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第六話 沈黙

 いつも一緒の双子が別行動するようになった。

 きっかけはきっと、かーくんの告白だ。

 翼は違和感を感じて心配にもなったが、一人で現れる双子は至って普通。

 それに何より、翼の前に現れる双子の回数は、それぞれ同じ。その公平さが双子らしく、ある意味これはこれでいつもの双子なので、翼は受け入れることにした。


 そんなある日。

 今から、電話していい? と翼のスマホにメッセージが届いた。

 返事をする前に、スマホが鳴る。


「翼ちゃん。かーくんに息子としか思えないって言ったんだって?」

「言ってないよ。似たように感じなくもないようなことは言ったけど」


 この電話は、双子の兄、はーちゃんのターンだった。


「でも、どうして、そんなこと聞くの?」


 もう、あの日から、二週間は経っている。双子はどちらも話題にしないから、あぁそう言えば、そんなことあったね、と翼も気にしないでいた。


「最近、僕らと二人っきりになるでしょ? ちょっとは意識してくれるようになったかなって」

「意識、ね。まぁ、ドキドキしたりはしたけど」

「ホント!?」

「もう片方が一人でいるのかと思うと、どうしてるのか心配でね」

「……そういうことじゃない」


 はぁーちゃんが剝くれて、頬を膨らませている姿が翼の頭に浮かんだ。

 ふと、あの日のかーくんの言葉を思い出す。


「ねぇ、双子って私のこと好きなんだよね?」

「うん。そうだよ」

「じゃあ、どうしてはーちゃんは、私とかーくんが付き合えば良いって思うの?」


 相談したと言っていたけれど、そういうところが双子らしくもあり、やっぱり恋愛感情ではないのでは? と翼が思う理由だ。


「まぁ、僕はお兄ちゃんだから。弟に譲ったりとかって、お兄ちゃんぽいよね。それに」

「それに?」

「かーくんと翼ちゃんが付き合うなら、僕は浮気相手になれば良いし、かーくんと翼ちゃんが結婚するなら、僕は不倫相手になれば良い。そうすれば、ずっと三人一緒だよ」

「……」


 翼は言葉を失った。

 何を言っているんだろう。はーちゃんの言っていることを理解するなと、翼の頭が疑問符で埋め尽くされる。

 黙ってしまった翼に、はーちゃんは誤解したらしい。


「あぁ、かーくんには、ちゃんとOKもらってるから安心してね」


 なんて、少しも気にしていないことを教えられ、翼は我に返った。


「あのね、私は双子とは付き合わないし、結婚もしないの。だから、浮気も不倫もしないの」

「どうして? そうすれば、これからも今までと一緒なのに?」


 何が問題なのか分からない、と言いたげなはーちゃんの声。

 問題しかないと言ってやろうとして、翼はやめた。

 

 今までと一緒。それは何だか、少し悪くないような気がした。


 翼は双子のことを気に入っている。

 顔面偏差値が高いだけで、精神年齢が低くて、子供っぽいところや、片割れと翼以外には、人見知りを発動してしまうところは、一緒にいて、面倒だなと思うこともあるが、実は双子に振り回されるのはちょっと楽しい。

 なので、面倒なのと同じくらい、楽しい思い出がある。

 そんな日々が変わらず続くのなら、双子のめちゃくちゃな告白を受け入れるのもアリなのかもしれない。


 なんて、心を動かされたばかりに、また何も言えなくなってしまい、「その沈黙はOKってことだね!」という、はーちゃんの意味不明な思考回路によって、


「かーくん! 翼ちゃんが付き合ってくれるって!!」


 と勝手に伝え出して、翼は慌てた。


「ちょっと待ってよ。私、そんなこと言ってないよね?」


 そんなことどころか、何も言っていない筈だ。


 けれど。


「翼ちゃん、ありがとう! 大好きだよ!!」


 やっぱり、双子は一緒の方が良い。


 久しぶりに双子が二人揃った声が聞こえてきて、また何も言えなくなる翼だった。

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