義理の弟?従者?
義理の弟 シオン 登場です!
金髪碧目で計算高い小悪魔。
※セシリアの実の弟はまだ3ヶ月です。
翌日
柔らかな日差しが部屋に差し込んでくる
「んーっ。よく寝たなー」
…昨夜のあの両親の話は、夢…?
たしかに、5歳の洗礼式の日、私は気絶してしまったから自分で属性を見ていない。
本来なら、あの測定水晶によって自分の属性やその魔力量を知ることができる。
お父様には、
「魔力量は成長とともに増えるから気にしなくていいよ。属性はこの国で2人目の4属性持ちだから周りには隠しておこう。国王や魔法機関の重役には知られてしまっているが、一般公開などすれば他の貴族の家が黙っているわけないからな。」
って言われたからそういうものだって思ってたし、4属性のことがバレたらいけないからお母様が勉強や魔法を教えてくれてるんだと思ってたわ…。
でも、ゲームの中の私はそんな、闇属性持ってたっけ?うーーんん思い出せないな、。。
前世の記憶は思い出そうとしたときに限って思い出せない。
きっかけになる人物やイベントに関連するものを見て急に思い出す感じ。
はぁ。今後の攻略対象の役職は覚えてるんだけど、顔はどんなだったかなぁ?
ローレンス王子は推しだったからもちろん覚えてたけど、他の攻略対象に関しては全員一周だけして放置だったからあんまり覚えてないんだよね…ま、会ったら分かるよね!
まだ、ヒロインとも出会ってないんだし私が断罪される危険はない。
危険なのはゲームが始まる14歳になってからだ…。あと、私の性格が変わってしまうきっかけの、お母様と私の事故。
今の私は本来のシナリオの私とは違うわたしだけど、お母様のことは大好きだし、もし誰かのせいでお母様が死んでしまったならその人を恨んでしまうかもしれない。
それによって悪意に取り憑かれてしまう…としたら、ゲームの中の私にはならないと言い切れるだろうか?
少なくとも関係のないヒロインには嫌がらせなんてしないと思うけれど、もし、そのきっかけとなるのが義理の弟だったら、その弟が好きな相手……「ヒロイン」のことを虐めて弟に仕返ししようとしてしまう可能性もある。
とにかく、危険な可能性があるなら関わらないに限る。
でも、そういえば何が原因で母が亡くなってしまったのだったか…?
思い出せ…義弟ルート…………んーー
なんとか思い出そうと、ベットの上で考え込んでいると、階段を上ってくるメイドの足音が聞こえた。
まだ朝の5の刻だ。我が家の朝食時間は7の刻。父の出社は9の刻で王宮までは馬車で10分と近いのでいつもゆっくり寝ている時間である。私は割と5の刻に起きて魔道書を読んだりしているが。
ーー コンコン ーー
「はい。どうぞ」
「おはようございます。セシリアお嬢様。」
「おはよう。今日は少し早いのね?」
「旦那様が、王宮に行く前に話したいことがあるとおっしゃっておられます。着替えたら書斎に来て欲しいと…」
「あら、そうなの?じゃあとりあえず着替えるわね。」
メイドの持ってきた洗面水で顔をすすぎ、コルセットのいらない淡い水色のフレアワンピースに着替えてメイドに髪を梳かしてもらう。
大事な行事の日以外は特に化粧はしない。
ま、7歳で化粧してたら将来の肌が心配だしね。
ここまで計15分。
「さ、用意できたわ。お父様はもう書斎にいらっしゃるのよね?急がなきゃ。」
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書斎
ーー コンコン ーー
「おはようございますお父様。セシリアです。」
「セシリア、入っておいで。」
書斎に入るとお父様とお母様、金髪碧目の可愛らしい少年がいた。
「おはようセシリア。昨日は寝てしまったから紹介できなかったんだ。この子は分家筋のとても優秀な子なんだが、先日この子の両親が他界してしまってな。身元引き受けをしてこの家で働いてもらうことになった。今日からこの子はお前の従者としてしばらくの間働いてもらう。」
従者……?義理の弟じゃなくて……?
確か、ゲームでは、はとこで、…両親が不幸な事故に巻き込まれ、天涯孤独になったからお父様が義理の弟としてうちに引き取った…っていう話だったけど。
疑問に思っていると、お母様が
「ほんとはこの家の子にしてあげたいんだけれどね、今この子をこの家の長男にはしてあげられないの。」
「実はな…先日わかったばかりなんだが、セシリアに弟が出来ることになったんだ。その子が生まれてこの家の後継者として育ち、5歳の洗礼式が終わったら正式にこの家に迎え入れようと思っている。」
「でも、将来的には姉弟になるからな。年も1歳違いだし、2人ともすぐに仲良く慣れるだろう。」
……えっと、つまり…纏めると、
本来のシナリオではいないはずの私の実の弟の存在
本来の義理の弟が従者として我が家に来た。
お腹の中の私の弟に家を継がせるため、洗礼式が終わるまでは我が家の従者という立場にしておきたい
ということかな?
私が考え込むような表情をしていると、天使のような少年が話しかけて来た。
「はじめまして、セシリアお嬢様。僕はシオンと申します。今は家名はありません。本日からよろしくお願いします。」
「ええ。はじめまして。こちらこそ、よろしくね。従者といっても建前上だけなのだし、家の中では私のことはお嬢様ってつけないで呼んでくれていいわ」
「ありがとう…ございます。」
困惑したような様子のシオンくん。
すると、お父様が助け舟を出してくれた。
「そうだな!そうするといい。早速、セシリアもシオンと仲良くなれそうでよかった。」
…この子が、天使…じゃなくて義理の弟(今は従者)くんが家に来たってことは…今年中にお母様と私の事故が起こる。
確か、シオンルートの過去の出来事。
ヒロインに話すシーン……どんな内容だっけ?
ヒロインが言っていたセリフは思い出せるんだけど…
たしか、
「そんなの、シオン様は悪くないわ。身内の罪が子供の罪だなんて、…!周りの方が勝手にした事なのに…。」
だったはず。
ん?シオンの両親は他界したんだよね?だからこの家に引き取られた…。
じゃあなんでシオンの身内が罪を…母と私を害することができるんだ?…分かんないな。
もうちょっと情報が欲しいな…初対面の今、シオンくんに亡くなった両親のことを聞くのはタブーだろうし、ここは手っ取り早く仲良くなって、両親のことを探らせてもらうしかない。
つい考え事に夢中になっていると、お母様が可愛らしいしかめ面をして抗議してきた。
「もう。リア。また考え事してるでしょう?まだ話は終わってませんよ!」
「はい!ごめんなさい。なんでしょう?」
すると、お母様が私に直径5㎝くらいのアメジストの宝石がついたネックレスを首からかけてくれた。
「私からの誕生日プレゼントよ。代々我が家の母から娘へと受け継がれてる指輪よ。守護の魔法と軽量化の魔法が付与されているわ。危ないと思ったときはこの指輪に少しだけ魔力を込めてね。そしたら守護魔法が発生して半径5メートル以内は浄化されるし、破壊級の攻撃も耐え切れるのよ。」
……すごっっ!!……紫色の綺麗な魔法石のついた指輪はまだ私の指には合わないからネックレスとして使うことになった
「ありがとうございます。でも、お母様にこそいま、必要なんじゃ…?」
「いいえ。セシリアにつけていて欲しいのよ。私は自分で魔力障壁も張れるし…セシリアは今後邸から出ていくことも増えるでしょ?そのネックレスは外での悪意からあなたを守ってくれるわ。」
…そうか、お母様は私が闇属性の能力を持っているから、悪意から守ってくれようとしてるのか。
「わかった。でも、お母様、絶対に家から出るときは私も一緒に行くからね?。半径5メートル以内なら、私がついていけばお母様に何かあったとき守れるし。」
「ええ。一緒にお出かけしましょ。ありがとうね。リア。」
「ううん!私こそ素敵なプレゼントありがとう!お母様!」
「おーいー。セシリア。父さんからもちゃんとプレゼントあるんだぞ!。ほら、前にペットが欲しいと言ってたろ?なんとな!父さん、お前の為にこの国で一番美しいと言われる馬を手に入れてきたんだ!」
……馬???
お父様に連れられて、みんなで庭の馬小屋に行くと、周りの黒馬から比べて一回り小さい白馬がいた。
…白い毛並みに藍色の瞳。周りの成馬より一回りも小さいのに、怖気付かず、堂々とした佇まい。
ふと目が合うと笑ったような気がした。
「可愛い…!!!」
「どうだ!綺麗だろう?まだ仔馬ではあるが子供のセシリアなら余裕で乗れるだろう!馬術を教えてくれる知り合いがいるから今度講師として屋敷に呼ぼう!」
前世では馬なんて乗ったことなかったけど、貴族の間で乗馬は嗜みとして男性は全員、女性でも一部の人にはかなり人気らしい。
それに、馬があれば亡命するときもすぐに逃げられる!
「ありがとうお父様!とっても嬉しい!」
わたしが思っていたペット(小動物)とは違ったけど、この子はとても可愛いし賢そう。
「ははは、喜んでくれたならよかったよ!それで、この子の名前はどうする?」
「そうね…うーん、白馬といえば…シロ。」
…シロじゃダサいかな?えーっと…
「シロか!いい名前じゃないか!決定だな!」
「ヒヒーン!!」
…なんかお父様も白馬…シロも気に入ったみたいだし、シロでいっか!
しばらくシロを撫でているとお母様が焦ったように話しかけてきた。
「ほらほら、セシリア達はいいとして、貴方はそろそろ朝食を食べて王宮に行かないと。もう8の刻よ」
「おお、もうそんな時間か。じゃあ邸に戻ろう!」
お父様とお母様は早足で邸に戻っていく。そんな中、シオンはじっとシロを見つめていた。
「シオン?どうかしたの?」
「いえ、なんでもありません。」
?馬が好きなのかな?まるで睨んでるみたいだったけど…
シロに近づき、頭を撫でると、少し頭を下げて暴れることなくじっとしている。
「いい子ね。シロ。これからよろしくね。」
「ヒヒーン!」(よろしく!)
?ん?なんかこの子の声が聞こえたような…気のせいか。
不思議に思い、シロをじっと見ているとシオンに声をかけられた。
「セシリア様、…行きましょう。」
「ええ、ごめんなさいね。行きましょ」
そして、名残惜しく思いながらも馬舎を後にして邸に戻っていった。
シロ…は馬ではありません。実は……???