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くま好き令嬢は理想のくま騎士を見つけたので食べられたい  作者: 楠結衣
番外編

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くまさんのはちみつ

この作品は、肉の日マッスルフェスティバルの第二弾の参加作品『くま好き令嬢は理想のくま騎士にときめきたい』のガイフレート視点になります。

このおはなしのみ読んでももちろん大丈夫ですが、アリーシア視点もあります♪

読んでもらえたら嬉しいです……!


『くま好き令嬢は理想のくま騎士にときめきたい』

https://ncode.syosetu.com/n9851gt/



 


 騎士団に所属するガイフレート・オルランド侯爵令息が、くまのぬいぐるみそっくりだと十歳以上も離れたアリーシア・ウィンザー侯爵令嬢に好意をよせられたのをきっかけに結婚をして、はじめて迎えた冬のある日――



 空気の動く気配を感じて腕をずらせば隣に寝ているはずのアリーもぬくもりも消えている。

 職業柄、些細な気配も察してしまうというのにアリーの温度がなくなるくらい深く寝入っていたこと驚いた。


「一緒に見たらもっときれいよね……」


 寂しそうなアリーの声に視線を向けるとアリーが窓辺にたたずむのが目に映り、ちらつく雪よりもアリーの横顔にかげりが見えたことが気にかかる。


 先月から騎士団の任務が忙しくなり、早朝に家を出てアリーが寝入ったあとに家に戻る生活が続いていた。涙のあとがうっすら残る柔らかな頬に口づけを落とすことも少なくなかったから寂しい思いをさせていた自覚はあった。

 すべての任務が片付いて数日の休暇予定を告げる前にアリーを夫婦の寝室に閉じ込め甘やかすつもりが、連日の疲れと久しぶりの甘い体温の触れ合いに安らいだ俺が熟睡していたらしい。


 窓辺にいる薄着のアリーに風邪をひくぞと思うのと、アリーが身震いをして腕をさすりはじめたのは同時だった。

 震えながらアリーがベッドに戻ってきたので咄嗟に目をつむる。冷えたアリーの身体を甘くあたためて夜を過ごし、休日初日をゆっくり寝坊するのも悪くないかと思い至る。


「ガイ様、かっこいい……」


 やわらかな気配が近づいた途端にアリーが息を呑んだ。続いてうっとり吐息をこぼしたアリーに口許が緩みそうになるのを堪える。

 何度肌を重ねても羞恥心が消えないアリーだが、俺が寝ているという安心感からなのか視線が顔から首筋へ滑り下りると普段は目を逸らしている剥き出しの大胸筋へ注がれている。目を閉じていても感じる熱の篭った眼差しに甘い痺れが広がっていく。


 興味が惹かれて大胆になったアリーは、甘えるように頬をよせる大胸筋、うたた寝すると柔らかな髪を預けてくる肩の三角筋や、はにかみながら腕を絡める上腕二頭筋へ視線を移していく。最後は甘美な吐息とともに六つに割れた腹筋に熱い視線が注がれるとなんとも言えない歓喜が背筋を駆け上がる。


 うっとり見つめられているのが心地良くて、この可愛い過ぎる新妻を存分に愛でたいと思った刹那。


「んっ」


 冷えた細い指先が素肌に触れた。

 アリーの冷たい指を絡めてあたためたい気持ちをこれから起きる甘やかな予感に必死で堪える。

 俺が起きないと思いこんだアリーの手がもっと大胆になっていく。アリーは幼い頃から夢中になるとそれ以外はなにも目に入らなくなるところがあって。


 割れた腹の上部にある腹筋にアリーの意識があるのを確認すると、薄眼をひらいてそっとようすをうかがう。


「――っ、くっ……」


 桃色の羽織ものからのぞく素肌に思わず息がもれる。

 月光に浮かぶアリーは妖精のような美しさと妖艶さをあわせ持ち、ゆれる谷間の闇を月明かりの下で暴きたい気持ちと月にすらアリーのあられのない姿を見せたくない気持ちがせめぎ合うように頭が沸騰する。


 アリーのつめたい指先が俺の体温に触れ、熱を帯びていく。筋肉の溝に指をすべらせ、割れた腹筋に小さな手が添えられるとうっとりと桃色の吐息をこぼしながら何度もなでられる。


 割れた腹筋をしばらく堪能した新妻の手が上に向かうのを感じて瞳をとじた。


「う、……」


 いつも目を伏せてしまうアリーから注がれる溶けそうな熱い眼差しとすべらかに動かされるぬくもりが心地いい。

 鍛えて厚くなった大胸筋を手のひらが撫であげる。つめたかった指先はどちらの体温かわからなくなるくらいに溶け合って、愛おしさを素直に手から伝えてくるアリーの可愛さにたまらなく熱がたまっていく。


「っ……、ん、ふっ」


 止まらない魔法にかかったアリーの手は大胸筋にとどまることを知らない。

 首筋を通って裏側の僧帽筋まで手が伸びて、すりよるように触れていく。筋や溝を見つけると細い指先がつうっとたどると堪えきれなくて息をこぼす。

 腹筋やその横にある外腹斜筋の硬さを味わい、余すことなく鍛えた筋肉に触れあうことに夢中のアリーの身体から誘惑するような桃花の匂いが漂い、甘い熱がくすぶるように俺の中でうごめいていると突然アリーの手の動きが止まる。


「ん――」


 先程までのぬくもりが嘘のようにひんやりした指先が古傷をせつなくなぞる。

 この国に戦や予期せぬ魔物発生は起こらないが、遠征に出かけるときに不安な瞳を健気に隠そうとするアリーの心の奥深くに澱のように沈む憂いに触れた気がした。


「ガイ様、好きです――」


 古傷にそっと触れるような優しい口づけを落とすアリーに込み上げてくる愛おしさが止まらない。


「好きです、ガイ――」

「アリー、今、なんて言った?」

「っ!」


 アリーの言葉に寝たふりをしていたのも忘れて呼びかけていた。

 視線を揺らして今にも逃げそうなアリーを素早く捕まえる。


「アリー」


 下から真っ直ぐに見上げて名前を呼べば、狼狽えたように瞳が潤んでいくさまが愛しくて仕方ない。

 閨を共にしていても愛おしい新妻は散々に啼かせ恥じらいをどろどろに溶かした時にしか名を呼ばない。

 アリーの口からつむがれる名をもう一度乞う。


 捕まえていた指先に口づけを落とす。ん、と甘く息をつめる音が聞こえる。金色の結婚指輪に、ちゅ、と音を立てて口づければ、ふわりと笑みをこぼすアリーにどうしようもなく愛おしさが降りつもっていく。


「もう一回、同じように言ってほしい」


 逃げられないように視線を絡めた途端にアリーの頬に桃色が弾け、体温を擦り合わせるように親指でなぞればアリーから匂い立つ甘い桃花の香りが強まった。


「――ガイ」

「っ……!」


 アリーの甘い瞳に見つめられ、小さくつむがれた名前に心が歓喜で震える。

 胸を鷲掴みにされたように締めつけられると愛おしさがあふれて目を細めてしまう。


「アリー、もう一回」


 甘美な響きを再び求めて上気したやわらかな頬に手を伸ばせば、桃色の瞳は蜜をとろりとためたように艶やかに潤んだ。


「ガイ……」

「アリーはかわいいな」


 アリーから甘くつむがれる名に酔いしれる。

 しっとり熱い頬の感触を親指で撫でていると、甘えるように瞳をとじて手に擦り寄ってくる仕草があまりに可愛くて。


「アリーにさわると癒されるな」

「あっ」


 なぜか俺の言葉にぱちりと目をひらいて驚いたようにあわあわと慌てはじめた。


「あの、疲れているのに起こしてしまってごめんなさい」


 アリーは俺の寝たふりに気付いていないことを今更思い出して、その自覚のない可愛らしさに益々目を細めてしまう。


「ああ。たしかに疲れているな」

「――ごめんなさい」


 目の縁を赤くしたアリーの今にも泣きだしそうな顔を見た途端、大人しくしていたはずの熱が全身を駆け巡る。知らずに喉の奥が、ごくっと音を鳴らした。


「甘いものが食べたい」

「えっ?」


 俺の言葉が予想外のものだったのか、大きな瞳を瞬かせたアリーは考えを巡らせて予想の斜め上に着地させた。


「なにか甘い物をお願いしてきますね」


 ベッドから立ち上がろうとするアリーの手首を優しく捕まえる。


「アリー、甘い物は今はいい」


 今度はきょとんと目を丸くした後、小首を傾げるアリーがただ可愛くてくつくつと喉を震わせてしまう。

 何度肌をあわせても清らかな新妻は自分自身が俺にとって甘いものだという自覚はないらしい。その無防備なようすに舌舐めずりしてしまったのは仕方ない。


「あのな、俺が食べたいのは――」

「えっ、――きゃあ」


 軽く腕を引っ張り触れたくてたまらない身体を抱き止める。アリーの柔らかな重みと早鐘のような鼓動に思わず口の端が上がる。


「えっ、ま、まってーー」

「待たない――もう遅い」


 アリーの匂い包まれると、もうアリーが恋しくて仕方がない。

 やわらかな膨らみと誘うような体温を感じれば、状況を飲み込めていないアリーの言葉をさえぎり熱の篭った瞳で見据える。今すぐアリーをこの腕に閉じ込め、食べてしまいたい。

 アリーの喉がこくり、と小さな音を鳴らしたのを見逃さない。


「っ、ん、んんっ――」


 果実のように色づいた唇に口づける。何度味わっても飽きることのない甘い感触を夢中で味わう。


 愛らしい耳を指で刺激するようになぞり、艶やかな金髪に指を差し込む。くびれた腰にたまらず熱い手を滑り込ませ誘うようにしっとりした肌を撫で上げれば、ぴくんと跳ねたがる身体を腕の中にとじこめる。

 吐息をこぼした唇の隙間に入り込み、甘い蜜を求めて可愛らしい舌を絡めとる。

 溶かすように動けば吐息に甘さが混ざり、じらすように動けばせつなく啼いた。愛おしくて蜜を送りこめばひな鳥のような素直さでアリーが、こくんと飲み込んだ。

 その蕩けきった表情に、愛しさがとめどなく溢れるとアリーを組み敷いて額をすり合わせて捕まえる。


「――アリー(甘いもの)が食べたい」


 掠れた声と射抜くようなぎらついた瞳で見下ろした。ただただアリーが愛おしく、そのすべてが欲しい。


「いいか?」


 蜂蜜よりもとろりと甘やかに潤んだ瞳と桃色に上気したアリーが頷いた。

 愛しい妻に愛を込めて何度も口づけを落とす。月に隠すようにアリーに愛を囁けば甘えるようにしなやかな腕が首に回されて、ふたりきりの夜更かしが甘やかにはじまる――




 少しも動けなくなったアリーシアが上機嫌のガイフレートの腕の中で、降り積もった煌めく初雪を一緒に見ることができたのはお昼が終わりそうな頃だったとかーー。




 おしまい

読んでいただき、ありがとうございます♪

久しぶりにガイさま視点のいちゃいちゃが欲しくなりました(*´꒳`*)あまあま……♡



他サイトになりますが、アルファポリスさまで二月いっぱい開催している第14回恋愛小説大賞に『くま好き令嬢』で参加しています。

よかったら下のボタンをぽちっとして応援してもらえたらすごくすごく嬉しいです……!


どうぞよろしくお願いします(∩ˊ꒳ˋ∩)・*


【追記R3.3.1】

アルファポリスさんの恋愛大賞が終わりましたー。

応援ボタンをぽちっと押してくださった方、本当に本当にありがとうございます。

3000近い応募作品の中でポイント順位80位でした……♡

100位に入れたらすごいなあと思っていたので、とっても嬉しいです(*´꒳`*)

アルファユーザーさんの方にも好きでしたって感想もいただけて、じーんとしてしまいました。


✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.❁.。.:*:


くま好きが10000ポイントを超えました♡

すごく嬉しくてしあわせ……!

本当にありがとうございます♪


気まぐれになりますが、あまあまな番外編をこれからも載せていけたらなあと思っています。

どんなおはなしがいいかなあ。

味見してる頃のガイさまとか。やきもちのアリーとか。騎士団にあそびにいったアリーとか。

もしこんなふたりが読みたいなあと思ったら、どうぞこっそり教えてくださいね.❁.。


またいつか番外編で会えますように(∩ˊ꒳ˋ∩)・*

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恋愛作品を色々書いています୧꒰*´꒳`*꒱૭✧
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ヘッダ
新着順① 総合評価順② 短編③ 絵本④ イセコイ⑤ 転生転移⑥ 現実⑦ 商業化⑧
ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[良い点] ガイ様やっぱり起きてた……! アリー視点より、ぐっと月寄りに見えるのは気のせいでしょうか……。 とんでもなく甘いです。どろどろに甘いです。 そしてタイトルがいいな~と思いました♪ [一言]…
[良い点] ガイ様視点、大人甘い……! ガイ様が筋肉の名前すらすらで、アリーちゃんとのギャップにくすっとなってしまいました。 歳の差があると、呼び方とか普段の関係とかがなかなか変わらなくてじれったい…
[良い点] ガイ様視点、あまあま……! アリーシアちゃん、愛されてるなあ♪ もう、ドキドキが止まらなくて困ります♪ [一言] 大胸筋、三角筋、上腕二頭筋。 一体どこの筋肉なのか、詳しい位置を知りたく…
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