が来るんで、僕が迎えに行ってる。
全自動のコミューターで迷子って、マシントラブルとか故障とかしてた訳でも無いのに、どうやれば迷子になれるのか僕には分からない。
『 迷子になりたい 』 と 『 何処でもいいから連れてって 』 は試したことがある。 そのまま病院に連れてかれて検査になってから、それ以上の検証はしてない。
宇宙軍が母さんを迎えに来るのは階級のことも関係あるけど、母さんにコミューターを使わせると迷子になるからだ。 迷子になると母さんは半ベソになって、家に着くまで僕の手を離さない。 決して認めないけど、迷子になって泣く司令官は母さんだけだと思う。
母さんのスキル アドミラルは艦隊全体に効果がある。 乗員のエルフには効くし、艦隊の一員だったら他の種族にも効く。 もちろん艦や艦載機にも作用する。 強力なスキルを持ってるのは、良いことばかりじゃない。 母さんみたいにその反動が必ずある。
それに迷子になるのは、母さんがポヤポヤしてるのも原因の一つで、スキルは関係ない・・・
『 カミハ、しっかり勉強するんですよ? 』
玄関に向かう僕を、母さんが後ろからハグッとした。 いつの間にか直ぐ後に来てたみたいだ。
「 はい、母さん 」 余分なことは考えない様にしよう。
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「 サラ司令官。 お迎えにあがりました 」
「 カエデさん!? 」
「 お久しぶりね、カミハ君 」
僕が玄関を開けると、宇宙軍 佐官の制服を着たカエデさんがいた。 カエデさんは大佐で母さんの副官をしてる。
「 お久しぶりです。 今日はカエデさんがお迎えなんですね? 」
「 ええそうよ。 サラ司令官は、もう直ぐ長期休暇ですからね。 引き継ぎ事項が多くて一秒もムダに出来ないの 」
「 そうなんですね 」
「 という訳でサラ司令、行きます・よ・・・ 」
僕の後、母さんの方を見たカエデさんが固まった。 振り返ると、腕を組んで身体ごと横を向いてる母さんがいる。 ホッペタがパンパンに膨らんでる。
母さんに近づいてからハグっとすると、母さんは正面から僕をハグっとする。 さっきまで横向いてたのに素早い、さすがに軍人だ。
「 行ってらっしゃい、母さん。 気を付けてね 」
「 行って来ます 」
母さんの仕事は艦隊の司令官、仕事は戦う事だ。 そのままクイーンとの戦場に行くことだってある、帰って来れなく事だってある。 嫌だけど、クイーンとの戦いはまだまだ続いてる。
だからこれは必ず帰って来るって言う、母さんと僕の毎朝の約束だ。 カエデ大佐に挨拶してて、チョット遅れちゃったんで拗ねてただけだ。
母さんと手を繋いで家の前まで歩く。 家の前に停まってるのは、宇宙軍の銀色の専用コミューターだ。 一般のコミューターよりも大きいのは緊急時に備えてだ、内緒らしいけどそのまま衛星軌道まで飛んで行けるんだって。
「 行ってらっしゃい 」
母さんたちが乗ったコミューターが見えなくなるまで手を振る。 外からじゃ中は見えないけど、中からは見えるんだって。 母さんは車内で振り返って、ずっと僕のことを見てるらしい。
アイに呼ばれて、何度か途中で切り上げたことがある。 その日は1日中母さんの期限が良くなかったらしい。
イライラとかピリピリじゃ無くて、落ち込んでたみたい。 『 見送っていただけると助かります 』 って送迎の士官さんに言われてからは、何かあっても見送りを優先してる。
職場見学をしたことは無い、したいって言っても無理だろうし。 艦隊司令官の部屋には、息子でも一般人が入れるとは思えないからね。 もう直ぐ学校が始まるんだけど、親の職場見学があったらどうするんだろ。
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