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159話 あり得ない報告

 豪奢な装飾のなされたアレサレム王国、王城内の謁見の間。

 厳粛な空気に包まれたそこは今、紛糾していた。


 文官の1人が声を上げれば、それに対応するように貴族が怒鳴る。

 アレサレム国王、ルナン・サナスト・アレサレムは眼下で繰り広げられる光景に顔を歪める。


「どう言う事か説明願いたい!

 宣戦布告も無しに帝国に侵攻したと言うのは事実なのですか!?」


「ですから、先程から言っておりますように、今はその様な事を話している場合では無いでしょう!

 そんな事よりも、民達への対応策の1つでも出したらどうですかっ!!」


 青筋を浮かべて声を荒げる貴族に、文官は何度も繰り返される問答に苛立ちを顕に怒鳴り返す。

 そんな押し問答が暫く繰り返され、不意にルナン王が玉座から立ち上がる。


 国王の突然の行動。

 確かな苛立ちを宿した国王の眼光に、謁見の間が静まり返る。


「私は無益な話し合いを好まぬ。

 アレサレム王国貴族たる者、敵の戯言に惑わされるで無い。

 今はそれよりも、混乱する民草の為に語らおうではないか!!」


 ルナン王の言葉に王国貴族も文官達も感涙に震えて跪く。

 我らが国王陛下は、帝国の卑劣な言葉にも一切動揺せず。

 それどころか民の、強いては国の事をここまで考えていたのかと。


 自身の利益がどう転ぶのか。

 それしか念頭に置いていなかった貴族達は、先程までの自身を顧みて羞恥に震える。

 貴族達にも文官達にも、その顔には真剣な面持ちが浮かんでいた。


 実際のところ、ルナン王はそんな高尚な事は一切考えていない。

 ルナン王は跪く貴族・文官達を見渡し、表情には出さずに内心で見下し汚くて罵る。


『自身の利益の事しか頭に無い無能共が!

 最も重要なのは貴様らで無く、この私の命だとなぜ理解できんのだ?』


 ルナン王の考えている事は自身の保身だけであった。

 しかし、そんな事を知る由もない貴族・文官達は民草を想いやれる素晴らしき主君に尊敬の眼差しを向ける。


 先程とは打って変わって、いい意味で白熱する会議を見てルナン王は玉座に腰掛ける。

 そもそも、この様な騒ぎになっているのは前日のネルウァクス帝国……対魔教団同盟の宣戦布告にある。


 勇者達がリーヴ商会と揉め事を起こし、国が勇者達の肩を持った事でリーヴ商会がアレサレム王国から姿を消した。

 新進気鋭、既に国民にとって欠かせない程の地位を築いていたリーヴ商会の撤退により国民達の不満は一気に膨れ上がっていた。


 そこに、昨日の対魔教団同盟の宣戦布告。

 しかもその戦端を開いたのは、アレサレム王国の宣戦布告なしの奇襲。

 国民達の不満と不信感が国に、王族に向くのは時間の問題と言えた。


『ふむ、教団の力を使えば、私に楯突いた下民共を皆殺しにして返り咲く事など容易い。

 最悪の場合はこいつらを盾にすれば、それなりに時間も稼げるだろう』


 白熱する会議を尻目にルナン王はニヤリと嗤う。

 その時だった。

 バンッ!! と、けたたましい音を立てて、謁見の間に繋がる扉が開け放たれる。


「何事だっ!」


「今が重要な会議中と知っての事かっ!!」


 貴族と文官のいつに無く厳しく鋭い視線を一身に受け、息も絶え絶えに駆け込んできた兵士が一瞬たじろぐ。

 しかし、すぐに姿勢を正すと、軍隊式の敬礼をして報告を読み上げる。


「緊急事態です!

 突如として王都を包囲する様に軍隊が出現! その数、十万以上ですっ!!」


 誰もが唖然と呆けた様子で静まり返る。

 それは、あり得ない報告。

 到底信じられる内容では無かった。



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