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そっちの事情なんて知らん

剣と魔法とダンジョンと宇宙船の話を、書きたくなったんで書いてみた作品です。 序盤は地球の日本の話で、長いプロローグと背景説明が続きます。

カシャン


パーティー会場の床にグラスが落ちる。 グラスは俺が持ってたやつだ、そんなに大きな音じゃ無いんだが、生演奏の音楽が止まった。 立ち続けるのは困難だ、床に座るとしよう。


あれから俺は3か月生き延びてる、周りの協力と俺の努力の成果だ。 んで今日は婚約者候補から婚約者になった、俺のお披露目パーティーなんだが。


「 大丈夫ですか? 」


王女様が訊いてくる。


「 まずいですね・・・・・・ 」


目眩と、吐き気、それに手足の先端が痺れる感じ。 全く大丈夫じゃない。 内ポケットからケースを取り出して、順番に全部を注射していく。


「 それは・・・解毒剤? かしら 」


「 ・・・ええ、そうです 」


吐き気は止まったが目眩は変わらず、手足の痺れは少しずつだが拡大中。 立ち上がるのは無理だ。 解毒剤も中和剤も即効性だと訊いてる、つまり効果は無かったってことだな。


「 流石に毒耐性持ちは違いますね。 何回毒を食べさせても効かないので、今日は200倍の量を入れましたのに 」


毒耐性なんか知らん。 ココを離れるべきなんだが、体が思うように動かない。


「 低ランクはしぶといですわね、致死量の400倍ですのに。 生命力だけはゴキブリ並みですわね。 この様子ですと、もう少し追加してもよろしいのではなくて? 」


さっきまで俺が歓談してた、王女様とそのご友人の会話だ。 つまり俺は毒を盛られたらしい、王女様とそのご友人にだ。 やられたな。


「 ・・・・・・ 」


「 どうされたのですか!! 」


俺の視界に入ってきたのは、あれだ。 夢の国のトイレで会った、王女様の従者で幼馴染み君で、誰だっけ? 名前が思い出せない。


「 カミハ様! 直ぐに医者を呼びます! 」


「 あら。 その必要はありませんよ 」


「 姫様! 何を仰せになっておられるのですか! 」


俺の視界には王女様とご友人、それと幼馴染の従者君がいる。 笑ってるのが二人、慌ててるのが一人だ。


「 元低ランクが、我が夫になろうとするのです。 せめて、この程度の毒には耐えて頂きませんと 」


「 そうですわ。 どうせ仮病でも使って、サボる気なのですから 」


「 ・・・・・・ 」


そこはさ、何か言い返そうぜ従者君。 その前に医者か救急車を呼んでくれ。


「 それに、貴方の為でもあるのですよ? 」


「 姫様、仰ってる意味が分かりかねます 」



俺がこんな状態なんで簡単にまとめるとだ、つまり姫様と幼馴染の従者君は両想いだそうだ。 でも姫様の結婚相手は父親が決めたと。


我慢出来なかった姫様は、婚約者に次々と毒を盛って処理していった。 それでだ、俺が選ばれたのは偶然だ、いや必然か? 幼馴染君の大好きな新商品、俺達の班が開発したやつな、それが売れすぎて手に入らなくなったと彼から聞いたんだってさ。


それでは私が何とかしましょう、と、チョット様子見に会社まで来て、商品の開発グループの俺達の班に目を付けた。 思い付きで自分で俺を婚約者に指名して、身分を与えて既成事実化。 親には怒られたそうだが、また毒を飲ませるつもりだったから、その先のことは考えてなかったんだとさ。


婚約者候補が消え続ければ、そのうち親もあきらめて幼馴染み君との結婚を許すだろうと。 まぁ、婚約者が消え続ければ、そのうち候補になりたいヤツも居なくなるだろうな。


王女様にしたら、幼馴染み君と結婚できないなら他の誰でも同じなんだと。 んな事より医者が先だ、早くしてくれ。


「 ・・・・・・ 」


俺の身体が浮いた、左右の腕をマッチョに抱えられてる。 マッチョの片方はマッチョリーダーだ。 そのまま運ばれて、宮殿の車寄せに居たリムジンに乗せられる。 走り出したリムジンに乗り込んだのは、マッチョリーダーだけだ。 俺はリムジンのシートで横になってる、座ってるのは無理だ。


「 病院にはいつ着くんだ? 早めにお願いしたんだが 」


「 許可されていない 」


「 じゃあ他の医者、モグリの医者で良いんだが? 」


「 許可されていない 」


「 んじゃあ、薬屋にでも寄って 『 許可されていない! 』 」


おい、てめぇこのマッチョ。 人が毒で苦しんで、痺れてるだけでそんなに苦しくはないけど、どう言うこった。 睨み付けてやる。


「 上からの命令だ。 お前にはそのまま消えてもらう 」


「 おい 」 何だそりゃ。


「 今回は王女様もやり過ぎた。 お前を含んで13人を亡き者にしたんだからな、それを衆人監視の前で自供したのも不味かった。 残りの人生は、何処かの監獄で過ごすことになるそうだ 」


俺にその話は必要無い、必要なのは医者か解毒剤だ。 それに、俺はまだ生きてる。


「 王様は今回の賠償を用意してくれるそうだ。 それは、お前が形だけの夫になるより、遙かに大きなモノになる・・・・・・そうだ 」


なるほど、何となく理解した。 最後は命を捨てて一族に利益をもたらせって事か。


「 この野郎 」


身体に力が入らないんで、蹴飛ばしたけどできない。


「 ・・・何処か行きたいところはあるか? 毒の量からして、そんなに時間は無いようだが 」


病院って言ってもムダだろうな、天国って言っても同じか。 ふと、ママさんの笑顔が浮かんだ。 こんな状態の俺が行ったら迷惑だろうけど。


「 ・・・コーヒーを飲ませろ。 エルフのお店へ・・・・・・ 」


「 ・・・・・・ 」


マッチョリーダーが、運転席に通じるインターフォンに指示を出した。 リムジンは信号を無視しつつ、行く先を変更した。


--------------------


店内のモニターにアラートが表示される、モニタ対象の一人のバイタルサインが落ちている。 対象は・・・カミハさん!?


「 カミハさんのバイタルサインが、危険水準まで落ちています。 こちらに向って居ます。 緊急受け入れの用意を 」


「「「 イエスマム! 」」」


「 司令。 予定通りですね 」


「 ええ。 前と同じで、危なくなったらお店に来てくれると信じてました。 肉じゃがで魂を掴んでおいたお陰ですね 」


「 ・・・・・・ 」


部下の目は否定的。 なんて事でしょう、肉じゃがの力を信じないなんて。


カミハさんは、男に背負われて店の前まで来た。 お店の前で待っていたかったけど、そんな事をしたらカミハさんをモニタしていた事に感づかれる危険がある。 


我慢して店の内で待機する。 クリーンルームは1人用、男がカミハさんを置いて出て行くのを待つ。 クリーンプロセスを中断して、救護班員が室内に駆け込む。 救護班員がキュアで体内の毒を消す、ヒールで損傷した細胞を癒やしたら店内へ運び込む、念のためポーションも投与する。


「 司令、治療は完了しました。 単純な毒ですが量が多かったですね、治療開始までに時間が掛かってます。 回復までには4時間は必要です 」


「 判りました。 カミハさん? カミハさん? 」


ソファに寝かされているカミハさんを抱きしめる。


「 ・・・・・・ママさん? コーヒーを 『 よく頑張ったわね。 もう大丈夫よ! 』 」


「 コーヒーを・・・・・旨いのを・・・・・・ 」


「 訊いて、カミハさん。 もう充分よ、楽になりましょう? 」


「 ・・・・・・あいつらを頼みます 」


カミハさんの全身から力が抜けた、諦めたような、満足したような複雑な表情をしてる。 テラリアンの表情は豊かで個性的だけど、私はカミハさんの笑顔が大好きだ。


「 もちろんよ。 貴方も楽になりましょう? どこか行きたいところは無い? 」


亡命は誰にも強制される事無く、自らの意思で表明しなければならない決まり。 思考の誘導も禁止されてる。 カミハさんの意思で、カミハさんの口で言ってくれないと。 でも、カミハさんの意識がハッキリしない。


「 もう来てる、ママさんにも抱きしめられてるし。 ココが天国だ。 でも・・・ 」


「 でも? 」


「 エルフの居る世界に行ってみたかった・・・・・・。 魔法と剣の世界・・・・・・ 」


処置は完了したのに、カミハさんの意識がハッキリしない。 でも、エルフの居る世界に行きたいと言った。 チョット無理があるけど、チョットだけだし問題はない。 きっと無い。


「 亡命の意思を確認しました。 予定通り人形を用意して 」


カミハさんが意識を失った、私は彼を抱きしめたまま指示を出す。 部下が、店の奥に準備してあったカミハさんのダミーを運んでくる。 彼の細胞を培養して人型に成形した人形、クローンですらない。


カミハさんに埋め込まれたチップを取り出し、人形の腕に埋め込む。 人形の傷口は、細胞活性剤で直しておく。 体内からチップを取り出すと、アラーム通報するセキュリティーが掛かってるけど、私達にしてみれば簡単な作業、科学力のレベルが違うから。


カミハさんが身につけていた物を移し替えたら作業は完了、あとは人形を外にいる男に引き渡せばいい。 念のため、カミハさんが飲まされた毒も人形に投与してある。


この惑星の技術力では遺伝子検査が精一杯だからこれで十分でしょう、それすら実施されない可能性もある。 これで、この惑星ではカミハさんは亡くなったことになる。



「 彼の最後を看取って頂き、感謝する 」


店主として、私が代表で人形を外に居た男に引き渡した。 運んだのは部下だけど。 男は深々と頭を下げていた、悪い人ではないみたい。 カミハさん人形を抱えて、丁寧にリムジンへと運んでいた。


身元の確認が終われば、人形は灰も残さず焼却処分されるらしい。 それが、この国の低ランクのおじさんに対する扱い。 


それより、カミハさんを艦まで連れてかないと。 毒は消えたけど体調は万全じゃないから、そのままじゃ航宙に耐えられない。 店内に戻った私を、宇宙軍の制服に着替えた部下が出迎えた。


「 司令、報告します。 撤収準備完了しました。 亡命希望者4999名は、艦内で停滞睡眠中。 何時でも出発可能です 」


「 分かりました。最後の亡命希望者を収容したら、本星に向けて出発します 」


--------------------


日本のある1人のおじさんの死亡が確認されて、焼却処分された1時間後。 日本全国にあるエルフのお店は一斉に閉店となった。 一部の熱狂的な客は悲鳴を上げたとか。


同じころに、4999人の低ランクが姿を消した、推定年齢25~45歳までの低ランクの男性ばかりだ。 低ランクは年間数万人が処分されているから、5000人ほど消えたところで誰も気にしなかったし、大きなニュースにもならなかった。 


更にその2時間後には、戦艦から輸送船へと改造され、改造に合わせてモンステラと改名されたエルフ族の一隻の船が故郷へと向けて月面を離れた。 船には乗員250名、停滞睡眠処置を施された日本人男性5000名がパッセンジャーとして乗り込んでいた。



輸送船モンステラが対クイーン同盟の管理宙域に到達したのは、月面を離れてから58年後であった。 乗員225名、パッセンジャー4025名を乗せた船は満身創痍で、ここまでの航宙の厳しさを物語っていた。


約60年ぶり帰還した船の話題は、エルフ族上層部によって意図的に抑えられた。 4025名のパッセンジャーの存在は、エルフ族のとって国を二分するほど衝撃だったからだ。

誤字、脱字、読後の感想お待ちしています。

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