第五話 将来
人気の無い校舎裏、絶好の告白スポット。
放課後、翼は呼び出されていた。
「翼ちゃん。僕と付き合ってください」
緊張した面持ちで、そう告げたのは双子の弟、かーくんだ。
いつも一緒の双子の兄、はーちゃんがいない。
なので、翼は言った。
「ねぇ、はーちゃんは?」
「それが告白の返事だったら傷付くんだけど」
「あっ、ごめん。でも、これって双子の冗談でしょ? それより、ここにかーくんが一人でいることの方が気になって」
「何言ってるの。呼び出したのは、僕だけだったでしょ?」
「そうなんだけどね」
双子というのは呼び出そうが、呼び出されようが、二人一緒の筈だ。
現に、毎朝、ちゃんと起きられない双子に、翼はモーニングコールをしているが、鳴らすのは兄のはーちゃんのスマホだけだ。
そうすれば、ハンズフリーにして、一緒に寝ている弟にも聞こえて、双子と同時に繋がることが出来る。
ちなみに、双子はダブルベッドで寝ている。その話を親友にしたら、夫婦みたいと笑っていた。
「で、どうかな? 翼ちゃんの返事が聞きたいんだけど?」
「えっと、その前にどうして、そうなったのか聞いてもいい?」
「実はね。昨日、母さんと話していたら、将来の話になって」
「将来? それって、どこの大学を受験するか、とか?」
大学受験の話から、どうして告白することになるのかは分からないが、翼はそう聞いた。
かーくんが、違うよと首を振る。
「母さん、絶対、僕らの孫が見たいんだって。だから、結婚はなるべく早くしてねって」
「結婚って、女神様は気が早いね。結婚の心配より、大学受験の心配が先でしょ。普通」
翼は呆れたが、かーくんは気にした風もなく、話を続けた。
「それで、僕とはーちゃんで相談したんだ」
「何を?」
「どっちが翼ちゃんと結婚するか」
「はぁ!?」
もうどんな展開になっても動じないと思っていた翼だったが、これは流石に驚いた。
まだ高校生で結婚について考えるのは早くて、他にもっと考えることがあるんじゃないかと思うが、考えること自体は勝手だ。
けれど、どうしてその相手が自分の一択なのかと、翼は不思議で仕方ない。
「双子だったら、選びたい放題だと思うよ。何も私を奪い合う必要はないだろうに」
「それは間違ってるよ。僕らだって、結婚できれば誰でもいいワケじゃないんだ」
それはそうだ。結婚は好きな人するものなのだから。
「双子って、私のことが好きなの?」
「好きだよ」
何を当たり前のことを、という顔で答えられ、今度はそうじゃなくて、と翼が首を振る。
「ずっと幼馴染をやっているんだから、嫌われてないことは分かってるけど」
「嫌いじゃないじゃなくて、好きなんだよ」
そうかーくんに言い切られ、翼はちょっと照れてしまい、顔が赤くなってるんじゃないか気になった。
「うん。でも、それって恋愛的な意味なの?」
「正直、まだ分かんない。だけど、ずっと一緒にいたいと思う女の子は、翼ちゃんだけだよ。僕らはね」
かーくんの答えは素直に嬉しい言葉だった。
双子にとって自分が特別な存在なんだと、翼は思えた。それは、翼も同じ。双子は特別な存在だ。
けれど、そこにドキドキするような、ときめきのようなものはないような気がする。
「なんか、大きくなったらお父さんと結婚する! 的な意味に聞こえるね」
「えー? それは酷い。僕らを子供扱いしないでよ」
不満げに頬を膨らませる、かーくん。
翼はごめんごめんと謝罪しつつ、本音が漏れる。
「でも、双子、私のこと、幼馴染っていうより、第二の母的な扱いじゃない?」
女神様に双子のことを色々と任され過ぎて、最早、母親を代行しているような境地だったので、告白だろうが、プロポーズだろうが、さらっと流してしまえる翼だった。




