第二話 半分こ
高校生になった翼と双子。
学校からの帰り道。
翼と双子は商店街を歩いていた。
「ねぇ、翼ちゃん」
「ダメだから」
「……まだ何も言ってないのに」
はーちゃんの期待の篭った眼差しを切り捨て、かーくんに恨みがましい視線を向けられる。
翼は最後まで聞かなくても、双子の言いたいことは分かっていた。
「たい焼きが食べたいんでしょ?」
「えっ? 翼ちゃんてエスパー?」
「凄い! どうして分かったの?」
「エスパーなワケないでしょ?」
「じゃあ、以心伝心だ」
「今日から、僕らは三つ子だね」
「それも違う」
簡単なことだ。
超能力でもなければ以心伝心でもない。
単に双子がたい焼き屋さんが近付いてくるとそわそわし、お店の前に来たところで足を止めたからだ。
「許可しないからね」
「翼ちゃんのケチ」
「ケチ」
翼は双子の母親から、双子が買い食いしないようにお目付け役を任されている。
双子は帰り道に買い食いをして、夜ご飯が食べられないことが何度かあり、料理上手な女神様は悲しんでいた。
「半分こにするから。それなら、良いでしょ?」
とはいえ、このまま双子がぐずぐずしていたら、帰るのが遅くなりそうだ。それは嫌だな、と翼は思った。
半分くらいなら大丈夫だろうか。
翼は仕方なく双子の提案に頷いた。
「やった! 何にする? やっぱり餡子かな?」
「カスタードも食べたいな」
「チョコレート!」
「チーズクリーム!」
双子が嬉しそうに話し合いながら、お店へと近付いて行く。
翼は苦笑しながら、少し遅れて後に続いた。
くるっと、双子が同時に振り返る。
「翼ちゃんは?」
「私は良いよ。待ってるね」
女神様ほど料理上手ではないけれど、家に帰れば、母がちゃんと夜ご飯を作ってくれている筈だ。それが待てないほど、お腹が減っているワケじゃない。
「分かった。待ってて」
「ねぇ、何にするか決めた?」
「どうしようかな……」
双子が味の相談をしながら、また歩き出すのを見届けて、翼は店から少し離れた、通行の邪魔にならない所へ移動する。
一つしか買えないのだから、迷うのも無理はない。結局、ちょっと遅くなってしまうのだろうか。そんな心配をする翼だった。
少しして、双子が翼の元に帰って来た。
手にはたい焼きが一つずつ。
どういうことだろう? 呆気に取られる翼の目の前で、双子は何でもないように、たい焼きを半分にちぎり、尻尾の方を交換し合っている。
はーちゃんのたい焼きの頭は餡子、かーくんのたい焼きの頭はカスタード。定番の味だなと思って、翼は頭を振った。
違う。味なんてどうでもいい。騙された。
「そんなの半分こじゃないから!!」
これは一度で二度美味しいだけだ。
怒った翼は、双子からたい焼きの尻尾を奪う。
「あぁ!」
悲痛な悲鳴を上げる双子を無視して、翼はぱくぱくと奪った尻尾に噛み付いた。




