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デストロイド・ゼロ  作者: 由比ヶ浜 稔
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第1話 戦闘

『着弾まで10秒』

無人攻撃機のセンサーオペレーターがそう告げる。闇夜を切り裂くようにヘルファイアミサイルが目標の建物に命中する。重機関銃による攻撃を受けていた小部隊バーバー・アルファが遮蔽物から立ち上がる。全員がBESと呼ばれる外骨格システムを装備している。

完全電気駆動のそれは、僅かな作動音を立てるのみで、きびきびとした動きでゴミだらけの街路を進んでゆく。

『25メートル先。ライフル兵、2名』

戦闘を進んでいたアルファ2が街路に飛び出してきた男二人に素早く反応し、手にしていたアサルトカービンで射撃し応戦する間を与えず倒した。

『50メートル先に動きがある。センサーオペレーター、どうだ?』

部隊を率いていたアルファ1がそう聞く。

『複数の人影を確認。小火器を持っている模様。注意されたし』

やや間があって、センサーオペレーターがそう報告する。

『アルファ、了解』

先ほど倒した戦闘員の脇を通り過ぎながらアサルトカービンを構える。暗がりの中から軽機関銃の発砲炎が瞬き、アルファたちに30口径弾が次々と命中する。

『ニップ! 前に出て40ミリグレネードをお見舞いしろ!』

隠れる場所がないためアルファ1が盾となって怒鳴った。

ニップとよばれたBESが分隊の前に進み出て、リボルバー式グレネードランチャーで射撃をする。緩やかな放物線を描いて複数のグレネード弾頭が軽機関銃を撃ちまくっていた男たちの周囲に命中し榴散弾を浴びせた。男たちは悲鳴を上げて倒れた。

『バーバー・アルファ、損害を報告せよ』

無人攻撃機の映像をみていたのだろう、前線作戦基地FOBから無線が入る。

『各員どうか?』

アルファ1が振り返らずに皆に問うた。

『アルファ2、問題なし』

『3、暗視装置が損壊しました。っくそ』

『アルファ4、問題なし』以下アルファ8まで損害はなかった。

『バーバー・アルファ1よりFOBへ。損害軽微、負傷者なし。作戦続行可能です』

『FOBよりアルファへ、了解。レイダーアーマーに気をつけろ、オーバー』

『アルファ了解、アウト』

レイダーアーマーとは作業用外骨格システムに無理矢理鉄板を装着させたものである。BESに比べて明らかに鈍重で抗弾性能も劣るが、狭苦しい街路で爆薬を巻き付けた自爆型や重機関銃を装備したタイプは歩兵にとって脅威だった。


『アルファ前進。任務を続行する。アルファ3、行けるな?』

『OKです、ボス』

アルファ3は、予備の暗視装置をヘルメットのバイザーに取り付けてそう言う。


旧工業地帯と呼ばれる市街のあちこちで小火器の発砲音が轟き、火の手が上がっていた。

正規軍の死傷者を出したくない政府系クライアントは民間軍事会社POFにテログループの掃討を依頼した。

派遣されたバーバー・アルファたちの任務は、この地帯で大規模な自爆計画を画策しているテログループの掃討作戦だった。事前の情報では激しい交戦が予想されていた。


『レイダーアーマーだ! 出てきたぞ!』

『アルファ4、50口径で仕留めろ』

『了解』アルファ4が背部からブルパップ式50口径ライフルをつかみ、射撃姿勢をとる。レイダーアーマーはリミッターを解除して全速力で街路をこちらに向かって走ってくる。手には何も持っていない。

『自爆型だ! 早く仕留めろ!』

アルファ1の怒号が耳朶を打つ。他の隊員がアサルトカービンでけん制射撃をするもレイダーアーマーの勢いは衰えない。アルファ4はスコープをスイングアウトし、アイアンサイトでレイダーアーマーに照準し発砲。弾頭は腹部に命中し、レイダーアーマーはうつぶせに倒れ込む。

『止めを忘れるな!』

アルファ1がそう怒鳴った瞬間、レイダーアーマーが自爆した。およそ50メートル先で高性能爆薬が爆発し、凄まじい衝撃波と金属やコンクリート、ゴミなどの破片がアルファ隊を襲い、なぎ倒した。

『くそったれ!』誰かがそう毒づく。

『全員無事か? さあ立て!』

アルファ1がライフルを杖代わりにして立ち上がる。残りの隊員たちもバイザーについた埃を払いながら立ち上がった。

『まったく正気じゃない』

『日本人だって特攻をしたろ』

アルファ8―ニップの言葉にアルファ4―デルタがそう言った。

『おしゃべりは終わりだ。任務に集中しろ。敵の攻撃が激しいということは、目標に近づいている証拠だ』

アルファ1がボディカウントしながらそう言う。

再びフォーメーションを組んで前進する。先ほど自爆したレイダーアーマーは残っていなかった。すり鉢状の小さなクレーターを残して消し飛んでいた。周囲には人だった赤い血肉が飛び散っていた。アルファたちは無言でそれらを避けて進んだ。


バーバー・ブラヴォーとの合流地点は一層激しい銃撃戦が行われていた。

『アルファ遅いぞ。ここが目標に違いない。やつらRPGを撃ちまくりながら投石器を使ってIED(即席爆弾)を投げつけてくる』

『航空支援をなぜ使わない?』

『ここいら一帯を吹っ飛ばす量の爆薬があるらしい。作戦本部から損害に関わらず障害を排除せよと命令が来た』

ブラヴォー1が通信機を指し示しながらそう言った。

『こちらも受信した。やっぱり労働組合を作るべきだな。オール・アルファ、ブラヴォーを援護する。まずRPGと投石器を排除する。次に建物に接近して敵を叩く』

『アルファ5、援護に付く…。ブラボー1、目標をレーザーで示してくれ…』

アルファ5が、路上駐車されている白いセダンに30口径機関銃を乗せる。

『目標150メートル。5階立てのビルだ。屋上にRPG。5階に狙撃兵。4階に機関銃。3階から1階にライフル兵』

『どれから撃てばいい…?』アルファ5は目標の多さに困惑した。


『こちらアルファ1、センサーオペレーターへ。150メートル先の目標地点の建物の状況を教えてくれ』

アルファ1とアルファ2はアサルトカービンを構えて車の陰に隠れながら前進する。

『こちらオペレーター、アルファ1へ。目標屋上にゴム状の投石器とレイダーアーマー2体、RPGを持っている戦闘員5名を確認。建物の中から出入りしている熱源が2名から3名確認している。注意されたし』

『アルファ1了解。センサーオペレーターへ、ヘルファイアで屋上だけ吹き飛ばせないか?』

『アルファ1へ。目標は爆発物の工場の可能性があり、捜索目標であるため攻撃はできない』

『了解、オペレーター。自前でやるしかないようだ』

『アルファ1! RPG!』

アルファ2が叫ぶと掩体物として利用していた車両の近くに対戦車ロケット弾が命中し炎と衝撃波が上がる。さらに敵の軽機関銃の銃弾が雨あられと注ぐ。

『くそう。もう怒ったぞ! 構うもんか。アルファ6、7! ジャベリンで屋上にいる奴らを吹っ飛ばせ!』

『6、了解』『7、了解』

2名の隊員が背負っていた改良型ジャベリンミサイルを構える。

『ドローンとのデータリンクよし。吹っ飛ばします』

アルファ6がそう言う。

『後方の確認よし』

アルファ7は、発射機の後方に味方がいないか確認する。

『やれ、6、7!』『6、発射』

ミサイルが発射され、ブースターで急上昇する。高度50メートルまで上昇すると目標建物の上空へまっすぐ降下。目標命中1秒前に空中炸裂し、屋上にいる戦闘員たちに榴散弾と爆風をお見舞いする。

『RPGと投石器を排除。レイダーアーマーは健在』

無人機のセンサーオペレーターがそう報告する。

『7、発射』

ミサイルは先ほどと同じ軌跡を描き、直発モードでレイダーアーマーの1体に命中する。

『命中。レイダーアーマーを1体排除。残る1体は屋内へ戻った。繰り返す、1体は屋内に戻った』

センサーオペレーターがそう報告する。

『アルファ3、4。狙撃手を片付けろ!』

アルファ1がそう怒鳴った。


『もっとでかい銃がいる! ニップ! 20mmライフルを持ってきてくれ!』

アルファ4-デルタが50口径ライフルからあきらめたようにスコープから顔を上げて怒鳴った。

『OK、デルタ』

アルファ8-ニップは、組み立て式対物ライフルの入った武器コンテナを背中から降ろして開けた。中からスコープが固定された銃身部と機関部を取り出し手早く組み立てる。小気味の良い連結音がすると全長2メートルの対物ライフルが出来上がる。ニップは急いでデルタに渡す。

『装填してくれ、ニップ』

デルタが伏せ撃ちの射撃姿勢を取り、チャージングハンドルを引く。ニップが20mm弾を装填する。

アルファ3はスポッタースコープでターゲットを指示する。

『狙撃兵。建物5階。距離145メートル。風右やや強め。』

『コンクリートごとぶち抜く』

1発目は外れるだろうと思い狙いをつける。発砲。強い衝撃がBESアームからデルタの右腕を叩く。

『ターゲット左上に命中』

『了解、装填』

チャージングハンドルを引くと長い薬莢が排莢される。

『装填よし』

ニップが再び弾薬を装填。狙いをやや右下へ移し戦闘修正を行う。窓の下あたりを再び狙う。発砲。再び強い衝撃がBESアームを軋ませる。

『窓付近に命中。やや下へ修正』『わかった。装填』『装填よし』

発砲。弾頭は窓枠の下に命中し、コンクリート壁を貫通。狙撃銃を持った戦闘員に戦闘不能にさせるダメージを与えた。

『狙撃兵、排除』

『その調子で機関銃兵も排除しろ!』

アルファ1が、いいぞと叫んだ。


『目標4階。距離同じ。風変わらず』

『OK…』『装填よし』

アルファ5と派手に撃ち合っている機関銃の発砲炎に向かって射撃する。

20mm弾は、機関銃座の土嚢を吹き飛ばした。そこへアルファ5の30口径弾が飛び込み、射手を負傷させた。

『射撃が止んだ。機関銃排除』

『ブラヴォー、前進する』

抵抗が散発的になった所でブラヴォー隊が射撃をしながら前進する。

『オールアルファ。ブラヴォーが目標に接近する。俺たちも行くぞ』

アルファ1が車の陰から立ち上がり、ハンドサインで前進を促す。戦闘騒音以外人気のない市街を走り、ブラヴォーと合流。

『FOBへ。ブラヴォーは、これより目標建物へ侵入する。オーバー』

『了解、ブラヴォー。アウト』


アルファが合流すると、ブラヴォー隊は入口に倒れている戦闘員を拘束している所だった。

『こいつ死んでいるフリをしていやがった』

『ブラヴォー、こいつはまかせろ』

『ああ、突入する』

ブラヴォー1が合図するとブラヴォー2以下4名が開いている扉から入ってゆく。

『トラップに注意だ』『了解』

ブラヴォー1と2は銃を構えたまま前進すると、1階は事務室と工場を兼ねたフロアにたどり着く。点々と灯っている蛍光灯が不気味さを醸し出している。人の気配はない。

2階に続く階段から誰かの怒鳴り声や重量物を動かす音が届いてきた。

『罠っぽいな』『そう簡単には諦めないだろう。まずは1階を検索しよう』

後からブラヴォー3と4が続き、互いに死角を補いトラップの有無を確認しながら工場へ入る。

『ジャックポッドだ』

そこには大量の砲弾やドラム缶が並んでいた。近くの作業台には様々な電子部品や携帯電話が積んであった。

『ドラム缶の中身は肥料爆弾か? 臭気センサーで調べてみるか?』

『敵の制圧が先だ。上階へ上がるぞ。ブラヴォー5から8は上階段を確保しろ』

『了解。ブラヴォー1』

ブラヴォー1たちの背後を守っていた5、6、7、8たちは2階へ続く階段に迫った。

階段の上にはロッカーを横倒しにして機関銃が据え付けられていた。ブラヴォーたちの姿を目敏く見つけると滝のように銃弾を浴びせてきた。

『くそったれ!』

ブラヴォー5が負けじと軽機関銃で撃ち返す。2階から銃撃の合間を縫って何か投げ込まれる。金属の塊のような何か――

『IED!』

ブラヴォー6が叫ぶと同時にIEDがブラヴォー5の至近距離で爆発した。一瞬にして階段付近が爆炎とコンクリートの破片で見えなくなる。

『ブラヴォー5がやられた!』

6が階段を転がり落ちてきながら言った。7と8が視界のきかない階段を昇り、鉄筋がむき出しになった階段付近に倒れている5を抱きかかえた。

『5、しっかりしろ! ブラヴォー1へ、マンダウン! ブラヴォー5ダウン!』

5は左手と左膝から先がなくなっていた。腹部の装備品も吹き飛んでいた。BESの応急救護システムが働き、左足の止血が始まる。

『5、返事をしろ!』

7が血だらけになりながら呼びかける。5は気を失っているのか返事をしない。そこへブラヴォー1たちが合流する。

『すぐに後送しよう。5のバイタルは?』

ブラヴォー1が5のBESにアクセスし、バイタルモニターを確認する。心肺は働いていた。左足止血中と表示される。腹部鈍的外傷の恐れあり、頭部脳震盪の恐れありと続く。

『こちらブラヴォー1。アルファ、応答してくれ』

『こちらアルファ1。どうした?』

『ブラヴォー5が負傷。後送する。IEDでやられた』

『了解。手を貸そう。仇を取ってやる』


ブラヴォー7と8が負傷した5を運び出すとアルファたちが建物に入った。

『さて、どう料理してやろうか』

アルファ1がブラヴォー1にそう言う。

『2階のフロアにロッカーの山と機関銃がある。IEDをなんとかしないと』

と、ブラヴォー1。

『ここはIEDの工場なんだろ? 同じ物を作ればいい』

アルファ4―デルタが進み出てそう言った。

『名案だ、デルタ。奴らにお見舞いしよう』


デルタは一階の工房へ入るとBESを除装した。ヘルメットを外し、胸部装甲が前後に開く。

ツナギを脱ぐ要領で外に出る。

「いくついりますか?」

『そうだな。たっぷりと』

「わかりました」

デルタはそう答えると手近にあった60mm迫撃砲を手に取った。


『攻撃開始!』

アルファ1の号令と共にアルファ5が上階へ向けて30口径機関銃を発砲して弾幕を張る。

そして、ブラヴォー1がデルタの作った即席爆弾―60mm迫撃砲に信管を取り付けたもの―を投擲した。

『もう一発!』

2発の迫撃弾はロッカー上部で爆発し、機関銃手を吹き飛ばした。

『まだまだいっぱいあるぞ!』

ブラヴォー1は、炎が舞う通路の奥へBESの腕力を使って思い切り砲弾を投げ込んだ。砲弾は奥にいた戦闘員たちの近くで爆発し、積んであったIEDを誘爆させた。

爆風に遅れて悲鳴が通路を走る。

『アルファ、頼んだ』

『オールアルファ! 2階へ上がれ! 行くぞ!』

アルファ1の掛け声と共にアルファたちは階段を駆け上がり、煙の上がるロッカーの残骸を乗り越える。散発的な攻撃をアサルトカービンで応射し、排除する。

部屋の隅に隠れていた戦闘員がナイフを逆手にアルファ2に襲い掛かったがBESアームであっさり防がれ、組み伏せられてしまった。

『1名、拘束』

アルファ2が結束バンドで拘束しながらそう言う。

『外へ放り出せ!』

抵抗する戦闘員をアルファ8が担いで階下へ向かった。


3階へ向かうと、そこにはレイダーアーマーと複数のライフル兵がいた。

レイダーアーマーは両手に1丁ずつ軽機関銃を持っていた。2丁同時に火を噴くが、反動でその弾頭のほとんどがアルファたちの頭ひとつ上をを通り過ぎて行った。

『ブラヴォーからの贈り物だ!』

アルファ4―デルタが迫撃弾を投げつけるとレイダーアーマーに直撃し、吹き飛ばした。

『グレネードを投げろ!』

アルファ2と3がハンドグレネードを投げ込み、爆発と同時に前進する。

破片を食らって泣き叫ぶ戦闘員を見つけると拘束し、外へ連れ出す。あきらめずライフルで応射してくる戦闘員はアサルトカービンで排除する。

『ワンダウン! ワンダウン!』

通路は煙と埃でもうもうとし、床は血だらけになった。


3階のクリアリングを終え、4階へ上がるとひとりの男が立っていた。

非武装で両手を挙げて―何かを握っていた。

『手を広げろ! 持っている物を離すんだ!』

『早くしろ! 早く両手を開くんだ!』

アルファ1と2がアサルトカービンを向けて怒鳴った。

男は手に持っていた何かを強く握りしめた。背負っていた155mm榴弾が爆発した。

爆発はアルファ1と2を吹き飛ばし、ビルの一角を破壊した。


『アルファ1、アルファ2、応答しろ』

ブラヴォー1が呼びかけても応答なし。アルファ3が瓦礫の中から起き上がる。アルファ4が手を貸して立ち上がらせた。

『こいつはひどい』

アルファ4が上階を見上げると4階の階段と一部の床がごっそりなくなっていた。

『1と2はどうなった?』

アルファ5がそう聞く。

『MIA(戦闘中行方不明)だ。どこにもいない』

アルファ4がBESの脚力で軽々と4階に昇りながらそう言う。4階の天井には大きな穴が開き、5階の天井までめちゃくちゃに破壊していた。

『敵の姿が見えない。アルファ5からアルファ8援護してくれ。アルファ3、様子はどうだ?』

『全身が痛む。バイザーがやられていて前が一部しか見えない』

アルファ3の返答にアルファ4は、戦闘は困難だなと判断する。

『了解、アルファ3.下に降りた方がいい』

『アルファ4。俺たちも手伝う』

ブラヴォー1が昇ってきてそう言った。4階のクリアリングを再開する。床に複数の血の跡がひとつの部屋に続いていた。ドアをけり破り、素早く入り込むと負傷した男たちが集められていた。

『抵抗するな! 抵抗するな! 抵抗すれば撃つ! わかったな!?』

男たちはあきらめたように手を挙げた。アルファたちは負傷した男たちを拘束した上で5階に上がった。狙撃兵のいた部屋に到達するまで大量のIEDや銃火器、弾薬を発見した。


アルファ4は窓辺に倒れていた狙撃銃を拾った。戦利品として持ち帰るつもりだった。

『ニップ、来いよ。大丈夫か? 戦闘は初めてだったろ』

『ああ。想像以上だな…。人の命があまりにもあっけない』

『あまり考えるなよ。戦場じゃ日常茶飯事だ』

デルタはそう言うとニップの肩を叩いた。


制圧が完了すると、ようやくクライアントの軍部隊が現れた。部隊はアルファとブラヴォーが拘束した戦闘員たちを連行してゆく。

「よくやってくれた。後は我々が処理する。どうもありがとう」

軍部隊の将校がアルファとブラヴォーたちをねぎらうと部下たちに向き直り次々と命令を発した。

アルファ1とアルファ2の遺体を乗せた担架がトラックに載せられる。遺体というにはあまりにも小さかったが。

「俺たちも帰ろう」

バイザーを上げた状態でブラヴォー1がそう言った。銘々に装備と共にPOFのトラックに乗り込む。

POFの長い一日がひとつ終わった。次はもっと長いかもしれない。


つづく


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