表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第三話 告白の返事

 昼休み。

 翼は教室で、双子と親友の千里と一緒に、お弁当を食べていた。


「ねぇ、双子」

「なに?」


 翼が呼び掛けると、黙々とお弁当を食べていた双子が顔を上げた。

 仲良く揃って、卵焼きを箸で摘んでいる。


「あの断り方、やめてくれない?」

「断り方って?」

「何の話?」


 首を傾げてから卵焼きを口に放り込む。双子の動きがシンクロしていた。


「告白の返事のこと。双子ちゃん、モテるでしょ?」


 話が進まないと思った千里が、助け舟を出してくれる。


「あぁ」


 と、双子は卵焼きをもぐもぐして飲み込んだ。

 漸く、翼の言いたいことが分かったらしい。それでも、やっぱり双子は首を傾げた。


「ダメなの?」

「ダメでしょ」


 翼からすれば信じられない、いや、整った顔立ちからすれば信じられるけれど、双子はモテる。

 女の子達からの一目惚れだという告白が引っ切りなしだ。

 けれど、恋愛に興味がないのか、双子の答えはごめんなさいの一択。

 双子が誰とも付き合わないというのは、別に構わない。

 翼が問題視しているのは、その断り方だ。


「好きな人がいるから」


 これが双子の断り文句。この返事が大問題だ。


 双子に好きな人がいるなんて、翼は聞いたことがない。


「双子の好きな人、私ってことになってるんだけど」


 その所為で、時折、顔も名前も知らない女子生徒から敵意を向けられる。それが、翼は嫌だった。


 もう我慢出来ない、と意を決して言ったというのに、双子は呑気にお弁当を食べ続けている。


「そうなんだ。知らなかった」

「他に好きな人がいるってなれば、ごめんなさいしやすいと思って言ってただけだよ? 翼ちゃんだって言ってないし」


 ねー? と顔を見合わせる双子。


「そんなことは分かってます!」

「でも、双子ちゃんと翼は、いつも一緒にいるじゃない? 二人が他の女子と話してるなんて、あんまり見ないし。誤解されちゃうのも無理ないよね」


 千里の言葉に、双子は顔を見合わせたまま、考えるように首を傾げた。

 んー? と唸ること数十秒。何か閃いたのか、ぱっと顔を輝かせる。

 そして、双子は翼ににっこりと微笑んだ。


「分かった。違うやり方で諦めてもらうよ」


 やけに得意げな笑顔に、若干の不安を抱いた翼だったが、双子を信じることにした。


 それから、ある日の昼休み。

 翼は言った。


「ねぇ、双子。あのやり方、やめた方がいいんじゃない?」


 好きな人がいると言えなくなった双子は、とんでもないやり方で、告白の返事をするようになっていた。


「双子が本気出したら、違いなんて分かるワケないでしょ?」


 告白しようと双子の一人を呼び出すと、もう一人もついて来て、こう質問する。


「あなたが好きなのはどっち?」


 と。


 人を試すようなやり方に、それはダメだろうと翼は思った。

 非難の眼差しを向ける翼に、双子はあっけらかんと言った。


「だって、好きなら分かる筈でしょ?」


 確かに、告白する相手が分からないのでは不誠実だから、正論でもある。けれど、双子のそっくり具合からすると、翼はどうしても卑怯な気がしてしまう。

 でも、やっぱり双子の言いたいことも分かる。

 何となく微妙な気持ちになる翼。

 そんな翼を知ってか知らずか、双子が言う。


「それに、翼ちゃんなら絶対に分かるよね」


 何でもないように、さらっと聞こえた言葉に、翼はどきりとした。


「それ、相手の女の子に言ってないよね?」

「えっ? ダメなの?」

「……ご愁傷様、翼」


 千里が同情を込めて呟いた。

 道理で、顔も名前も知らない女の子の敵意が減らないワケである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ