98話 過酷な挑戦です
フェーニル国王、イヴァル・フォン・フェーニルによる銀行制度の導入と、その一切を一任れたリーヴ商会の発表より早一ヶ月。
既にフェーニル王国内では銀行はほぼ全域に浸透し、それによって大規模な金融を開始。
あと数年もすれば紙幣制度を導入可能と言う程の成果を上げています。
そしてフェーニルでの銀行制度を見た各国も同制度を導入したことにより、リーヴ商会は各国に進出を開始しました。
勿論、各国それぞれにそれなりの数の銀行が設立し、世の中はまさに金融革命です！！
そして初めに聖地たるフェーニルの国王に一任されたリーヴ商会の信用度はかなり高く。
それはもうガッポリと儲けさせてもらいました、ありがとうございます！
そんなこんなで、もう働かなくても一生ゴロゴロできるだけのお金を稼いじゃったので、もう働かなくてもいいですよね？
こうして、もふもふに包まれてゴロゴロしている間にも天文学的な額が懐に転がり込んで来る。
そう！ 僕は遂に全人類の夢を実現したのです！！
不労収入生活と言う夢をっ！！
「ふっふっふ〜、これからは是非こう呼んでください、異世界のロックフェラーとっ！！」
「お嬢様……しかし、本当にいいのですか？」
「そうですよ。
メルヴィー様に見つかればまた……」
密かに悦に浸っているとそんな不安そうな声が聞こえてきました。
まぁ勿論、僕にもふもふ天国を堪能させてくれているノアとシアです。
「確かに、以前勇者達が深淵の試練に来た時のように見つかれば２人の言う通りになるでしょう。
しかしっ！ 僕が密かに作り上げたこの秘密基地にいればそんな心配は無用なのです！！」
上を見上げれば、そこに見えるのは光を受けてキラキラと輝く水面と色とりどりな魚達。
ここは、幾度となくナイトメア本部を脱走し、その度にメルヴィーに発見されると言うやりとりを経て作り上げた秘密基地。
ナイトメア本部のすぐそばにある広大な湖の底に作り上げた僕の楽園です！
「ふっふっふ！ メルヴィーは僕を本気にさせてしまったのです」
「おぉ！ 流石ですお嬢様！！」
シアの言葉に調子を良くした僕は自信満々に胸を張って笑みを浮かべました。
「こちらにいらしたのですね、お嬢様」
しかし、そんな僕の自信もいつか聞いたようなこの無慈悲な言葉によって粉々です。
恐る恐る、後ろを振り向くと……
「ま、まさか、こうも容易く見つかってしまうとは……」
僕しか知らないはずの秘密基地に当然の様に、いつもの表情をしたメルヴィーが立っていました。
「では、今回も私が勝ちましたので、本日のおやつは無しです」
そして、項垂れる僕を抱き上げながらそんな無慈悲な宣告を告げました。
「お嬢様……」
「メルヴィー様、やはりそれではお嬢様がお可哀想です！」
項垂れる僕を見てノアとシアがそう言ってメルヴィーに掛け合ってくれますが。
「２人ともありがとうございます。
ですが！ これを決めたのは僕自身ですので……」
そう、この罰ゲームを決めたのは僕自身です。
事の始まりは一週間前ほどでした。
いつもの様に何気なくお風呂あがりに体重計に乗ってみたところ……そんな訳でダイエットを心に誓ったのです！！
それで、メルヴィー達と隠れんぼをして、負ければおやつ抜きにしていると言う訳です。
尤も、今までメルヴィー相手に勝てたことは一度もありませんが……過酷な挑戦です。
「それと、そろそろですよ、お嬢様」
「む、そうですか……」
どうやら、ヒキニート生活を送れるのも今日までの様です。
まぁ、もう少し早いと思っていたので、一ヶ月も待ったのは予想外でもあったのですが。
「わかりました。
では、お仕事の時間といきましょう」
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「無能と呼ばれた天才ゲーマーは異世界を好きに生きます」
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