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会議と報告とテラリアン

剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。

輸送船モンステラは、対クイーン同盟の要塞衛星にたどり着いた。 モンステラ座乗の司令官は、最重要のコードを用いて今までの報告書を司令部に送信。


その30分後には2個艦隊の派遣が決定された。 更に、女王直属の近衛艦隊の派遣も決定された。 1隻の輸送船の護衛としては、破格を飛び越して異常な扱いだった。


護衛艦隊の到着待ちと要塞ドッグでの修理のため、モンステラは20日間を要塞内で過ごすことになった。 要塞内ではその積み荷が噂になったが、モンステラの乗員のエルフ達の口は堅く、真実に辿り着けた者はいなかった。


艦の状態を考え積み荷を移し替えても良かったのだが、それに気付くのはかなり後になって、状況が落ち着いてからだった。 例えその決定が下されても、乗員が納得することはなかっただろう。 最後まで送り届ける、それが彼女達の共通の願いだったから。




エルフ族の母星 イスリル。


非公式の会議に出席するため、首都ユグドラシルの宮殿に司令官と艦長が出頭した。 出席者は女王である イスリル17世、宰相、科学技術庁長官、農林水産庁長官、軍務庁長官、そしてオブザーバーとして樹木族の在イスリル大使の6名だけであった。


「 此度の任務大儀であった 」


女王の一言で始まった会議は、極めて秘匿性の高い部屋で行われている。 この部屋から情報を盗むより、王座に座している女王の下着を盗む方が簡単だと言われている。 なぜ下着なのか、特に意味はない。


「 なに、緊張することはない。 少し話を聞きたいだけだ。 それに、テラリアン達の処遇も決まってな、お前達も話を聞きたいだろうと思ったのだよ 」


「 ご配慮に感謝します 」


集まったメンバーがメンバーなので、大佐でしかない艦長が発言することはない。 話すのは司令官以上の者だけだ。 いくつかの質問に司令官が答えたのち、経緯の説明が始まる。


「 科学技術庁長官、報告をお願いします 」


「 お手元の資料をご覧下さい。 テラリアンの魔素適応処置は、全員工程が完了しました 」


宰相に促され、科学技術庁長官が報告する。 この部屋は外部から遮断されている、魔法的にも物理的にもだ。 必然的に資料はその場での配布となる。


「 適応完了者は3672人になります、適応率は94.15%、事前の推定値通りになります 」


「 推定値通りにしては、生存者数が少ないようだが? 」


「 それに関しては、テラリアンのポテンシャルと言いますか・・・ 『 単に事前の検査不足だろう 』 」


科学技術庁長官に、軍務庁長官が嫌味に近い意見を述べる。 世紀の発見をした軍部の成果を、それを快く思わない科学技術庁が台無しにした、そう言っている。


「 当初テラリアンの魔素適応工程は、神樹式と同じ工程で実施可能と判断しましたが不具合が生じました。 最初の100名が亡くなったのは事実です。 しかし、準備と検査には万全を尽くしました 」


「 軍務庁長官。 彼女も賛成派だから信用して良い、司令官も睨むのをやめてやれ 」


そう言って、イスリル17世は笑う。 彼女は豪快で、おおらかな人物として知られている。 もちろん、治世者として有能な事を疑う者はいない。 テラリアン用の新たな神樹式プロセスは確立された、と追加で報告する科学技術庁長官、もう事故は起こさせないと。



現在、エルフ族は危機にひんしている、確実な滅亡に向っている。

一つはクイーンとの戦い、長年続く争いは終わりが見えず、損害は積み重なっているが得られるものは少ない。


一つは人口問題、徐々に低下していた男児の出生率がついにゼロとなり、もうエルフ族の男性は存在しない。 その原因は不明で遺伝情報の保護の試みは全て失敗した。 今後、エルフ族の子供は産まれない。


クイーンとの戦闘で国民や兵士が失われても、他の種族、例えば獣人族であれば20年で戦闘に耐えうる代わりの兵士を育てられる。 だがエルフ族はそれが出来ない、失われた分だけ人口が減っていく。


「 失礼しました 」


資料には、魔素適応措置が完了した者のリストが含まれている。 そこに、目をつけていた名前を見つけた司令官は安堵し、科学技術庁長官を睨むのを止めた。 


「 構いません。 予期せぬ事態に対応しきれず、死者を出してしまったのは事実なのですから 」


エルフ族は、他種族との間に子供は作れない。 様々な研究も行われたが結果はネガティブ、そもそも他の惑星で産まれた異なる種族だ、子孫を成せると考える事にはムリがあった。


同じ獣人族でも、同じ樹木族でも、類が異なれば子孫は残せない。 それが今までの星間常識であった。 モンステラがもたらした情報とテラリアンは、それを見事に吹き飛ばした。


「 報告を続けます。 魔素適応工程において、我々エルフ族には見られない現象が見られました。 詳細は資料に沿って説明いたします。 まず、記憶の混濁や部分的消失・・・ 」


テラリアンと呼ばれている日本人男性は、魔素に適応することが可能だった。 適合可能な者のみを連れて来たのでそれも当然なのだが、それでも適合確率は100%ではない。 適合不良で命を落とした者や、ミューティションによる魔物化して処理された者もいる。


「 テラリアンの遺伝子を構成するのは4種類の塩基で、我々より少なくなっています。 A,G,C,T ですね、ここに魔素が加わります。 新テラリアンは、全部で5種の塩基でDNAを形成することになります。 塩基配列に入り込んだ魔素は、塩基の結合をより強くするようで・・・ 」


遺伝子複製の時も魔素が働くから、遺伝情報をコピーする時に劣化が起きにくくなる。 劣化が起きにくいから老化しにくい、新たなテラリアンたちは長寿命が期待できる、魔力を操ることもできるだろう。 もちろん、エルフ族との交配は可能なままだ。 科学技術庁長官はそう報告した。


「 その他の外観的な変化ですが、個体差はありますが全員が若返っています。 魔素が塩基配列に入り込む際に、足りなくなっている塩基を取り込んだのが原因です。 幼くなった、縮んだとも表現できますが 」


あと耳の先端が丸かったのが、少し尖った形状になったと報告する。


「 彼らの外観が、エルフ族に近づいたのは歓迎すべきだな。 反対派が、少しでも静かになる材料なら歓迎だ 」


「 それ以上に重要な事項があります。 資料にも記載してありません 」


「 それは何か? 」


「 テラリアンの中に、3回目の神樹の儀式に耐えられる者を確認しました 」


「「「 ・・・・・・ 」」」

『 興味深い 』


エルフ族が受ける神樹の儀式は2回だけだ。 産まれて直ぐの1回目と、100歳で受ける2回目。 1回目で魔素に耐えうる身体を手に入れ、2回目で魔素を活用出来る身体になる。 神樹から与えられる力=スキルは2回目で全員が得られる。 3回目を受けても何も起こらない、そこに例外は無い。


神樹の儀式に耐えると新たな力を手に入れられる。 3回目に耐えられるなら、2回目以上の力を得られるのは確実だ。


「 それは喜ばしいことだな、今の戦況では特に 」


「 現地では、男の子を育てるのは手が掛かると聞きました 」


司令官が発言する。


「 そうか! 男の子は育てるのが大変なのだな、覚えておくとしよう。 それとだ・・・ 」


女王イスリル17世の判断により、3回目の儀式に耐えうるテラリアンがいることは伏せる事になった。 反対派を説得する良い材料になりそうだが、産まれてきた子供がどうなるかまだ誰にも分からないからだ。


魔素適合処置を受けたテラリアン達は、記憶の混濁が見られた。 そのため、彼らの記憶と身体が安定するまで、仮の記憶と仮の家族を用意することになった。


司令官は誰より早くその場で立候補した。

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