始まりなんていつもこんなもん
「世界を滅ぼします。」
ありきたりな、あぁこれは3流映画が始まったのだと確信させるような、そんな陳腐なセリフだ。
もしくは、朝起きたら特別な力に目覚め、その力を、左手に巻いた包帯でも右目に付けた眼帯でも髪を束ねるシュシュでもいいが、とにかく、何かしらで封印しているその力を抑えられずに、意図せず発せられてしまった中学2年生の妄想か。
そんな、セリフなだけなはずだった。
「世界を滅ぼします。」
その発言から何十日、いや何年目だったのだろうか、体に現れるしるしをSNSにアピールする奴が現れた。その数は日に日に増えていく。
例えば、俺が重度のSNS中毒で、ジャンルも問わずいつでも新しい話題をいくつものSNSで漁ってるような人間であったのなら、最初にしるしをアピールした奴が誰なのか分かっただろう。
どうやら、夜寝ている間に体のどこかに特別なしるしが生まれる訳ではなく、しるしを持つ誰かからそのしるしをコピーしてもらうと自分にもしるしが現れ、また誰かひとりにコピーする事が出来るようになるらしい。
そして、そのしるしを持つものだけが、「世界を滅ぼします。」と発言した、どっかの誰かが滅ぼす世界から、助かる事が出来る、と。
どうせ滅ぶなら、古いアニメにあるような、地球が真っ二つに割れるなんてどうだろう。
ちょうど割れ目に居た人間は落ちていくのか、それともそこはもう宇宙で、その場に浮かぶ事が出来るのか、少し気になる。
まぁ、今時、インターネットで少し調べれば、俺なんかと違って頭のいい生真面目なあほが、1から10まで理論立てて説明したブログでも見つかるのだろうが、調べるほど気になる訳でもない。
ただ世界が滅びるような何かを、特に思いつかない。
滅びるって言うんだから、人間が絶滅するとか、どこかのすごく偉い奴が核を世界中に向けて発射するとか、そんなものでは済まないだろう。
世界、が、滅びるのだ。
世界とは、人間の事だけではないだろう。
小学生の頃に夏祭りの出店で釣って、未だに実家の玄関でぱくぱくと口を開けてたまに帰る俺を迎えてくれる金魚も、去年別れた彼女が駅前の花屋で見つけて俺の家に置いて、出ていく時に置いていった赤い花なのか実なのかを付けているサボテンも、間違いなく世界の一部だ、だろう?
ん? 核なら全部ダメになるか?
いやいや、そういう事じゃなくて。
誰が信じる? 世界滅ぼす、などと。
どうやって滅ぼすのかについては何の発言も無い、時期についても確かな事など分からないような、荒唐無稽な発言を。
誰も信じてなどいなかったのだろう、元の発言は、TVか動画配信サービスに映像が上がったのか、それともどこか雑誌や新聞、はたまたSNSに文章だけが掲載されたのか、これが元凶の映像もしくは文章です!と断言されるような、確たるものは未だに出て来ていない。
が、誰かがしるしをコピーし、そのしるしがまたコピーされ、いつの間にかコピーされるしるしが何件もSNSに散見されるようになった。
ただSNSでどっかの誰かがあげただけなら、はいはい手品手品、と、流すような話題でも、友達の友達やら、なんなら家族や恋人がそのしるしを受け取ってきたのなら、例え親友に裏切られ、全てのものが信じられなくなったような人間でも、嘘だと決めつける事は出来ないだろう。
信じやすい人間ならなおさら、疑う理由なぞ見つからないだろう。そうして、「世界を滅ぼします。」の発言としるしは、世界中のSNSで1番の話題になる程有名になった。
読んでいただきありがとうございました。
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