表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くま好き令嬢は理想のくま騎士を見つけたので食べられたい  作者: 楠結衣
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/52

デビュタント 1



 フェリックス腹黒殿下と契約を結び終え、馬車を降りる時、「環境は整えてあるよ」と最後にくつくつと楽しそうに声を掛けられた。

 よく意味が分からず首を捻ったが、答えは貰えないままウィンザー侯爵家の馬車に乗り込む。授業時間はとっくに終わっているので、サラに怒られるかなと心配していたが、顔色の悪いサラに慌てて話し掛けられる。


「オルランド侯爵夫人より急ぎの使者が来ています。急いで向かいましょう」

「今日はガイ様のお勤めの日よね?」

「それが……魔物が大量に発生した為にガイフレート様が明日向かわれるそうです」

「えっ……こんな時期に? どうしてガイ様が?」


 ミエーレ王国の国境付近に魔物が出るのは、毎年もう少し後なのに、どうしたのかしら……? しかもこの時期の魔物は、新人騎士団の研修訓練で討伐されるので、ガイ様が討伐に向かう予定は聞いていない……。

 胸がざわざわして、胸ポケットのくまさんピンを思わず手で抑える……「サラ、急いで向かって頂戴」と伝えると、落ち着く為に目を閉じた。


 オルランド侯爵家に到着すると、オルランド侯爵家の執事や侍女に指示を出すガイ様が見えた。


「ガイ様!」


 私の声で振り向いたガイ様が瞠目したが、構わず体当たりする様に抱き着いた。ガイ様の甘くて落ち着く匂いがする。ガイ様の大きくて温かい手が頭を撫でる感触に思わず頬を緩めて、ガイ様を見上げると穏やかなエメラルドグリーンの瞳と目が合ったわ。

 ガイ様がほんの少し屈み込み、「アリーシア嬢は…………」と言ったまま固まってしまったの。


 どうしたのかしら? とガイ様を見つめると、眉間に皺が寄り「……この匂い……」と私に聞こえない程の小さな呟きを零したの。


「……ガイ様?」


 怖い顔をしたガイ様を見るのは初めてで、討伐準備で忙しいガイ様の見送りに来たのが、迷惑だったかもしれないわ……。

 それでも、やっぱり欲張りな私は、笑ったガイ様が見たくて……ガイ様の固まっている眉間の皺をよいしょと伸ばしていると、「アリーシア嬢、こちらへ」と急にガイ様に強く手首を捕まれ、無言のままガイ様が歩き出したの。少し手首が痛いけど、いつもと違うガイ様に驚いて声も出せなかったの……


 オルランド侯爵家の温室に入ると、ふわっと甘くて華やかな香りが広がったの!

 ガイ様に手首を掴まれたまま、二人で温室を少し散策すると、お花の香りが頬や髪を撫でて行ったの。白いベンチに並んで腰を下ろすと、オルランド侯爵家の執事が手際よくお茶の支度を整えて行ったわ。


 その間中、ガイ様が私の髪を梳くように撫でていたの……ちらりとガイ様を見ると、大切な物を扱うように、愛おしそうに撫でている姿に、どきりと心臓が跳ねたの。心臓がドキドキ煩くて、顔に熱が集まるのが分かったわ……!

 恥ずかしくて、でも幸せで、ガイ様の肩に頭をこてんと預ける。ガイ様がふふっと穏やかな声で笑い、優しく髪を梳き撫でる感触に身を任せた。私は、永遠に続いて欲しい時間があることを知ったの。


 心が落ち着くハーブティを勧められ、ひと口飲むと、ふわりとカモミールの優しい香りが広がった。


「ガイ様……魔物討伐に向かうのですか?」

「今回はいつもと魔物の時期と量が違うから、念のため俺が魔物討伐の隊長として討伐に向かうことに決まったんだ」


 ガイ様が魔物討伐や遠征に行く事は、初めてではない。だけど、何故か今回は不安が纏わりつくのだ……笑ってご武運をお祈りしなくちゃと思うのに、上手く笑えなくて下を向いてしまう。魔力を込める事が出来るなら背縫いをしたいのに、まだ出来ない……私がガイ様に出来ることは、何もない……! 制服のスカートをくしゃりと握ると、ガイ様の手が私の手に重なった。


「アリーシア嬢、もし嫌じゃなかったら、これを身につけていてくれないか?」


 ガイ様が困ったように笑い、小さな小袋を私の手のひらに乗せる。「開けてもいいですか?」と聞くと、「ああ、勿論」と穏やかな声で頷いてくれる。

 そっと小袋を開き、中身を取り出すと、ガイ様の瞳と同じエメラルドグリーン色の宝石が、ハート型に加工されたネックレスだった!


「オルランド領で採れたエメラルドだ。俺の瞳の色にそっくり過ぎて……今まで縛ることはしたくなかったから渡さなかったが、今はアリーシア嬢に身につけて欲しい……」


 ガイ様が困ったように眉毛を下げ、いつもより温かい手は熱いくらい。その熱い手が私の頬に当てられ、ガイ様の瞳から目が離せなくさせている。

 ガイ様の瞳と同じ色を身につけて欲しいと言われた事が、ただ嬉しくて目元が熱くなる。言葉が出ず、こくこくと頷くと、ガイ様が大きな手で、後ろを向いた私の首にネックレスを付けてくれた。ガイ様は満足そうに頷くと、私の顔、そして首元のネックレスへ視線を向け、「よく似合うな」と目元を細めたの。


「アリーシア嬢、すぐに終えて、戻って来るよ」


 ガイ様が穏やかな声で言い、大きくて温かな手で頭を撫でた。私は、今度は「ガイ様のご武運をお祈り致します」と笑って伝えることが出来たの。

本日も読んで頂き、ありがとうございます(*´∇`*)

あと2話くらいでデビュタントは終わりかな。

ちょっと糖分出せたかな…?

もっと糖分出したい、糖分不足です。甘々な話になりたいなー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《ふたりの恋のおはなし》
アリーがガイさまに触りたく仕方がないおはなし〈全五話完結済み〉
【くま好き令嬢は理想のくま騎士を触りたい】


月明かりの下でガイさまにときめくおはなし
本編「くまさんのはちみつ」アリー視点の短編
【くま好き令嬢は理想のくま騎士にときめきたい】

6.22コミカライズ単話配信スタート(*´˘`*)♡
豊穣の聖女


恋愛作品を色々書いています୧꒰*´꒳`*꒱૭✧
よかったらのぞいてみてください♪
ヘッダ
新着順① 総合評価順② 短編③ 絵本④ イセコイ⑤ 転生転移⑥ 現実⑦ 商業化⑧
ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[良い点] >ガイ様の瞳と同じ色を身につけて欲しい それは、腹黒殿下への牽制ですね! つまり嫉妬!包容力の高いガイ様が嫉妬……! 尊い(#˘ω˘#) 討伐という大変な時ですが、大変、によりました。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ