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男たちの晩餐会  作者: 中野拳太郎
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5、 ボクシング部の終焉



  5、 ボクシング部の終焉 


 全試合が終了して、表彰式が開かれた。

そこで楢崎と川島は、インターハイ出場の権利と、それぞれ楢崎が敢闘賞、川島が最優秀選手賞を勝ち取った。


その後、共栄高校だけで集まり、手短に今日の試合の反省、ミーティングをやり、それが終わると解散となった。


一年生と二年生はそれぞれ分散し、家路へと向かったが、三年生六人は帰宅するのも惜しまれ、ラーメンや甘味などを扱うチエーン店、会場の城南大近くにある、地下鉄駅付近の店舗に入っていった。


この店は、基本的にラーメン屋であるが、ソフトクリームやぜんざいなどの甘味メニューのみを注文する客も多い。

価格も貧乏学生には有難いリーズナブルさで、ランチや夕方の時間帯はいつも混んでいる。


 僕らは学ラン姿で入店した。

店内は広かったが、ランチタイムを過ぎていたことで、客はチラホラと疎らにいるだけだった。


先ず六人が座れるようテーブルをくっ付け、陣地を作った。


インターハイ行きを決めた者、敗れた者、それぞれ一先ずは、減量の心配からも解放され、各々ラーメンや甘味を注文し、席に戻ってくる。


一先ずこれで落ち着いた。次がある者、これで終りの者。

それぞれ想いは違えど、一段落したことには変わりがない。


彼らは、あまり行儀のいい奴らではなく、顔もいかついし、赤く顔を腫らしている者、鼻の中にテッシュを突っ込んでいる者(これは僕だ)もいる。


それなのに大声で喋り、笑い、そして、甘いスィーツなどを食べているのだから、他の客は少しずつ波が引いていくように遠ざかり、やがては誰もいなくなっていた。


「解放されたというのに、なんか虚しいよな」

僕はタオルを濡らし、腫れた右目を冷やしていたのもあり、周りの急変に気づくことはなかった。


「ああ、もう終わったね」

最後に近藤が席に戻ってきた。いつものように声が小さく、存在感が薄い。

「こうやって皆でまったりするのも、もしかしたら今日で最後かもしれないな」


「なんか淋しいよな。今まで俺たち、いつも一緒だったからな。そんで、馬鹿ばっかしてきた」

三浦は眼鏡を外し、丁寧に眼鏡拭きでレンズを拭いていた。


「お前、もしかして泣いてるのか?」

鼻のテッシュを取り換えながら、河辺が茶々を入れた。


「ちげぇよ。それより、何で、試合のないお前が鼻血なんか流してんだよ」


「先週の試合で、物凄ぇ打たれて、鼻血ぶわって垂れたのが、今になってもたまにチョロチョロと出てくんだよ。

ほら、さっき、思いっきり鼻かんだから、それでキレたんだ」


「違うぞ、こいつ」

楢崎が指を差し、立ち上がってから手を叩いて笑いだした。

「演劇部の女子大生が集団で歩いていくのを、ずっと見てたんだ、いやらしい目つきでよ。

興奮してんじゃねぇぞ、このムッツリ野郎」


「違う、つうの」

河辺は眼鏡の奥の目を三角にし、逆襲に転じた。

「お前なんか、その女子大生をナンパしてたじゃないか。

だからその集団が演劇部だっていうのを知ってんだよ、こいつは。

いいか。でなきゃ、あの子たちが演劇部だって分かるはずがないだろ。そうじゃないか。

ああっ。自分で墓穴を掘っちゃったね、楢崎君」


「それもそうだな」


三浦が冷静に言った。


「ほんとかよ? 何だ、何だ。そんなことがあったのか、俺に黙って。水くさいじゃないか」

ここで、珍しく川島が机を叩き、食いついてきた。

「で? どうなったんだよ」


「アッアアア!」

と楢崎が突然、奇声を上げた。


「高校生はちょっと、って言われて、こいつフラれたんだ」

河辺がニコニコしながら、嬉しそうに答えた。


「ダッせぇ!」

川島も嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「こいつ」


「うるせぇ。何喋ってんだよ、ムッツリ男め。馬鹿じゃないのか」


「どうせ馬鹿ですよ」


盛り上がるこいつらを尻目に、僕は静かに、奴らの話しに水を差すかのように口を開いた。


「お前に、言ったんじゃないよ」

楢崎が、僕の顔色を見ながら言った。

「河辺に言ったんだよ。こいつがありもしないことを、風潮したからだ」


「分かってるよ。はあぁ、終わっちまった」

僕は後ろに大きく伸びをした。

「今日、一番悔しい思いをしたのは俺だよ。なんせあの強敵を倒したのに負けたんだからな。

倒した時のあのパンチ、毎日根気よく練習してきたんだ、ハチと共に。

それこそあいつを倒すパンチはこのパンチだって、来る日も、来る日もバカの一つ覚えのように。

そして今日、太田のパンチを受け、こんな風に右目を大きく腫らし、それにも耐え、相手に隙が生まれた時。

待ってましたとばかりに、あのパンチを繰り出した。

でもその瞬間に、ハイ、それまでっていう感じで、全てが終焉を向かえた」

僕は項垂れた。


しばらくは誰も喋らなかった。


なんか、楢崎と川島の笑顔を見ていると、腹が立ってきたのだ。


今日くらいは、僕が主役でもいいじゃないか。

お前らは、これから主役になれるんだから、とこの時は、そう思っていた。いつだってそうだ。


皆が他の話題で盛り上がっているのに、すぐに自分の話題に、強引に引き寄せようとする。


それは分かっている・・・。


「でもよ、ハチが言うこと、間違ってなかったよな。間違えたのは俺だ。

もう少しナックルを返していれば、あんなことにはならなかったんだ。

ちょっと楽しちまったんだ。あんなところでさ、肝心な時に・・・。

 だって、太田の顎が上がった時には、ここだって思って、その時は無我夢中で、右を振り抜いていたんだ。

このチャンスを逃せば、もうない、とばかりに。そしたらー」


「ナックル・・・返してなかったのか?」

川島が先程までの顔を変え、真剣な顔つきで訊いた。


 僕はゆっくりと肯いた。


「そうか。だからお前、レフェリーの判断に、何もアピールしなかったのか」


「あのパンチが当たった時、ここに感触が残ってたよ」

僕が掌を見せると、また、沈黙が落ちた。


「そう嘆くなって」

河辺もチョコレートクリームを頬張りながら、心配そうな顔をした。

「インターハイ行かなくなった分、彼女と思いっ切り遊べばいいじゃないか」


「彼女なんていないわ。それより、お前、そうやって食いながらいう言葉かよ。

いっぺんそのモジャモジャ頭に、ソフトクリームを振りかけてやろうか」


「あれ、お前、いるって言ってたじゃないか」


「言ってねぇよ」

僕は、右手で河辺のモジャモジャ頭を撫で繰り回し、左手でチョコレートクリームのポッキーを取り上げた。

「お前な、そんなの食ってっから、何言ってんだか分からんのだわ」


「何するんだ」

河辺が、それ以上取られまいと体を張って守った瞬間、鼻の中のテッシュが飛んでいった。


 そこで大爆笑が湧き起こった。


だが、こんな時にも近藤は一人、我れ関せず、といった感じで、もくもくと冷やし中華を食べていた。

 

僕は、もうどうでもいい、と半ば投げやりにそう思った。

河辺のその詰めていた鼻のティッシュがなくなった、バカ顔の笑顔に、近藤のその割れ関せずの食い様に。ふっきれたようだった。


「俺よ、実は、試合で負けたから、悔しいだけでもないし、それからインターハイに行くためだけに頑張ってきたわけでもないんだ」


「どういうことだ?」


笑いが収まった頃、楢崎が訊いた。


「ま、聞いてくれよ。実はさ、俺、三年生になってから、いいな、っていう子ができたんだ」


なぜかは分からなかったが、口にしていた。


今までずっと自分の中だけに収めてきたことを。諦めるために言っているのか。それとも・・・。


とにかく、口を滑らせた途端に、湧き出る泉のごとく、僕の口からは、言葉が溢れる湧き水の如く、出てくるわ、出てくるわ、吐き出されてきた。


「誰だよ」

真っ先に河辺が訊いた。


「皆川沙織だよ」


「・・・確か、商業科B組の、あの鼻が高くて、彫の深い子、か?」


「ああ」

僕は溜息をついた。

「告白はしたいけど、俺には何もアピールするもんがなかったから、ずっと何も言えずにいたんだ・・・」


「それでお前、ボクシングで頑張って、インターハイに行くことを目指していたのか?」

楢崎が僕の考えを探るように、顔を見てきた。


 僕は、お前のいう通りという具合に肯いた。


「お前、よく分かったな」

川島が楢崎に目をやりながら、感心していた。


「ま、俺も同じような動機でボクシングしてるからな。

女にモテたいがためにやってる、っていうところが」


「お前、分かるのか、俺の気持ちが?」

僕はラーメンを食べ終え、かき氷にスプーンを入れて、訊いた。


「分からなくもない」


「そうか。で、俺は強くなって、インターハイに行って、皆川に告白するつもりだったんだ。くわ~」

あまりの冷たさに歯が浮いた。


「それが駄目になったんで、お前、試合後、泣いてたのか?

 俺はてっきり試合に負けて、泣いていたとばかり思っていたんだが・・」

 河辺が言いづらそうに、だが目は笑っていた。


「テメェ!何が面白いんだ」


「別に面白くねぇよ」


「笑ってんじゃねぇか」

僕は、河辺の頭をヘッドロックで固めた。


「うわ、やめてくれよ」


「藤賀、」

川島が真剣な顔で言った。

「別に諦めなくてもいいじゃないか。お前は頑張ったよ。

試合に勝つ、負けるは別として、この試合で得るものがあったはずだ。そうじゃないか?

だから、予定通り、告白すればいいさ。

だって、この大会でどれだけお前が、精神的に成長することができたのか、ここにいる全員がちゃんと知っている。

あのきつい練習に逃げ出さないほどの忍耐力がついたんだ。

それだけでも凄いことだし、誇れるものができたっていうことだ、な、楢崎?」


「何だ、俺かよ。

俺はそんなことより、好きならコクればいいじゃないか。それでダメだったら次に行けばいいことだし。そう深く考えるこっちゃないだろ・・」


 二人の顔がMVPのトロフィーに見えてきた。


川島はキャプテンだけあり、いつも彼の意見には筋が通っていて、説得力がある。だから肯定せずにはいられない。

楢崎は、こんなものだ。こいつは、いつも深く考ることをしない。きっと、頭の中が単純に出来ているのか、あるいは考える思考というものが、欠如しているのかもしれない。


でも、今日の僕は、腹の底では、何故か分からなかったが、こいつらの意見に同意はできなかった。


どうせお前らは、試合に勝ち、インターハイに行ける身分なんだから、と。

一種、僻みにも似た感情が湧いていた。


「楢崎らしいな」

三浦が言った。

「単純で」


「藤賀ちゃん。告白すればいいさ。俺も一生懸命やった藤賀ちゃんを知ってるし。だから、きっと成功するはずだよ」

近藤が応援してくれた。


「告白もしてないのに、今から落ち込んでて、どうすんだよ」

河辺が激を飛ばす。

「今の気持ちでいるの、ウジウジしてるだけで気持ち悪いだけだろ。

駄目なら、駄目でいいじゃないか。早く、コクってスッキリしてこい」


「それでダメだったら、海いってナンパすりゃいい。高校生活最後の夏休みが待ってるんだぞ」

三浦は僕を見るでもなく、眼鏡を上に翳していた。

「それにしても、このかき氷、つめてぇな」


「うるせぇよ、お前ら。まるで俺がフラれるみたいだな」

だが、河辺や近藤、三浦の励ましには耳を傾けることが出来た。


「成功できるとでも思った?」


「クソ河辺め、ま、いいや。例え、成功したとしても、まだこの心の中が、こうスッキリとしないような、そんな気がするんだ。自分の目指してきたものとは、形も違うし・・・。

それに、高校生活最後の夏なんだ。まだやることが残ってるようで。でも、他には何も思い浮かばん。俺には、ボクシングしかなかったのかもしれない。

でもこんな成績じゃ、スカウトもないだろうし・・・」


「何カッコつけてんだ。予定がないのはお前だけじゃない。俺だって、何もやることないんだ」


「はあぁぁっ」

三浦が足を組み、それから肩を落として、溜息をついた。

「明日から、練習やらなくてもいいんだよな。

あれ程鬼コーチの猛練習から逃げることばかり考えてたのに、実際こうやって明日からこなくてもいいよ、ってことになると、淋しいもんだ」


 ここで、一気にクリームぜんざいを食べ終えた川島が口を開く。

「じゃ、お前ら、もう少しボクシングを続けてみないか?

 な、引退するの、まだ早いぜ。そう思わんか?」


「どういうことだ?」


「いや、待て、三浦。こういうことだよ。

試合のために練習っていうのも一理あるし、これまでの先輩たちが、予選で負けたら引退っていう仕来たりもあるにはあるが、俺たちって何か、違うだろ」


「どこが? そうやって、お前はいつも思わせぶりな口ぶりで、めんどくせぇ男だな、早く続きを言えよ」


「ま、急かすなよ、この女子大生にフラれた、フラれ男君」


「なんだとこの野郎!」


「お~い。もうやめろ、二人共」

僕は言った。

「それより、先を喋れよ、川島」


「分かった。今まで仕来たりが、上下関係が、そして練習が厳しくて三年生になると、この時期に残っていたのなんて、二人か三人だっただろう。

それがどうだ。俺たちの代に変わってからは、三年生がこの段階で六人も残ってんだぞ」


 ここにいる全員が頷いた。


そう。今までの三年生は、二人か三人くらいしか残らなかったと聞く。確かに上下関係はきつかった。

でもこれから天下だというのに、皆三年生になる前に辞めていってしまう。それは、なぜか? 

きっと後輩からの突き上げや、成績が伴わないのもあるかもしれない。

だが、自分が最高学年だ、というプレッシャーに耐えられなかったことが、部を去った要因として、一番大きいのかもしれない。


「それじゃ、なぜ六人も残った?」

川島は続けた。

「俺たちは上下関係を比較的緩くし、和気あいあいとやってきたことが良かったんじゃないか、そう思わんか? 

だから現在の部員は、三年生だけでなく、二年生が十三人、一年生なんてまだ入ったばかりだし、それに正確な人数は把握してないが、二十人は超えている」


「だから、何がいいたい? まだ引っ張りやがって。うぜぇ~」

楢崎はスイーツの赤いスプーンで器を叩き、カチャカチャと鳴らし、何かのリズムに乗って、急かしてはいたが、試合に勝ったことにより、気分は良さそうだ。

むしろ上機嫌で、手がつけられなくなっている。


「黙って聞けよ」

川島が制止ながら言った。

「俺らから言わせれば、共栄高校ボクシング部の仕来たりなんてあるようでない。

だから変えればいいんだよ。確かに試合のための練習っていうのもある。

だけど体を鍛えるためにだとか、ストレス発散のためにやってもいいじゃないか。

大人になれば、タダではできなくなるんだ。

だから、やりたければ何処かのジムにいき、入会金、月謝を支払ってやらなくちゃならないし、どこにでもある、ってわけじゃない。あるところも限られている。

部を辞めれば、ボクシングというものが、マイナーではない、ということを感じるようになるんだよ。

だからあの時、もっとやっとけば良かったって、思うはずさ」


「でもよお。それはいいとして、今までの仕来たりでは、県予選で負けたら即引退って決まってたじゃないか。

このまま俺たちが続ければ、後輩の奴らが、疎ましく思うんじゃないか。奴らにしてみれば、やっと天下だと思ってるんだから」


「藤賀、そのへんのところはハチに言って承諾を取る。安心しろ。

それに後輩は俺たちのことをそれ程疎ましく思ってないし、尊敬もしてねぇ。

馬鹿な奴らだと思ってるだけだよ。それに、二年の奴らが言ってたぜ」


「何て?」


「先輩たちと練習ができなくなるのが寂しい、まだ教えてほしいことがいっぱいある、と」


「そんなの、お世辞に過ぎないぞ。真に受けんな」


「お世辞かもしれないが・・・。そうだな。川島の言うとおりだ」

ようやく器を、叩くのを止めて楢崎は肯いた。


「俺たちの代から先輩、後輩の垣根がなくなり、河辺とか三浦なんかは、後輩の例えば中沢、水野とかと平気でタメ口で話してるからな。

それに俺たちも敬語こそ使われているが、はっきりいってなあなあだ。

昔と比べると威厳もあったもんじゃない。だって、考えてみろよ。昔なんてすぐ鉄拳だった。恐ろしかったよ。

でも俺はそんな垣根なんて、なくてもいいと思っている。少しの尊敬する気持ちさえあれば。

それがいいことにこれだけ部員が残ったからこそ、運動場を使う時も大きな顔をして、使うことができたし、な。

だからお前ら、もう少し、後輩の面倒を見てやれよ」


川島は誇らしげに言った。


「ああ。その通り。剛より柔だよ。それに、仕来たりなんて俺らから作ればいいんだ。

だから、もう少し一緒に練習やろうぜ、皆で。俺らも、その方が心強いし、そうだろ、川島?」

スプーン楽器を止めた楢崎が言った。


「まあな」


「それじゃ、今は他にやることもないから、やるか」

自分が意見を言うのが恥ずかしいからなのか、俯きながらでも近藤は言った。

「藤賀ちゃん。で、ボクシングを続けたまま、告白すればいいんだよ」


「何だよ、お前は・・」


「俺らも後ろから見て、応援してやるよ」

楢崎がこっそりと、ドアを開けるような仕種をした。


「来んな。お前は」


「冗談だ、藤賀」

そして、川島が皆を促す。

「俺も、実際この言葉をいう前には迷っていたんだ。

ボクシングの練習というものはきつくて、辛いもの。

でもやるからには、妥協だとか、気の緩みとかは一切なく、やってもらわなくてはならない。

だから、試合もなく、何の目的もない者を引き留め、一緒に練習をやる。

果たしてこれがいいことなのか、どうか、俺には半信半疑だった。

でも、お前たちだったら、まだやりたい、そうじゃないか?

 やりたいから、やる。それでいいんだ」


「でもよ、川島。逆説を唱えるようで悪いんだが、今は何もやることがなくて、所謂ノリでやる、と言うかもしれないよな。

しかし、もう少ししたら、高三の時にしかできない事柄を発見するかもしれないじゃないか。

高校時代なんていうものは長いようで短い。

他にやりたいことがあれば、俺たちには一緒にやってもらうという、強制的なことは言えないのかもしれない。

俺としては、一緒にやりたいが・・・」


「そうだな。楢崎の意見にも頷ける。

まあ、俺たちはこうやって引退を引き伸ばして、この時期が永遠に続くものだと思っているかもしれないが、いずれは終わりを迎え、やがて別れがくる。それが早いか、遅いかの違いだ。

所詮、若い時なんていうものは、人生のほんの一部分で、短いということが、いずれ分かる時がくる。

その時に、はたしてこの決断は合っているのか・・。

河辺や三浦がいったように高校生活最後の夏休みを謳歌するのも、一概には間違いではないのかもしれない」

僕は否定するわけではないが、蟠りを口にした。

しばらくは周辺が静かになっていた。


だが、その言葉を口にしたことにより、それで僕の頭の中にあったものが順序良く、整理されていくようで、口が滑らかに廻っていく。


「ボクシングは、終わりだよ。俺はそう思う。

けじめをつけることを怠ったら、どんどんとけじめをつけることができなくなり、引きずるだけだ。

そう、いつまでもキャベツの裏葉に生息する青虫のように、な。

だから、蛹の殻を破り、蝶に変身して、そろそろ羽ばたく時がきているような気がするんだ。

新しいことを見つけなきゃ、な。それをするのは自分だ。

自分のことは自分で決めて、それを実行する。

でなければ、今日の試合が嘘になるんじゃないか。そんな気がするんだ」


 水面に小さな小石が落された。


静かにそれは水飛沫を上げ、広がったと思ったら、やがて静かになる。


そして、何も動かなくなった。


誰もが息をひっそりとさせた。


あるものは瞬きを何回もし、あるものは薄く口を開けていたが、しばらくは誰も喋らなかった。

将来という大きな壁に戸惑い、動くことができないように。


「今、突然、思ったんだけど、俺、ちょっと旅に出てみようかなって。

夏休みになったら、真っ新な気持ちになって、新しいことを見つけるにはどうすればいいのか、それで、これからのことを考えるんだ。

所変われば、新しい発見があるかもしれない。

例えば、電車に乗れば、様々な人間が乗り降りするだろ。

その人々の会話に耳を傾け、それには同意できる、なんて自分の中で頷いてみる。

そして、通行人の外見に視線を送り、今、どんなファッションが流行っているのか、この人はどんな仕事をしているのか、そんなことを観察してみたりして、自分探しの旅に役立たせるんだよ。

具体的に言えば、名古屋からJRの各駅停車の列車に乗って、そうだ。京都がいい。

そこまで足を延ばし、気分が向いた所で降りて、散策をして、美味しい物を食べて、温泉にでも入るのもいいよな。

予定は立てないんだ。風の向くまま、気の向くままに」


「つれねぇな」

河辺が言った。

「せっかく部員がヤル気になって、練習を続けようっていうのによ」


「いいじゃないか。お前らは練習を続ければいい」


「ふん。それより、お前、そんな金何処にあるんだよ?」


「今までの小遣いと、これから

バイトを見つけて稼いでみるよ」


「こいつ、恐らく親から借りるぜ、な近藤、そう思わんか?」


「いいと思うな、その考えも」

近藤は頷いた。

「そういう考え方があっても。でも、相変わらず、藤賀ちゃんはすごいよな、前向きで。

俺なんか、この先何をすればいいのか、それから、しなくてはならないのかが、まったく分かってないんだ。だから、練習とか、どうしようかな・・・」


「別に藤賀だけが前向きじゃないぞ。皆色々考えているんだ。

練習は、やりたければやればいい、やりたくなければやらない。ただそれだけだ。自分で考えろよ」 


「そうだぜ。人生なんて、この先どう転ぶか分からないんだから、もっと三浦が言ったようにシンプルに考えればいい。やるか、やらないかを。

若い時は目先のことに全力で走ればいい。先のことを考えるのはもっと、年をとってからでもいい、ってうちのオヤジが言ってたし。

今から、そんな真剣に考えなくてもいい、何とかなるさ」

 その河辺の軽い言葉を聞いたが、本音は皆、揺れているはずだ。


本当にそれでいいのだろうかと。


彼らも彼らなりに、将来について考えようとしているはずだ。


「おめぇ、食べるの、遅いんだよ」

僕は、河辺のモジャモジャ頭をスプーンでこついた。

するとそのスプーンは手元から滑り落ち、ころころとテーブルに僕らの確証のない、そう、未確定的な未来の彼方へ、あるいは、目の前に丼ぶりや、食器があり、それにぶつかることも恐れずに前へ進んでいく。


人生には多くの障害物があることも知らず、そのスプーンは、若い僕らのように、何処へ向かえばいいのかも定まらず、ゆらゆらと迷いながらも、前へ進んでいった。  


「そろそろいくか?」

楢崎が痺れを切らし、立ち上がった。


「そうだな。もうかれこれ一時間以上はいる」

僕も立ち上がり、タオルを鞄に仕舞ってから、

「で、次、何処行くよ?」

と言った。


「もう帰ろうぜ。試合でクタクタなんだから」

川島が肩を竦め、うんざりとした顔をした。

「お前、右目の腫れが酷くなってきたぞ。いい加減、帰れよ」


 確かに右目がジンジンと熱を持ち、顔を顰めると激痛が走った。

まるで上から何者かに指で押さえつけられているかのように。

それに視界も狭くなってきた。だから、目線を上に向けているため、下が見えず、歩こうと思ったその時、椅子に躓いた。

それでも態勢を整え、

「まだ帰さないぜ」

と、僕は唇を釣り上げた。


 城南大の最寄りの駅の地下鉄を跨げば、各々別れて帰宅しなければならない。


僕はそれを阻止するべく、駅近くのゲームセンターに入っていった。

「おら、ここでいいだろ。早くこいよ」


 僕の次にまだ余力の残っているゲーマーの河辺が続いた。

そうなると、三浦、近藤も続いてくる。


まだ家には帰りたくなかった。


体は疲れていたが、このまま家に帰り、眠ってしまえば、僕のボクシング人生が終わってしまうという思いが頭を過り、帰宅の途に足が向かわなかった。


しかし、俺は帰るぜ、と一番付き合いの悪い楢崎が異を唱えた。


「待てよ」

楢崎の顔を窺い、冗談ぽく、慌てて僕は呼び止めた。

「今日は帰さない」


 鞄を掴まれた楢崎はムスッとし、立ち止まった。

「何でだよ? 俺は疲れたんだから、帰してくれ。明日は学校だぞ」


「お前、オヤジみたいなこと言ってんじゃねぇぞ」

僕は、楢崎の腕を掴んで離さない。


「いいだろ」

楢崎は、僕に腕を引っ張られ、それから逃れようとした。

「今日のお前、しつこいぞ」


ラーメン屋に来る前までは、彼女のこと、話すきっかけ、それに告白も、何もかもをなくしてしまったはずの僕だった。 


「どうせ、お前らには、俺の気持ちが分からねぇ」


 今まで目標を立て、それに向かって走ってきたが、途中でその目標が叶うことなく、儚くも散った。


でも、今は違う。現金なもので、こいつらのお蔭で、希望を持つことができるようになった。


まるで真っ暗闇の中に、一筋の明るい光が差し込んできたかのように。

告白のことやこれからの進路についても、だ。

だから、もう少しこいつらと一緒にいたかっただけなのに・・・。


僕は項垂れた。そして、楢崎の腕を放し、歩いた。

その時、皆の空気が変わったことを知った。


シーンと静まり返った。


だが、しばらくすると、楢崎が顔を上げ、茶目っ気を出し、ペンギンが歩くような恰好で、ピョコピョコと店内に入って来た。


「でも、何で帰ったらいけないんだ」


 その様が可笑しくて、皆が爆笑した。


「分からん」


「分からん、はないだろ」

楢崎は尚もペンギンの仕草で、僕に詰め寄ってきた。


「いいじゃないか」

僕は、楢崎の肩を揉みながら、奥の方へと向かった。

「何だ、ほんとはお前、来たかったんだろ」


「ふん。お前には、俺の気持ちが分からねぇ」


 自分の気持ちを表現するのは難しい、とは思う。

だから誰かが使った即席の言葉で、即席的に誤魔化すのだろうか。


高校時代というものは、こういうものなのだろう。


理由なんて要らない。


上役に気を使って、ヨイショや打算を駆使し、宴会にいつまでも付き合うサラリーマンと違い、今が楽しいから一緒にいるんだ、と。

このようにして高校時代の貴重な日々は、過ぎていく。


「待てよ」

置いてきぼりをくった川島が、慌てて店内に入ってきた。

「置いてきぼりをくった俺の気持ち、お前らには分からねぇだろ」  

そして、ニコリとした。


「早くこいよ」

三浦が手招きをしている。

「でも、お前来ても結局見てるだけだろ」


 そうなのだ。川島はゲームが苦手だ。

ボクシングは一番強いが、ゲームに関しては一番弱い。

今までの位置関係がここでは逆転するのが面白い。


 河辺の家がある天白区界隈では、彼はゲーマーといわれているし、三浦も地元の朝倉では小学校、中学校のガキから神様と称えられるだけあり、彼も上手い。

人それぞれ得意分野があり、彼らの瞳がギラギラと輝いてくるのを眺めていると、人間って面白いな、とつくづくそう思わされる。 


それでも、しばらくすると、脱落者が出かかっていた。

「ああ、かったり」

やはり、楢崎だ。

彼は、丸いパイプ椅子に腰かけ、足を思いっ切り投げ出していた。

「クソ、面白くねぇ。何だ、このゲームは」


 しかし、そうはいっても本音は、皆と一緒にいるのがいいのだろう。格闘ゲームをやりながら、悪態をつきつつも、結局帰ろうとしない楢崎がいた。


「おい、皆でこのパンチングゲームをしないか?

 それで誰が、一番パンチ力があるのかを競おう。

勿論勝者には金が入ることになっているがな」

 楢崎がゲームを終え、立ち上がって提案を出した。


「バカ、そんなのやるわけないだろ」


「何でだよ、河辺?」

と楢崎がシャドーをしている。


試合をしたというのに、この男はまだ余力があるようだ。


「そんなのやっても、重量級で、ボクシングの上手い川島か楢崎が勝つに決まってるじゃないか」

近藤がクレーンゲームを終え、小脇に白い子犬の縫い包みを抱え、走って戻ってきた。

「でも面白そうだな、やるんだったら俺も入れてくれ」


「仕方ねぇな」

川島が腕を捲り、やる気を出した。


「バカ、お前は出て来るな」

楢崎が慌てて制した。


「いいだろ。このフラれ男」


「うるせぇ。何回も、何回も同じこと言いやがって、ほんとしつこい男だな、だからモテないんだよ、お前は」


 二人は動物のようにじゃれ合った。


「やめろ、二人共。お前が言ったんだ、楢崎。全員でやればいいじゃないか」

シューティングゲームをしていた僕は、途中で止めて、腕捲りをした。

「楢崎が言ったように、賞金を懸けようぜ。

皆百円ずつ出せ。そして一番の奴が、その全てを手に入れることができる、これでいいな?

 いや、百円なんて小さなこと言うな。五百円でどうだ?」


 全員が頷いた。


「オッシャー!」

楢崎はラップシンガーよろしく、腰を振り出した。


 試合で受けたダメージなのか、頭が少し痛かったが、僕もそのノリに、同調し、踊った。


「おりゃー」

川島は、何発ものアッパーを繰り出しながら、右へ、左へと、上体を移動させ、踊っていた。


その隙を縫い、

「くたばれ、川島!」

と、僕は助走をつけてパンチを出したが、そうはいかない。


流石の反射神経だ。


「どさくさ紛れに、何言ってんだ」

川島が、その僕の助走をヘッドロックで止めた。

「お前、俺がリングから降りてくる時、後ろから蹴っただろ。知ってんだぞ」

と言い、僕の頭を二度、こついた。


「何だよ。止めんなよ」

僕は情けなく、その場でジタバタしている。

「蹴ってねって、俺は」


大人になれば、こんな風にじゃれ合うことなんかはないのだろう、と思いながら、僕は川島から必死に逃れようとしていた。


「くたばれ、川島」

今度はゲーマーの河辺が、狭いスペースを縫って助走もなく、パンチを出した。バーン!

「皆で川島を倒すんだ!」


「猫みたいなパンチ出してんじゃないぞ、川島!」


「倒れろ、川島!」


後から後から皆が、パンチを繰り出していく。


「泣いてんじゃねぇか、川島!」


「バカで、不細工で、ドンくさい男、それが川島だ!」


 誰もが奇声を発し、笑いながら、それでも真剣にパンチを出していた。


「くそ! お前らこそくたばれ!」

 ズドーン! 結局、最高点を叩き出したのが川島のこの怒りのパンチであった。

「まだまだお前ら、練習が足りん。明日からしごくぞ」


「うえ~」

近藤が最初に反応し、


「また明日からやるか」

と次に三浦。


「ゲーマーとしての俺は、もっと反応をよくするために、動体視力を鍛えるぜ」

と河辺が講釈をつき、


「俺の邪魔すんなよ、お前ら」

と最後に楢崎が、小馬鹿にするように河辺の頭をこついていた。


このゲーセンには、いつまでも共栄高校ボクシング部の大声、笑い声が響き合っていた。


まるで夜の動物園のように。


その動物園の中でリスが、猿が、ペンギンが、兎が、それらの動物たちの遠吠えが轟いていた。


だが一人、僕はそんな彼らに違和感を覚え、冷静な目で成り行きを眺めていた。

なぜだろう。突然、頭に疑問が浮かんだのだ。


僕は、その輪の中に入ることができず、躊躇する自分に驚いていた。


そんな中、冷静になり、ふと外を見ると、既に暗闇に包まれた真っ暗な夜が広がっていた。

試合をしたことが、遠い昔の出来事のような気がした。

風に乗って水を含んだ地面の匂いがする。

通り雨でも降ったのであろうか。時は気づかぬうちに、このように過ぎ去っていくものだ。 

いつまで続くのだろう、こんな時期が。いつまでも続かないことくらい、ここにいる全員が知っているはずだ。


もしかしたら一か月後、それとも一週間後、いや明日。

それは、突然にして、まるでプールの監視をする教員の笛の音と共に、終わってしまうのかもしれない。

でも、それにはまだ耳を傾ける時ではない、と誰もが目を背けている。

本当はちゃんと向き合わなければならない時に差し掛かっているのに、誰も動こうともしない。先へ進むのが怖いとでもいうように。


やがて来る離れ離れの日。その前の、社会の荒波に揉まれる前の、ほんの一時に身を委ねていたいがために、今日も六人はバカ騒ぎをして、その日から逃げている。

大声を上げていなければ、声を出し続けなければ、そこで現実というリアルなものを突き付けられてしまいそうで、外が暗闇に染まっていくのも忘れ、彼らはいつまでも騒いでいた。


きっと、今だけは将来のことよりも、目先を大切にし、ただがむしゃらに生きる、それが重要なことだと思い込み、そして、大人のように損得ばかりを考える毎日よりも、よっぽど人間らしい、と唱える。


だから、もう少し、この残り少ない大切な時期を、仲間と一緒に過ごしていたい。

こんな風に六人でバカ騒ぎする日を、なんて思っているんだろう。


 だが、僕は違う。そうは思わない。それだけじゃいけないんだ、と。

この先、川島と楢崎はインターハイに出場する。それは決まっていることだ。

そして、仮に、勝ち進み、メダルを獲る。彼らにはそれだけの実力がある。実際そうなるかもしれない。


そうなれば、なったで、大学から誘いがあり、特待生として、若しくは推薦で東京の大学に入れるかもしれない。


 でも、人生はそんな風に順調にいくものなのか?


 ひょっとしたら、大学入学後、怪我でボクシングが出来ず、それが原因で、進級が出来なくなるかもしれないし、あるいは不慮の事故や、喧嘩に巻き込まれ、退学、就職失敗などと、自堕落的になることもあるのかもしれない。


人生なんて何が良くて、何が悪いのかなんて分からない。そうだろ? 

今日の僕の試合だってそうじゃないか。

ひょっとしたら、僕には、神様がもうボクシングを辞めなさい、と教えてくれたのかもしれない。

なぜなら、このまま続けていても、君にとって良くないことが起きる。

大怪我、若しくは間違えがあって、相手を殺してしまうかもしれない、と。


それらから逃れることが出来たんだからいいじゃないか。


そして、違う何かであの二人を見返せばいい、と皆と別れ、点々とそこかしこに存在する道路の水溜まりを見ながら、僕はそう思うことにした。


そして、ようやく家路へと一人で向かい、歩き出す。


―だが、歩きながら思った。


僕は、何てネガティブな物の考え方をしているんだ、と。


こんな生き方じゃいけない。でも、今の僕には、こうでも思わなければ、これから先、やっていけない。


納得なんかはしていないし、できるわけがない。


あんな終わり方をしたのだからー。


僕は、これからどうすればいい?


一体、何をすればいいんだ。


新しいこと? それは何だ?


もう、ボクシングはやらない方がいいのか?


僕の頭は収拾がつかないくらいに混乱し、とにかく頭が痛かった。


それでも一人で歩き、家路へと向かっていく。半ば夢遊病者のように。


荷物を重く感じた。行く前は、然程重く感じなかったこのバッグも、今では、まるで大なり小なりの何百個もの石を詰めたかのように、重かった。


足だって重い。もう歩けない、そう思った。


一人切りになり、周りを暗く感じて、そう思った。


それが一人だと痛感させられ、強烈な孤独感に浸ることになり、もう僕は立っていることができずに、座り込み、そして、バッグを手から放し、両手で、顔を覆ってしまった。


泣けた。一人で、声も出さずに啜り泣くようにー。


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