フルーツタルト
あれは蝉の鳴き声も鎮まりかけた夏の日であった。
私は密かに想いを寄せていた女の子へ「デート」というものをこぎつけた。ただニ人でお茶をしに行くだけ。これを「デート」というのか怪しいものであるが、私の中ではそれは「デート」であった。
なかなか積極的に行く場所を決められずやっと決まったおしゃれなタルトが美味しいカフェ。待ち合わせの駅に来た彼女はとても輝いていた。
白いワンピースが似合う女性だった。
女性と話すのが久しぶりだった私はうまく話せずにいたが段々と打ち解けて行くことができた。彼女はフルーツタルトを、私はいちごタルトを頼んだ。彼女は食べ方さえも綺麗であった。よく晴れ、タルトも美味しい最高のひとときであった。
ふと思ったので彼女に「今日とっても服かわいいね似合ってるよ」と言ったら彼女は頬を赤らめ顔を手でパタパタ仰いだ。
だが高揚してしまった私はふと彼女に「付き合わないか」と聞いてしまった。
しばらくの沈黙が訪れ、彼女からは「考えさせて欲しい」と返答が来た。
「わかった、気をつけて」とだけ返しその日を終えた。
一日後返信が来ていてドキドキしたがやはり、ダメだった。
「一晩中考えてみたけど友達としか見れない。」とのことだった。
一瞬で打ち砕かれた、だがこの愛なのか恋なのかよくわからないモノ以上に甘酸っぱく一瞬でとろけるようなモノは無いのである。
いくつもの時日が経ったとある日、私はフルーツタルトを買って家に帰る。