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プロローグ

新連載になります。

よろしくお願いします!

 


「絶対にいや! アリー、ガイ様のお嫁さんになりたいの!」



 いやいやと大きく首を横に振ると、アリーシア侯爵令嬢の金色の髪がふわふわ跳ねる。ガイ様は困った表情をしたまま大きな温かい手でゆっくりアリーシアの髪を撫でると、アリーシアはガイ様の手のひらを両手でぎゅっと掴む。


 今度はそよ風がアリーシア侯爵令嬢のふわふわな金色の髪をゆらす。

 少女らしさのあるほんのり丸みのある頬、ぱっちりとした大きなピンク色の瞳を目の前にいる背の高いガイ様に向けた。

 気持ちが伝わるようにじっとガイ様の緑色の瞳を見つめる。



「アリー、ガイ様が見惚れてしまうくらい素敵な大人の女性になるので、少しだけ待っていてください……っ」



 アリーシアの決意が伝わったのか、吹っ切れたように大きな声で笑うガイ様とアリーシアは見つめ合う。



「ああ、それは楽しみだな――…」




 アリーシアに穏やかな言葉を残してガイ様は王立騎士団に入団した――。




 これは年の差のあるアリーシアとガイ様がだんだん恋に落ちていく甘いあまい恋のおはなし。




 ◇ ◇ ◇



 時は遡り、アリーシアが生まれる少し前のこと──



 爽やかな青空が広がる休日。


「父上、やはり女の子にはぬいぐるみがいいのではないでしょうか?」


「うむ、そうだな。私たちが選んだ大きなぬいぐるみに抱きつく姿は、かわいいだろうな!」


「ああっ! それはかわいすぎるでしょうね!」


 欲しいものが見つかると評判の玩具専門店。平民の装いをした親子二人組が、一時間以上、相談をしている。他の客は、真剣に悩む親子の様子を微笑ましく見ては通り過ぎて行く。


 今朝、妊娠中の妻、そして母親が「お腹の子は、女の子な気がする」と呟いたのがきっかけ。未来の娘、そして妹のために王都で話題の玩具専門店へ、開店と同時にプレゼントを選びを始めた。


「いらっしゃいませ。おめでとうございます。お子様は女の子でございますか?」


 平民の装いながら上質、滲みでる気品。親子二人組は、貴族であると店長は確信していた。貴族が来店する場合、お忍びの邪魔をしないために見守るようにしている。ところが、会話がエンドレスループに陥ったので、店長は助け船を出すことに決めた。


「ああ。まだ妊娠が分かったばかりだが、女の子だろうな」


「ええ、父上。妖精みたいに可愛い妹に会えるなんて、今から楽しみです……っ!」


「なるほど、なるほど。それならば、女の子の贈り物をお探しでしょうか?」


 赤ん坊の性別は、生まれるまで分からない。とは言え、裕福な貴族であれば、希望の性別の玩具を山のように買い込むことも珍しくない。鴨がネギを背負ってやってきた状態に、店長の笑みが深まった。


「そうなんだ。妻から()()()()()と言われていてな。大きなぬいぐるみもいいなと息子と話していたんだ」


 店長は、出鼻を挫かれめ少し遠い目をしたものの、すぐに気持ちを立て直す。望む玩具が見つかるのことが、この玩具専門店の誇りなのだ。


「生まれたての赤ん坊は、ぬいぐるみが顔に覆いかぶさると窒息することがございます」


「なにっ! 赤ん坊というのは、ぬいぐるみで窒息することがあるのか? 大きすぎるものは却下だな」


 父親の言葉に同意するように頷いて、店長は再び口を開く。


「あやすときに使う少し小さめのぬいぐるみがお勧めです。生まれてからすぐに使えますし、軽いものを選べば少し大きくなった赤ん坊が持ち歩くようになります」


「どこに行く時も持ち歩くなんて、想像するだけで可愛いな」


「──はい。想像だけで、尊いです……」


 店長が店員に目配せをする。


「こちらの熊のぬいぐるみはいかがでしょうか? フェリックス第一王子が生まれてから、当店で一番人気のぬいぐるみでございます」


 フェリックス第一王子と同じ青い瞳に、金色のもふもふな毛並み。愛くるしい熊のぬいぐるみを見せた途端。


「却下だな!」

「だめです!」


 秒速却下に驚く店長に、親子二人組は早口で話し始めた。


「フェリックス第一王子と同じ色なんて、とんでもない! 可愛い娘が見初められたら大変じゃないか! 恐ろしいし、なんて縁起の悪い……」


「婚約者に選ばれてしまったら、王子妃教育で忙しくなるだろうし。嫁いでしまったら、可愛すぎる妹に会えなくなるじゃないか……っ」


 悲痛な叫び声に、プレゼント選びは振り出しに戻る。紆余曲折を経て、第一王子の色ではなく、緑色の瞳とふわふわな焦茶色の熊のぬいぐるみに決まった。



 ──この色が選ばれたことが、運命だったのだろう。




 それから王都に住むウィンザー侯爵家に待望の女の子、アリーシアが産声をあげた。二人の選んだ熊のぬいぐるみを見せると、ほにゃりと笑う。まるで妖精のように可愛らしいアリーシアに、家族も使用人達も夢中になった。


 初めての言葉が「くましゃん」になるくらいアリーシアは、熊が大好きな子供として育っていく。初めての言葉にショックを受けて寝込んだ二人の話は長くなるので、また今度。


 アリーシアが歩けるように成長すると、熊のぬいぐるみと散歩するようになる。ぎゅっと大切に抱きしめて歩く姿は、ウィンザー侯爵家に笑顔と癒しをもたらしていった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!






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《ふたりの恋のおはなし》
アリーがガイさまに触りたく仕方がないおはなし〈全五話完結済み〉
【くま好き令嬢は理想のくま騎士を触りたい】


月明かりの下でガイさまにときめくおはなし
本編「くまさんのはちみつ」アリー視点の短編
【くま好き令嬢は理想のくま騎士にときめきたい】

6.22コミカライズ単話配信スタート(*´˘`*)♡
豊穣の聖女


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よかったらのぞいてみてください♪
ヘッダ
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ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[良い点] アリー、可愛いっす~♪
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