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重大な決定ほど、本人が居ない所で決まるもんだ

剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。


続いて農林水産庁長官が報告する。 テラから運んできた植物は、概ねそのままで栽培が可能であり、エルフ族にとっても有用だと。 育てやすく栄養価も十分だと。


「 栽培には、樹木族の協力を得ました 」


樹木族大使が、枝をサワリと動かす。 同意、または、身近な間柄だと気にするなの意味にもなる。


『 珍しい植物に接することは、私たちの知的好奇心を刺激する。 それに、エルフ族への協力は当然のことだ 』


樹木族同士のコミュニケーションは、わずかな枝葉の動きや葉の擦れ合う音で行われる。 他種族との交流には、専用のコミュニケーターを用いて、機械の音声にて行われる。 エルフ族と樹木族は強力な友好関係にある、森に生きてきた種族と、森そのものの種族だから当然ではある。


『 実に興味深い経験だった。 君たちの運んできた種子や苗は、ほぼそのまま栽培可能だった。 多少、足りない栄養素は補充したがね 』


地中の物質を分解して、植物に有用な栄養素に変換するのは地中に存在するバクテリアの仕事だ。 植物は、自分に適合した栄養素に分解してくれるバクテリアがいない場所では植物は育たない。


『 テラリアンといい、植物といい。 大いなる意思の存在を感じた 』


「 またその話か、翁の話はあまり気にしなくていいぞ 」


イスリル17世は笑う。 銀河系をどれだけ探しても、エルフと交配可能な族は見つからなかった。 それが、銀河系のほぼ反対側に存在した。 大いなる意思や、超古代文明好きにはたまらない話題であっただろう。 どれだけ探しても、未だに大いなる意思が存在する証拠は確認されていないが。


「 ここまでは良い報告なのだがな、これからは貴族がらみの嫌な話になる 」


当初、エルフ族と交配可能なテラリアンの発見で、エルフの未来は明るくなると思われた。 だが、すぐに別の意見が台頭することになった。


『 まだ銀河の40%以上は未探索である。 そこには、テラリアン以上の存在、もしくはエルフ族がいるかもしれない。 何も獣人族サル類と交わり子孫を残さなくてもよい 』 と。


モンステラの帰還と、テラリアンの存在は隠しきれなかった。 尾ひれのついた、誤った情報が独り歩きされては今後に差し障る。 そう考えたイスリル女王は、貴族であるハイエルフには詳細な情報を公開することにした。 全てではなかったが。


そして、テラリアンを受け入れる派と、捜索を強化すべき派が生まれる事となった。 女王派、貴族派、軍閥派が入り乱れて意見が交わされた。 純粋にエルフ族の未来を考える者達と、自身の利益を考える者が入り乱れてさらなる混乱を招いた。


「 それでだ、余は遷都する事とした 」


テラリアン受け入れ派のみを引き連れ、母星とは別の惑星に新しい王都を築く、女王はそう決定した。 母星の守護は、聖地保護の命を与えられた女王の妹のイスリラが治める。


「 反対派、賛成派、どちらの意見にも見るべきところはある。 どちらが正しいかは、余には分からん 」


そう言って女王は豪快に笑う。


「 だからだ2つに分ける事にした。 新しく首都を置くのはこの惑星だ 」


女王が指し示したスターチャートは、エルフ族の母星イスリルより最前線に近く、樹木族と国境を接している恒星系だった。 新しい首都がおかれる星はイスリルⅡと改名され、首都はモンステラと命名すると宣言した。


「 それにしても、新テラリアンは個性的な外観をしているな。 実に魅力的だ 」


「 陛下! 見た目に惑わされてはなりませんぞ。 ことは王家のみならず、エルフ族の未来に影響するのですから 」


「 分かっておる、その辺りは婆やの力を借りることにする。 婆やの目に叶ったものの中から選べば、宰相も文句はなかろう? 」


「 あの方の鑑定のスキルであれば、間違いないでしょう。 陛下に置かれては、くれぐれも・・・ 」


「 見た目でひいきはせぬよ。 そもそも、婆やがそれを聞くとは思えないしな 」


シャラシャラと音がした。 樹木族大使の笑い声だ。


『 誰が王になるか今から楽しみだ。 新たな王が、森を大切にしてくれる者であることを願う 』


「 それは大丈夫でしょう 」


科学技術庁長官が答える。


「 テラリアンは森林浴と称して、森の中で過ごすことを良しとします。 海水浴として、水の中で過ごすことも良しとします。 樹と水の重要性を理解していますので、大使の心配は杞憂に終わると考えています 」


『 彼らの中には、火を見ると落ち着くと言う者も居る 』


モンステラがもたらした膨大な資料には、キャンプファイヤーの資料も含まれていた。 暖炉やろうそくの火を見ていると、落ち着く者がいることも資料には載っている。


今回のテラリアンは全員が日本人だった、彼らの祖先は狩猟民族から農耕民族へと変化した記録があった。 木、水、火だけでなく土との付き合い方も知っており、全ての魔法属性に適性を持っていた。


「 大使のご指摘の通りです。 彼らは、特定の属性に対して嫌悪を抱くことがありません。 種族として、極めて異常なことです 」


資料には、大量の核分裂兵器に関する資料も載っている。


「 彼らは火を持とうとします。 より大きな火を持った者こそ、より強い者と見る傾向もあります。 しかし、自己が制御出来る範囲でのみ火を扱っています 」


『 肯定する 』


「 後は教育次第であろうな。 新たな都市には、緑と水と土を今まで以上に身近に配置するとしよう。 そのように設計せよ 」


こうして、遷都と新たな街作りが本格的に始まった。 反対派の目もあり、司令官たちに対する褒章は控え目なものとなった。 しかし、目をつけていた者の扶養権を手に入れた司令官は、それ以外はどうでも良いとばかりに微笑んでいたという。



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