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くま好き令嬢は理想のくま騎士を見つけたので食べられたい  作者: 楠結衣
本編

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くま好き令嬢の出逢い 3

ブックマークが増えていて、幸せな気分です(*´∇`*)ありがとうございます!


 親友三人のお茶会が延期。侍女のサラとかくれんぼをすることにした。


「今日こそアリーシア様を見つけます! では、数えますよ──1、2、3……」


 サラが目を閉じる。数えはじめたのを合図に、カイと読みたい本を持って庭園に向かった。本の雪崩が起きてから読書をする時もサラが近くに待機している。サラは好きだけど、本はカイと一緒に読むのが楽しい。するすると大きな木の上に登った。




「アリーシア様! どこですか? 返事をしてください」


 しばらくすると私を探す声が聞こえてきたけど、かくれんぼだからもちろん返事はしない。サラの気配がなくなってから、カイに話しかけた。


「かくれんぼで返事をする人はいないと思う。そうよね、カイ?」


「アリー、おはよう」


「あっ、スイッチを切るの忘れてた……」


 慌てておしゃべりスイッチをオフにする。雪崩騒動の後、お父様とお兄様がカイにおしゃべり機能を付けてくれた。カイの名前に反応して、「アリー、おはよう」と「アリー、お休み」など応えてくれる。でも、なぜかお父様とお兄様の声だから、カイと話している気分にはならなくてスイッチを切っている。ごめんなさい。


「カイは、もっと優しい声だと思うの。ね、カイ?」


 ふわふわな焦茶色に頬ずりすると、「そうだよ」とカイも答えてくれた気がした。

 



 大きな木の上は空が近い。若草色の葉っぱから木漏れ日がキラキラ落ちる。木陰に隠れて、本を読むのは楽しくて好き。カイと同じ緑色の洋服は、葉っぱと同じ色。きっと、サラはしばらく見つけられない。


 カイと隣に並んで、持ってきた『世界にいるクマ図鑑』を広げる。私の住んでいるエトワル国のクマはもちろん、この世界にいるクマについて詳しく書いてある。


「大きなグリズリーより、もっと大きなくまさんは、コディアックグマ。寒い冬の国には、真っ白なポーラーベアーが住んでいるのね……。次は、食べ物についてね……ふわああ──」


 ぽかぽかした気温と、頬を撫でていくそよ風が心地いい。カイと一緒に欠伸をすると、まぶたが仲良しになっていく。木の上だから危ないけど、ほんの少しだけまぶたを閉じるだけ、す、こしだけ……。




 ──どさり……



 なにかが落ちた物音で、はっと目を覚ます。なにが落ちたのか気になって動いたらカイにぶつかった。




「っ、カイ──っ!」



 真っ逆さまに落ちていくカイを見て、大きな声を上げる。落ちるカイを見ていられなくて、目をぎゅっとつむった。覚悟を決めて、ゆっくり目を開く。


「えっ、どうして──カ、イ……?」


 目を開けたら、カイが人間になっている。まだ夢を見ているのかもしれない。思わずほっぺたを両手でむぎゅうと引っ張った。すごく痛くて、夢じゃないとわかる。それなら、直ぐにカイのところへ行かないと思った途端、身体がぐらりと傾いた。


「えっ? きゃあああ──っ!」




 木から落ちる浮遊感に叫び声をあげる。地面に落ちる覚悟をしていたのに、優しく抱き留められた気配がした。


「すまない、驚かせてしまったな」


 困ったような穏やかな声が聞こえて、そおっと瞳を開く。そこに居たのは、やっぱりカイだった。


「カイ……?」

「ああ。アレクから聞いているのかな? 俺はガイフレート・オルランド。アレクや親しい人からは、ガイと呼ばれているよ」

「カイじゃなくて、ガイさまなの……?」


 カイにそっくりな緑色の瞳。カイそっくりな焦茶色の髪。カイにそっくりな顔と雰囲気。じっと見つめていると、カイそっくりのガイ様は、困ったように視線を逸らした。


「どこか痛いところはないか?」


 首を横にぶんぶん振ると、ほっとしたように笑う。


「よかった。降ろしても平気そうか?」


「あっ、カイ……っ!」


 こくんと頷くと、ゆっくり地面に下ろされる。その時に、ガイ様がカイを掴んでいるのに気づいた。


「カイってぬいぐるみの名前だったのか」


 ガイ様からカイを渡される。それから、私が落とした図鑑を拾いあげて、土を払ってくれた。


「はい、どうぞ」


 大きな身体のガイ様がしゃがむ。目線を合わせてから、図鑑を差し出してくれた。その優しい動きが、まるで王子様みたい──!


「ガイ様、──ありがとう」

「どういたしまして」 


 ガイ様は優しい瞳をして、図鑑を渡してくれた。ガイ様はお兄様を知っていたからお兄様に会いに来たのだろうか? 聞いてみようと思った時、お兄様と声が響いてきた。サラも一緒に付いてきている。




「アリー! ここにいたんだね!」


 お兄様が早足で私のところにやってくると、いつものように抱き上げる。にこにこ嬉しそうに話しかけてきた。

 

「アリー、今日のお茶会が中止になったんだね。僕も空いてるから、一緒に何をして遊ぼうか?」


「えっ、アレクお兄様、ガイ様と約束しているんじゃないの?」


 ガイ様が来ているから、びっくりして目をぱちぱちさせる。

 

「あれ? ガイのことをアリーに話したことはあったかな? ガイなら大丈夫。アリーのお茶会が中止になったことを知ったのと同時に、都合が悪くなったと使いを出しておいたから」

 

 私の髪に頬ずりしながらお兄様が答えてくれた。あまりに驚いてガイ様に視線を送ると、困ったように眉を下げている。


「……アレク、すまない。どうやら入れ違いになったらしい」


「ガイ、いつからいたの? 全く気づかなかった」


「そうだろうなと思ってた。お前、妹しか見えてないんだな……」


「そうだね。全く否定しないよ」


 お兄様とガイ様の会話がぽんぽん飛び交う。私は抱っこ姿を見られているのが恥ずかしくて、お兄様に下ろしてもらった。ガイ様の前に進み出る。


「アリーシア・ウィンザーです」


「ガイフレート・オルランドです。ガイと呼べばいいぞ」


 お母様に教えてもらった大人の挨拶をガイ様にする。穏やかに笑ったガイ様は、胸に手を当てて素敵な挨拶を返してくれた。

本日も読んで頂き、ありがとうございます(*^_^*)

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