4属性じゃなくて5属性だった
4属性じゃないということは……?
あのあと、王子と色々な話をした。
特に、魔法学の話では意気投合して、未だ実現されていない“浮遊魔法”や”空間魔法”の実現に必要なものは何か、など色々な可能性を話し合って、さっきまで緊張していたのも忘れるくらい普通に話してしまった。
よく考えたらいまのわたしになってから同世代の友人とかとは無縁だったわけで、もう本が親友!ってくらい部屋で本を読んでる時間が多かったから、前世ぶりに同世代で恐らく精神年齢も近い存在な訳で、暗殺フラグさえ無ければ好きになっていたかもしれない。ってくらい話していて心地いい人だった。
「じゃあ、浮遊魔法の概念としては、やっぱり魔法を利用して対象を浮かせると考えるべきかな?」
「そうですね…飛ぶ、というよりは浮くという発想もありです。例えばウォーターボールとかの魔法は術者の手を離れても空に浮いてるわけですし、魔法で作り出したものでものを投げることもできるでしょう?」
「そうだね。じゃあ人間自体を浮かせるのはひとまず置いておいて、魔法で浮かせたものを自在に操るイメージで、人が乗れるものとかは?」
「箒とかどうですか?箒の後ろ側に風魔法をかけて、進行方向を…」
色々な案を出して時間を忘れて話し込んでいると、いつのまにかパーティー終了間際になっていた。
コンコン
「お嬢様、そろそろ閉会の時間でございます。お見送りのご準備を…」
「嗚呼、ずいぶん話し込んでしまったようだね、せっかく休んでいたのに済まなかったね」
「いえ!私こそ自分の言いたいことばかり話してしまってすいません。」
「私としても頭の固い大人と話すより、君のように色々な角度からいろんな可能性を見いだせる人と話せるのは楽しかったよ。また近いうちにこうして話せるかな?」
「ええ、是非。私でよければ」
「ならよかった。では、今日はこれで失礼するね。また今度。」
そう言ってローレンス王子は私の右手を取り、恭しく口付け、笑顔で部屋を出て行った。
「……………7歳児の癖に魔性ってどういうことよ……///」
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そのあと、会場にいるお客様に挨拶をして最後の1人が帰るまで見送る。
最後に会場に残っていたのは、私と母と父、そしてローレンス王子と王妃様だった。
「今日はとても楽しい時間でしたわ。是非また近いうちにお会いしたいものね」
「そう言ってくれて嬉しいわ。またお茶しましょう?ふふふ。」
和やかに話す王妃様とお母様。
すると、王妃様はローレンス王子を見て
お母様は私を見て言った
「「今日はどうだった?楽しかった?」」
するとローレンス王子が
「ええ、とても。楽しい時間を過ごさせていただきました。また近いうちに会いたいと先程も話していたんです。」
と言った。
「あ、こちらこそ、わたしもとても楽しかったです。」
無難に挨拶を返すと王妃様は満面の笑顔を見せた。
「そう。じゃあまた近いうちに会いに来てちょうだいね?城から招待状を出すわね。」
馬車の前まで見送ると、ローレンス王子が不意に話しかけて来た。
「またね。セシリア。」
そしてすぐに馬車に乗り込み、王妃様とローレンス王子は城に帰って言ったのだった。
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セシリア。と呼ばれた。
特に意味はないと思うけど。セシリア嬢って言う他人の立場から友人位には格上げされたのかな?
この世界では、はじめての友達だ。
嬉しくなって笑顔になる。
するとお母様が、
「セシリアも隅に置けないわねぇ。もう王子と仲良くなったの?」
と言って話しかけて来た。
「えーっと、うぬぼれで無ければ、友達になれたと思います!」
笑顔でそう答えると、何故か微妙な顔をされた。
「んー。ローレンス王子可哀想ね…ま、なるようになるわね。私はセシリアの味方ですからね?困ったことがあったら言うのよ?」
「お母様……ありがとう…!ございます。その、嬉しいです。」
「いいえ。貴女はお腹を痛めて産んだ大切な私の宝だもの。なんでも言うのよ?それに、その話し方も。公共の場ではもちろん、慎みを持って丁寧に話さなければならないわ。けれど、家では畏まって話さなくていいのよ?まだ子供なんですから。貴女がどんな大人になろうとも私は貴女のこと、変わらずに大好きなのよ?」
「お母様…うん!私も、大好き!」
「お父さんもセシリアのこと、大好きだぞ!ちょ、空気にしないで……」
空気になっていたお父様が話に入って来た
「あら、私の方がセシリアのこと大好きよ?貴方は国の方が大事なんでしょうけどね?」
「いや!セシリアのためなら亡命だってするぞ!安心してくれ!」
「ちょ、お父様がいなくなったら王様が大変じゃないですか。お母様もそんな発破かけてないで止めてくださいよー!」
「ふふふ。セシリア。もし嫌なことを強要されたりしたらちゃーんと言うのよ?お母様が守りますからね?」
「俺だってちゃんとセシリアもお前のことも守るぞ!」
「ふふふ。お母様もお父様も、ありがとう。私、幸せ者だね。」
大丈夫。シナリオ通りなら私以外にも何人か、悪役令嬢がいる。1人、悪役令嬢がいなくなったって、どうってことない。ヒロインには攻略対象とよろしくしてもらって、私は悪役令嬢じゃなくてモブの1人になる。
頑張ってフラグ折るぞー!!!!
…なーにか忘れているような??
まぁいいや、なんだか眠くなって来た……な…
「あら?セシリア眠くなっちゃった?今日は頑張ったものね。」
「俺がベットまで運ぶよ。ゆっくりお休み。セシリア。」
「ご、めんなさいお父様、お願いします。。」
何故か体に力が入らなくなって来て、暗転した
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…ここはベットの上かな?…
急に力が抜けて、眠ってしまったと思ったけど、金縛りにあったみたいに動けない、周りが見えないだけで感覚はあるし、周りの音は聞こえるみたいだけど…。
「貴方。……セシリアはどう?」
「眠っているよ。力を使いすぎて疲れたんだろうな。」
「もう、隠し通すにも時間の問題なんじゃない?教えてあげた方が、この子のためよ……。」
「分かっている。知らなければ力を使えないと思って安心してしまっていた。いずれは自分で気づいてしまうだろうな……。」
「この子の力のことを知っているのは、私と貴方、あと魔法師団長だけよ。」
「魔法師団長が外に漏らすとは思わないが、万が一ということもある。私自身この、闇属性のことを調べたが、この属性を持つ歴代の魔法使いたちは周りの悪意に敏感で、それを受けて術者自身の魔力に変えたり、気持ちを読み取ることができるらしい。そして成長期に悪意の影響を受け続けると…犯罪に手を染めるようになってしまう…らしい。だからこそ屋敷から出さず、この悪意のない屋敷で守り育てて来たんだ。」
「ええ。魔力の第一次成長期は5歳から7歳まで。一番影響を受ける期間はなんとか守り通したじゃない。大丈夫よ。」
「だからといって今後もこの力はセシリアを苦しめるだろう。今日も無意識に悪意を読み取り、それからそれを読み取らないように、意識せずに心を防衛して魔力を使いすぎたようだからな。」
「この能力を抑えるにはまだ早いわ。やはり、まだ余り外に出さずに、病弱だということで押し切りましょう。」
「そうだな。それがいい。この子が能力を意識して、悪意に怯えて暮らすようになるなんて、そんな苦労をする必要はない。」
「ええ。社交界に出ても暫くは私がセシリアの側にいて悪意から守るわ。耐えられないようなら人のいない土地に移ってもいい。」
「じゃあ、当分はこの子には話さないでおこう。」
「ええ。…さ、私たちも寝ましょ。もう寝てしまったからセシリアには誕生日プレゼントを渡せなかったもの。明日のために休んで。『あの子』の紹介も明日にすることになったんだから」
「あぁ。そうだな。…おやすみ」
「おやすみなさい。貴方。」
はい、悪役には闇属性ー!やっぱりヒロインの逆の能力を持っている!ってのがいいですよねぇ